[片方はヒラマサなんだが、お分かり?
ジギングはガツーンと来るのがいい]

新潟日報
平成12年9月
 【イナダ】
  堤防のスプリンター

 稲刈りが終わった田んぼ の空に畔(くろ)焼きの煙 が高く上るようになった。 ススキにはアキアカネが止 まり、枯れ草の中から鈴虫 やコオロギが秋の声を響か せている。
 海も秋色が濃くなった。 サヨリやアジが堤防を賑せ、 スミイカ(アオリイカ)や 尾花ダコ(マダコ)が釣れ 始めた。網にはカマス、イ ナダ、メジマグロなど入る 魚種も変わってきた。
 イナダは出世魚であるブ リの小さいもので50セン チくらいまでのものをいう が、秋になるとアジやサヨ リ、イワシなどを追ってご く浅場へも回遊する。佐渡 ではフクラゲとかフクラギ と呼ぶ。一匹でいる事は少 なく、数匹の群れで小魚を 追いまわしている。水面を 小魚がバシャバシャと逃げ 回っているのはイナダのし わざの事が多い。佐渡各地 の堤防でも釣れ、網や船で の曳き釣りで大量に獲るの で店頭にも安く出回る。小 型の魚体は脂が少なく、特 別美味しい訳でもないので あまり人気はないが、40 センチを超えるようになる と、その引きの強さと刺身 でも結構いけるので釣り人 には人気が高い。
[春ブリ(イナダ、ワラサ)も入れ食いになると結構釣れる。
みんな満足顔?]  釣り方としては生きた小 アジやサヨリを餌にウキ釣 りで狙うか、ルアーで狙う のがポピュラーである。活 餌で狙う場合はアタリがあ るまで待つが、ルアーの場 合はなるべく早く動かさな いと見破られるので忙しい 釣りとなる。秋に相応しく スポーツフィッシングとい ったところか。いよいよイ ナダのシーズンインである が、遅くは1月まで釣れ続 き次第に大型になる。
 食べ方としては大き目の 魚は刺身が普通であるが、 小型はナスやネギと共に煮 付けるのが一般的で、他の 料理法はあまり聞いた事が 無い。
 雨なし夏の付けが台風等 に跳ね返ってこなければと 案ずるが、釣りに食にと楽 しい季節の到来。自然を相 手に楽しむ一日、いっそう 佐渡の豊かさを再確認する 季節でもある。