無題2-02
彼は他の誰をも愛した事がなかった。
そんな感情が自分にあるとも思ってはいなかった。
しかし、彼に惚れて寄って来る雌は少なくなかった。
そんな雌達がうっとうしかった彼は
側に寄るんじゃない と追い払っていた。
そんな彼のどこがいいのか、雌達は彼に追い払われても
懲りる事なく、彼に近づいていった。
最もよく寄ってくる雌は姚鴉と呼ばれていた。
姚鴉は彼を落としたという一種のステータスが欲しいのだろう。
彼を手に入れた事を自慢したいだけなのだ。
猛鴉が街で一番強ければ、間違いなく姚鴉は猛鴉のところへ行っているだろう。
彼はそう思っていたが、たまたまやりたい気分の時に来れば、
姚鴉に限らずどんな雌とも彼はやった。
彼の子を宿した卵を雌達が産んで雛に孵そうが、そのまま捨てようが
彼にとって知った事ではなかった。
元々、愛していたわけでもない雌の産んだ子の事など。。と
彼を慕ってついてまわる若鴉のうちの何羽かが、
彼の息子であった事も彼は知らなかった。
姚鴉は当然の様に産んだ卵を全て捨てていた。
そんな雌だった。
その事は彼も知っていた。
だから尚更の事、自分の都合次第で捨てたり孵したりする雌を
彼は愛せなかった。
彼がちょうどやりたい気分の時に姚鴉がやってきた。
いつものように彼は姚鴉とやった。
姚鴉はけたたましい鳴き声をあげながらよがっていた。
彼は半分醒めた気持ちのままに放出した。
視線を感じた。
振り返ると瑠璃鴉がこっちを見ていた。
彼女はいつも少し離れたところで見ているだけの雌だった。
姚鴉とやっただけでは物足りなかった彼は
まだ満足に動けない姚鴉をその場に残し、
瑠璃鴉の側へ飛んで行った。
”お前も俺とやりたいのか?運がいいな。今ならやってやるぞ?”
言った瞬間に彼は嘴で突かれた。
”バカにしないで!私はそんなに軽くないわよ”
”俺に惚れてるんじゃないのか?”
”例え惚れてたとしても、あなたが私だけを見てくれるんじゃなきゃ嫌”
言いながら瑠璃鴉は飛び去って行った。
雌につつかれたのは生まれて初めてだった彼は呆然と飛んで行く彼女を見ていた。
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