日に日に紅葉が里へと下
りてきた。柿もたわわに実
り、葉の少なくなった枝は
どこか寂しい感がする。 秋
もたけなわ、こたつに入り
鍋でもつつきたくなる季節
である。
海も秋らしく小荒れの日
が多く、北交じりの風は肌
に冷たくなってきた。しか
し水温はすぐに下がらず釣
った魚をつかむとまだまだ
温かい。
ついこの間まで小さかっ
たと感じていたサヨリがも
う、20センチを超えるま
でに成長し格好の釣り魚と
して堤防の人気者になって
いる。体型は細長く透明感
のある銀青色をしている。
口は受け口で長く突き出た
下顎の先端が鮮やかな紅色
に彩られている。まるで口
紅を付けたきゃしゃな女性
のよう。水面下1m以内の
ごく表層を群れて泳ぎ、プ
ランクトンを主食とする沿
岸内湾性の魚である。
誰でも釣れるファミリー
向けの釣りであるが、人よ
り多く釣るにはやはり工夫
が必要となる。午後からが
良く、ウキ釣りが一般的。
餌はアミエビを使い、米ぬ
かや市販の撒き餌をコマセ
に使用する。また3本針を
使ったギャング(引っ掛
け)釣りは数を釣るには効
率がいい。中には7百匹も
釣る人もいて、誰が料理す
るのだろうと余計な心配を
するほどである。
寿司ネタなどでもお馴染
みのサヨリ。刺身はもとよ
り天ぷら、フライ、塩焼き、
吸い物、酢もの等が一般的。
開いて2匹の腹を合わせ、
一夜干しにしたアワセザヨ
リは佐渡特有のものである。
料理して気付くのは腹の内
側が黒い事。腹黒い人の事
をサヨリのようだと形容す
る地方は多い。
これから冬にかけて数は
釣れなくなるが40センチ
もあるサヨリが混じる事も
あり、まだまだ釣り、食味
ともに楽しませてくれそう
である。晩秋の昼下がり、
晩御飯のおかずを仕入れに
竿を片手に堤防へと足を向
けてみるのも悪くない。