調味料はひかえめに
調味料はひかえめに 薬味はふんだんに
 薬味はふんだんに

彼が彼女に宛てた手紙の一部。

26年前のこの日の1通の手紙が、劇団W.I.T.を生み出すことになった。

彼が彼女に宛てた手紙の一部。

あるところに
キザ(と本人は思ってる)で
見えっぱりで
身のほど知らずで
自信過剰で
威張り屋で
そのくせ優柔不断で
なんにもできないのを隠したがる
ひとりの男の子が
いたんだってさ。


そいつは才能もないのに
「私は芸術家です」と広言し
「私は天才です」といっては
もの笑いのタネになって何とか生き延び
体がガチガチのくせして
「しなやかしなちゃん」を名のり
周囲のひんしゅくを買ってるんだって。


そんな奴に追っかけまわされるコは
悲惨といえば悲惨だが
唯一 僕は
彼の趣味がいいってことを 信じるね


ようこそ,わなへ

'84.2.16 4:22A.M.



私たちの劇団は、ここから始まった。
今じゃ天才と言ったぐらいじゃ自慢にもならない。
前田様じゃないけど、自嘲にも等しいよ。

まあ、当時にしては、己のこと、見れてたんだろうな。
だが今となれば、身のほど知らずで自信過剰で威張り屋な彼が、羨ましいよ。
…なぁんて風に、後々自分に思われることまでは、わからなかったぜ。

でもね、
この頃の自分で、1つだけ誇れることがあるんだ。
若さだけで片付けたくないね。

この頃の作品や、手紙のやり取りを見てると、
「恋する力ってすごいな」って、あらためて思うわけさ。

あの頃の私はまさに、アスリートだった。
持てる力、技術、頭脳、情熱、すべて出し尽くして、恋愛に邁進した。
生きることと恋することと表現活動が、ひと繋がりでイコールだった。

今立っている私の一挙手一投足、ほとんど技巧の塊なんだけど、
技巧なんてものは小手先で身につくものじゃ到底ないわけで、
それらの大部分が、この時期と前後数年に魂入れられたものだ。

おかげさまで、おっさんになってやっと、
そいつに磨き入れて、取り出して使えるようになってきた。


さあ、ハーフタイムも終わりだ。 後半も攻めるぞ!  (ボス)