私たちの劇団は、ここから始まった。
今じゃ天才と言ったぐらいじゃ自慢にもならない。
前田様じゃないけど、自嘲にも等しいよ。
まあ、当時にしては、己のこと、見れてたんだろうな。
だが今となれば、身のほど知らずで自信過剰で威張り屋な彼が、羨ましいよ。
…なぁんて風に、後々自分に思われることまでは、わからなかったぜ。
でもね、
この頃の自分で、1つだけ誇れることがあるんだ。
若さだけで片付けたくないね。
この頃の作品や、手紙のやり取りを見てると、
「恋する力ってすごいな」って、あらためて思うわけさ。
あの頃の私はまさに、アスリートだった。
持てる力、技術、頭脳、情熱、すべて出し尽くして、恋愛に邁進した。
生きることと恋することと表現活動が、ひと繋がりでイコールだった。
今立っている私の一挙手一投足、ほとんど技巧の塊なんだけど、
技巧なんてものは小手先で身につくものじゃ到底ないわけで、
それらの大部分が、この時期と前後数年に魂入れられたものだ。
おかげさまで、おっさんになってやっと、
そいつに磨き入れて、取り出して使えるようになってきた。
さあ、ハーフタイムも終わりだ。 後半も攻めるぞ! (ボス)