[美味しくてよく引くツラナゴ。根魚はいいね?酒盛り?]

新潟日報
平成13年5月
 【タケノコメバル】

山は緑濃く海は凪。夜に は蛙の声が田んぼに響く。
 日一日と変わる自然のスピ ードに生命力を感じる季節 である。採れたての竹の子 とワカメの味噌汁が至福の 一時を与えてくれる。
 今年は雨が足りないと田 畑の持ち主は快晴の空を仰 いでいる。水路へと引かれ た川水は残り少なく、海か ら上ってきたアユが細い川 の中で苦しそうだ。
 海は例年の半月遅れだと いう。沖磯ではクロダイや マダイ狙いの釣り人が花を 咲かせたようにカラフルな 格好で竿を振っている。
 時節がわかる名前を付け られた魚もいくつかあるが タケノコメバルもその一つ。 佐渡ではツラナゴと呼ぶ。 顔が突き出たように長い事 からであろう。タケノコが 出る頃に良く釣れる魚で、 体色は黒っぽい黄、茶、黒 褐色のまだら模様。東北の 太平洋側ではベッコウゾイ と呼ばれる。大きいもので は四十pを超え、異様な迫 力がある。藻の多い岩礁帯 を好み、小魚やエビ、カニ などを餌としている。
 ソイやメバル、アイナメ 等、岩などの障害物を棲み 家にしている魚を根魚と呼 び、味の良い種類が多いが、 タケノコメバルも同様でプ リッとした白身は刺身や煮 付け、塩焼き等が一般的で あるが、味噌汁にするとい いダシが出て絶品である。
 干潟の埋め立てやダム建 設等による自然環境への影 響が話題になる近年である が、釣りを通して未来を探 る時、釣り天国といわれる 佐渡においても無関心では いられない。自然は無言の 教師である。一釣り人とし て我々の子供たちに良い環 境を残していきたいと考え つつ、少年の目で竿を出す 今日この頃である。