桜前線が通り過ぎた道端
に、水仙や黄色いたんぽぽ
の花が目に入る。田んぼの
畦にはつくし、空にはいつ
のまにかツバメが飛んでい
るのに気付く。川にもシロ
ウオが春を告げにやってき
た。全てが躍動的に変化す
る季節だ。
海の春は一足遅くゆっく
りとした足取りでやってく
る。冬魚のホッケに混じり
メバルやカレイ、ウミタナ
ゴなど春らしい顔ぶれが釣
り人を楽しませてくれる。
アイナメもワカメを採る季
節に良く釣れる魚である。
晩秋にも良く釣れ、佐渡で
はシジュウ、マシジュウな
どと呼ぶ。語源は一年中(始
終)釣れるからとか、いつ
食べても美味しいから、と
いう説があるようだ。ちな
みに同じ仲間のホッケはド
モシジュウと呼ぶ。
アイナメは日本各地に生
息し、人気の高い釣り魚の
一つ。数多く釣れる事はま
ずないが、引きが強く何よ
りも美味しい事が喜ばれる
理由だろう。大物になると
50cmを超え、竿を絞り
込むからたまらない。岩礁
帯を好み、住む環境により
体色がちがう。魚の耳にあ
たる側線が5本もあり、他
の魚が1本なのに比べると
地獄耳といえそうだ。見た
目以上にどう猛で、近くに
寄ってきたエビ、カニから
小魚にまで襲いかかる。居
る場所が解れば釣り易い魚
といえる。磯、堤防の投げ
釣りや船釣りで釣れるが、
磯のクロダイ釣りの外道と
しても良く針に掛かる。意
外と足元に居る事が多く、
水深のあるテトラポットの
穴などは好ポイント。
白身でクセが無く、大物
は刺身か洗いが一般的。小
型はカラ揚げや煮付け、バ
ター焼きや塩焼きも美味し
い。また吸い物、味噌汁な
どにも向く万能選手だ。
好奇心が強くどこか憎め
ない顔をしているこのアイ
ナメ。どこぞの誰かに似て
いるような気がする。現代
は情報社会、アイナメの地
獄耳は重宝されそうだ。し
かし穴に入っていては遠く
を見渡せないような。もし
かすると似ているのは自分
なのかもしれない?。