[姫津でルアーで狙って釣ったのです]

新潟日報
平成12年12月
 【フグ】

 師走。お歳暮が届くよう になると日本海は季節風が 強く吹き荒れる日が多くな る。いつの間にやら山は白 く、軒下の干し柿が北風の 中でうまみを熟成、凝縮さ せている。モノトーンの視 界に南天の赤い実が鮮烈で 美しい。
 外海府海岸は大荒れ、両 津湾では大きな寒ブリが大 謀網に入り、漁師さんへの ボーナスだ。天気が悪いと 釣り人も少なく、堤防や磯 でクロダイやサヨリ、アジ などを狙う人を見かける。 夜にはセイナゴ(ヤリイ カ)が釣れ始める時期にな った。
 フグは季節を問わず投げ 釣り、サビキ釣り、ウキ釣 りとおよそどんな釣りでも 釣れ、周知の通り毒がある のが普通。その強い歯でど [小木の岩場、フグを狙っている訳ではない] んな硬い餌でもかじり、釣 り針の上から糸を切ってし まう。釣り人にとっては邪 魔な存在でいわば外道、憎 まれっ子世に・・であるが、 食味は実においしく釣友た ちはここ数年フグを持ち帰 る事が多くなった。佐渡で はクサフグ、ヒガンフグ、 シロサバフグなど多くの種 類が釣れ(捕れ)、昔から 食用にされてきた。しかし フグ毒のテトロドトキシン は青酸カリの千倍もの猛毒 で煮ても焼いても消えずさ ばき方を知らない人は料理 してはならない。時に魚屋 でさばいたフグを見かける 事がある。
 フグは漢字で河豚。その 身は種類にもよるが淡白で 美味しい。鍋に入れたり、 ワカメとの味噌汁は絶品。 他に唐揚げ、天ぷら、干し 物等。20センチを超える 大型は刺身、塩焼きもうま い。珍味として卵を100 日以上塩蔵し毒を抜いたも のもある。これを粕漬けや 焼いたりして食すのである。 また、ヒレ酒は酒飲みに好 まれる。
 今年は釣り場により異常 にフグが多い佐渡。景気の 低迷とは関係無いであろう がフグのようにふくれてみ たくもなる。けれど釣った フグは持ち帰り、美味しく いただくのである。 蕪村の「逢はぬ恋思切夜や ふぐと汁」などとうそぶき ながら・・。