2000年07月13日(木)  晴れ

 朝食後トランペットストーンへ向かうべく出発する。タイムリミットがあるので今度ばかりは立ち往生するわけにはいかない。幹線道路を行く。位置的にはアナケナからトンガリキへ行く途中にあるはずである。
 途中間違えて入った場所で別の遺跡を見つける。遺跡の名前は分からないけど、足下の岩に海産物らしいレリーフが彫ってある。一応写真は撮っておく。メディアの空き容量と相談しながら。
 それから少し行った所にトランペットストーンがあった。大きな遺跡でもない限りこの島の遺跡には目印が何も立っていない。うっかりしていると知らずに通り過ぎてしまう。脇道へ入って行きさえすれば遺跡があるのか、それともどうなのかも分からないのだ。島内観光で一番時間を食うのはこんな遺跡である。ひょっとして通り過ぎたかなと思いはじめた頃に見つかった。
 写真を撮ったり本当に石から音が出るかやってみたり(出なかった)してこの最後に探し出した遺跡も後にする。約束の時間にはなんとか間に合いそうだ。村へと車を走らせる。
 車を返した後は土産物屋を見て廻り(店だけでなく市場みたいなところもある)、昨日と同じ店で昼食を取る。レストランやスーパーは別にして南アメリカ全体がそうらしいが、自分達の昼休みのために普通店は1〜2時間ほど閉まってしまう。この時間帯には気をつけないと土産も買えなくなってしまいかねない。郵便局なども閉まる。先に書いたけど朝7時に目覚ましをセットすると起きてみれば夜明け前だし、朝市も確か10時に開いたかと思うと昼前には閉まる。陽が沈むのはPM7時前後である。時間の経ち方が他のどことも違うような錯覚を起こす。完全に日常の外にいるような気がして心地よい感じもしないでもない。
 あと、犬猫放し飼い(それとも野良?)。たまにつないである犬は人に吠えつくような「つないでおくより他どうしようもない」犬なのである。放し飼いの犬猫は人が昼飯食っていると分け前をもらおうと寄ってくる。何かやってみると大体犬の方がとろくさい。大抵猫の方がぶんどっていく。そのうち(特に犬に対しては)石を投げ付けられたりして追っ払われる。地元の人は犬を寄せつけない。大陸でもそうらしい。狂犬病が恐いのだ。そんな死病が身近にあるのです。(実際には犬の他コウモリなども媒介するのですが)
 再度郵便局へ行ってみると今度は開いていて、スタンプを押してほしいと言うと貸してくれた。ノートとさっき買った絵葉書に押したが、今度この島へ来た時は誰かに絵葉書でも書いてみてうらやましがらせてやろう。それから港でしばらくぼーっとして過ごした後ホテルに戻る途中、村の職員なのか誰なのか知らないけど4人くらいで街路樹の枝払いをしていた。太めの枝まで大胆に切り落としていたので街路樹は見る間にあわれな姿になってゆく。はたして来年ほんとに芽吹いてくれるのだろうか。
 ホテルへ戻った後に、もう一度タハイの「空を見上げるモアイ」を見に行ってみる。私はこのモアイがはっきり言って気に入っている。目のあるモアイがある事は知っていた。ただ、この景色の中ただただ空を見上げている姿を見ているとふと、ここに留まるための方法は何があるのだろうかと思ってしまう。時々日本では「人生」が感じられない。選択肢が無いように感じられる。誰もが同じだから自分がいてもいなくてもいい存在に感じられてしまう。俺はこれで「生きている」と言えるのだろうか。俺の「人生」と呼べるものはもう終わろうとしているのではないだろうか、とてもおとなしくなどしてられなかった。ドラマでも映画でも小説でもマンガでも人生は自分が決めるように書いてある。それは大体美しい話だけれどでも本当に、俺は自分が望みさえすればどこへでも行く事ができるのか?それは本当の事なのか?いつでもできると思いつつ何もしてこなかったのではないのか?…あらゆる意味で自分自身を疑ったのはこれが初めてのような気がします。いてもたってもいられず、飛行機に乗り込んでいました。
 このモアイの姿を見る事ができて本当によかった。ここまでたどり着き、モアイが空を眺めるように立っているのを見る事ができた。いつまでもここに居たくなってしまう。今まで自分の手放さなかったものが取るに足らないもののように思えてくる。
 しばらく眺めた後今日も夕焼けの撮影はあきらめて空港へと行く。何から何までお世話になったIさんが今日イースター島を発つ。雑談をしていると他の人達もいろいろなものを手にしながら集まりはじめた。なかには身の丈ほどある木彫りの刀を抱えている人もいた。機内持込みするつもりだろうか。あれを抱えて飛行機に乗って、自国へ帰り、タクシーかバスかで自宅まで持っていくのだろうか。タヒチ行きの飛行機は今日、何やらシステムがトラブったらしくチェックインは少し遅れたが何とかカウンターが開いて、御礼を言って搭乗ゲートをくぐるのを見届けてからスーパーでビールを買ってホテルへ戻る。明日はチェックアウト。ホテルの方に明日の時間を伝えてから荷物をまとめてから眠りにつく。この日は一度も雨が降らなかった。


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