無題2-06


彼は人間が嫌いだった。


では何故人間の住む街にいるのか?


彼が望んだわけでもないのに


彼はこの街で生まれてしまった。


ただそれだけの理由だった。


この街は、退屈しない。


彼は他の鴉と自ら関わろうとはしなかったが、


自分に関わろうとしてくれる鴉達を見捨てる事はできなかった。


彼自身は気付いてはいなかったが


彼は自分の生まれたこの街を、鴉達を愛していた。



下の方で何か騒がしい。


人間達が騒いでいるようだ。


銃声がした。


逃げ回っているのは鴉達だった。


銃を持っている人間以外には誰もいなかった。


どうやら人間達は本気で鴉を狩る気らしい。


そんな事はさせるか!


彼は他の人間から少し離れている人間に向って後ろから飛びかかった。


頭と首の境辺りを嘴でえぐった。


人間の延髄と呼ばれる辺りだ。


死なないかもしれないが、おそらく一生動けないはずだ。


他の人間に見つかる前に彼は身を隠した。


先客がいた。若鴉の一羽だった。


”ど・・どうしたらいいんですか?

あんなの初めて見ましたよ。仲間も2羽やられました”


”そうか。。お前仲間に会ったらこう伝えろ。


絶対に正面から向って行くな。周りに仲間のいない人間を狙え!”


鴉と人間の戦いが始まった。


人間の使っている銃はショットガンだった。


普通の銃ならそうそう当たるものではないが、


何10発と広範囲に弾の出るショットガンでは、


いくら俺達鴉でも、当たってしまう。


彼と若鴉達は、一人、また一人と人間を倒していった。


彼は延髄をえぐり、若鴉達は3羽づつになって一度に遅いかかった。


銃を取り落としたところで目をえぐるか、


顔をかばう手の腱を食い千切った。


仲間を殺された彼らに、手心を加える気持ちはなかった。


戦いの中でさらに3羽の若鴉が撃ち殺され、


彼等の闘争心に拍車をかけていった。


殺らなければ、俺たちに明日はない。


彼等は必死で戦った。


人間達の半数くらいを倒した時、かなわないとみたのか、


人間達は建物の中へ逃げ込んだ。


ひとまずは彼等の勝利だった。


ビルの屋上へ彼と若鴉達は集まった。


最終的には7羽の若鴉が撃ち殺されていた。


勝つには勝ったが、これ以上この街で暮らす事はできないな。。。


彼はそう感じていた。



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