[うちの裏で釣ったハゼドンです。誰も狙わないからいっぱいいる。]

新潟日報
平成13年7月
 【マハゼ】

 短かった梅雨が明け、セ ミの声が聞えるようになっ た。大暑も過ぎ土用の丑、 空に浮かぶ雲もすっかり夏 の雲になっている。学生は 待ち望んだ夏休みである。
 海は澄んだ青色。定置網 にも夏魚のシイラが入る季 節となった。砂浜は海水浴 やジェットスキー、手漕ぎ ボートなどでにぎわいを見 せている。
 夏、砂浜で釣れ る魚の代表はシロギスであ ろうが、メゴチやハゼもよ く釣れてくる。ハゼはほぼ 全国に生息するが市場に出 る事はほとんど無い魚。川 が流れ込む汽水域や大きな 川の河口域に多く、初夏か ら晩秋まで釣れ続く。
 ごく 岸近くで釣れるためリール の付かない「のべ竿」を使 ったウキ釣りが楽しい。佐 渡は水が澄んでいるためハ ゼを驚かせないように静か に釣るのがコツである。誰 かに似てとぼけた顔をして いるが、不用意に近づくと 逃げてしまう。えさはイソ メやゴカイ類を使い、底に 這わせるようにする。
 私が始めて釣りをしたの は、父と家の裏の砂浜で釣 ったハゼであった。夕飯に 塩焼きで食べたのを鮮明に 記憶している。
 ハゼはキス同様、天ぷら やフライにして食べるのが 一番であるが、甘露煮も昔 から有名である。小さいも のは腹を出して丸ごと唐揚 げにしてもおいしく季節が らビールによく合う。
 自分で釣った季節の魚を 食べられるのは釣り人の特 権であるが、それも魚があ っての事。コンクリートの 海岸や川、水が涸れる川な どによってハゼも住む場所 を追われている。よく、昔 は魚が多かったという話を 耳にするが魚は過去に逃げ 込んだ訳ではないと思う。
 我々の意欲や行動で魚を未 来へと逃がす事ができるは ず。渚や河口で親子が竿を 出す姿がそこかしこに見え るような明日へと。