[国府川水系のダムには
大きくなったニジマスがいてルアーを追う。]

新潟日報
平成13年3月
 【ニジマス】

晴れた朝、池の薄氷がい つのまにか見られない季節 となった。ふと声に目を移 すとやはり春らしい梅のつ ぼみとうぐいすの姿。なる ほど、暑さ寒さも彼岸まで、 である。
 海もそろりと春の準備。
 ナガモやギンバソウが店に 並び、海のようすを知らせ てくれる。伸びた海藻が産 卵床となり生まれくる稚魚 たちを待っているようだ。
 先日、渓流釣りへと出か けた。清冽な水と春が見え 隠れする谷で釣れたのはな んとニジマス。渓流の人気 を二分しているのはヤマメ とイワナであるが、ニジマ スは日本中の漁業組合があ る河川や湖沼に放流されて いる事が多く、頬から尾の 付け根まできれいな赤色の 帯があるのが特徴だ。英名 でレインボートラウトと呼 ぶ。世界的にマスというと、 北米原産のニジマスとシュ ーベルト作曲「マス」のモ デルになったヨーロッパの ブラウントラウトが双璧を 成す。歴史は古く百年以上 の昔から日本へと移入され ている。養殖が容易で、マ ス釣り場というのは、ほと んどこのニジマスである。
[渓流でのニジマスは釣られやすい。
釣れなくても気持ちいい??]  佐渡では安寿天神祭りや国 府川内水面の各釣り大会等 に成魚放流されることが多 い。放流したばかりのニジ マスは警戒心が少なくよく 釣れる。ハリに掛かるとジ ャンプして派手に暴れるの も日本古来の渓流魚と違う ところである。言葉が話せ るとしたらきっと英語だと 思うのは私だけではないは ずだろう。
 食用としては塩焼きや、 ムニエル、フライなどが一 般的で野趣あふれる薫製な どもおいしい。数年前まで は、スーパーでパックに入 ったニジマスがよく売られ ていたが近頃は少ないよう である。
 ミドリガメに代表される 帰化動物には問題が多く、 この種も例に漏れない。た だ日本ではニジマスが自然 繁殖する場所はごく少ない のが現実である。やはり日 本の時が育んだ水域には日 本元来の渓流魚がいちばん しっくりくるような気がす る。世紀を超えて定着でき ないニジマスはかわいそう な被害者のようである。