[4月の戸地川でドライフライでの尺オーバー最高!!]

新潟日報
平成11年3月
 【渓流】

 例年であれば、山里に残 雪が見える時候なのだが、 今年はやけに雪が少ない。 申し訳程度に日陰で見かけ るだけである。雛祭りも過 ぎ、陽射しも何やら春めい てきた。
 3月1日、渓流釣りが解 禁になった。佐渡は小河川 が殆どではあるが、ほぼ全 島にイワナやヤマメが生息 している。漢字で『岩魚』 『山女魚』と書くこの渓魚 達はサケ科に属し、清冽な 流れを好む冷水性の魚。水 温4度。川面から頭を出し た石が、氷の帽子をかぶっ [ネコヤナギ越しに撮った釣友。新保川にて] ていても餌を追うのだから 恐れ入る。幻の魚などと形 容される岩魚は、エサをく わえ損ねたり、見失ったり と間の抜けた一面もみせ、 どこか親近感を覚える。山 女魚は岩魚よりも釣りにく く、宝石のような目と、パ ーマークと呼ばれる小判型 の模様の美しさに思わず目 を奪われ、こちらは渓流の 女王と呼ばれている。
 解禁の声を聞き、遊漁券 を買って、いそいそと川へ 足を運ぶと、やっと釣りシ ーズンが来たと感じる。河 原のネコヤナギ、斜面のフ キノトウが春を知らせてく れる。釣りの種類も餌釣り、 テンカラ(日本式毛鉤釣 り)、ルアーやフライフィ ッシングと多様に楽しめる。
 渓流に入る楽しさは、釣 りそのものの他に、自然を 五感で感じられる事だ。ひ ょうきんなテンに遭遇した り、石を起こすとまだ冬眠 中のイモリが迷惑そうな顔 をみせたりと、釣り以外に も退屈はしない。進む毎に 変わる風景と釣りのポイン トに、時間の経つのも忘れ てしまう。
[藤津川でのベストコンディションの幅広ヤマメ]  山で一番低い場所から見 回す景色は、釣り人だけが 見られるのかもしれない。
 春を感じる渓流釣り、谷 風寒い世間にも、春を待つ ばかりだ。