[さむかったわよ〜(本人談)]

新潟日報
平成12年2月
 【イカの女王ヤリイカ】

 先日、大型の寒波の影響 で久しぶりに雪が積もった。 やはりまだ冬だな、と思わ せる白い世界に真っ赤に映 えるのは椿の花。春はゆっ くりとしかし確実に近づい て来ている。冬の魚といえ ば字のとおり鱈が有名で、 スケトウダラは当て字で佐 渡魚とも書く。他にはドモ シジュウ(ホッケ)が思い 浮かぶが、昔から人気の高 いセイナゴ(ヤリイカ)を 忘れる事は出来ない。イカ は魚類ではなく貝に近い仲 間だが釣り人からすれば同 じ釣り魚?である。
 セイナゴは岸からは早け れば12月に釣れ始め、3 月まで釣れ続く。早い時期 は大型の雄が多く、終盤に なると小型の雌が殆どにな る。名は体を現すというが まさに槍の先のような姿態 のイカで、おなじみのマイ カ(スルメイカ)よりスマ ートで足も短い。他のイカ 類と同じで小魚が主食だが、 きゃしゃな体つきのセイナ ゴはスミイカに比べて餌を 取るのが下手なようで、餌 を早く動かすのは禁物とさ れている。夕方から朝まで の暗い時間帯が良く、日中 [やっぱ、餌の方が良く釣れる。
エギでもっと釣れるといいのにな!] も釣れるが夜に電気ウキを 使ってアタリを待つのが一 般的。イカ専用の仕掛けに アジやイワシ等の小魚を針 金等で巻き付けてイカが食 らい付くのを待つのである。 また、イカの身でも釣れ、 同種類の身を餌にする場合、 その餌をトモエというが、 イカのトモエは餌持ちが良 く長持ちする。しかし食い はやはり小魚の方がいい。
 引きはスミイカに比べる と弱く釣趣には欠けるが、 寒い夜に皆がこぞって足を 運ぶのは味が良いからであ る。釣りたてのイカの刺身 は絶品で、早い時期には釣 ったセイナゴの刺身を食べ たというのがちょっとした 自慢になるほど。他の料理 法はあまり聞かないが終盤 の子持ちセイナゴは美味し く、卵ごと煮付けや焼いた りしてこの時期でしか味わ えない海の恵みである。西 洋ではデビルとして嫌われ る事があるイカだが、釣り 人である幸せを感じる新鮮 な海の幸。セイナゴは小悪 魔のような魅力で今晩も太 公望を誘うのである。