それは99年12月25日、クリスマスのことだった。僕は、一番気に入っている地方限定の美形(変態)舞台役者のクリスマスランチショーを終え、興奮が収まらないまま、BSにチャンネルを合わせた。
ビデオのスイッチを入れるとまもなく番組が始まった。そして、僕の日常生活は大きな変化を迎えた。
As long as there's desure You'll never tire
〜THE GALAXY EXPRESS 999
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そのグループの名前はもちろん知っていた。僕は彼らの曲を聴いて育ったといってもいいだろう。リーダー、ミッキー吉野。ボーカル、タケカワユキヒデ。そしてギター、浅野孝巳。何故か、外人二人の名前は覚えていなかったが、途中でメンバーが変わったことは覚えていた。そして、僕の一番のお気に入りは、寡黙なギタリスト、浅野孝巳だった。
とはいえ、どうしてそれを覚えているのかわからないくらいのいい加減な認識だった。実際、《CARRY LOVE》が最後のシングルだったことも知らないくらいだったのだから。けれど、この曲は僕にとって、ある意味運命の一曲になった。クリスマス以前、僕はゴダイゴのCDは一枚しか持っていなかった。そのCDを買った理由は《CARRY LOVE》が入っていたからである。
クリスマスの夜、僕はそのCDをBGMに眠りに落ちた。
Carry love to strangers Love to neighbors Ooh
Love to one another
〜CARRY LOVE
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それまで僕はいろんな曲を聞き続けてきた。南野陽子、菊池桃子などの80年アイドル、安部恭弘、杉 真理などのJ POP、センスオブワンダー、佐藤 博などのスタジオミュージシャンまでその幅は広い。実際、ちょっとした中古CD屋くらいの品揃えはあると自負している。少なくとも日本のものは。そう僕の部屋にないものは、洋楽のCDだ。全くないとは言わない。あるのはワムのベスト版が一枚きりだ。
僕がどうやって曲を選んできたかといえば、まず声が気に入っていること、そして詩が理解できることだ。つまり、英語で書かれた曲はそれが理由ではじかれていた。そんな僕にとってゴダイゴは唯一の例外となる。
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And with time there 'll be no more
Need for a broken heart
〜THE BROKEN HEARTED
《THE BROKEN HEARTED》 この曲をタケカワ氏がやらなかったら、あるいはここまで夢中になることはなかったかもしれない。別に失恋していたわけでもないが、こういうまっすぐな応援歌が、どういうわけか昔から好きだった。作詞をしたのがタケカワ氏だと知って、奇妙な驚きを感じた。ソロを聴いたことがなかった僕はタケカワ氏が詩を書くとは思わなかったのだ。それも、こんな話しかけるような口調で。
僕はビデオ《THE BROKEN HEARTED》を繰り返して見て、挙句の果て[What A Beautiful Name]を購入し、[MAGIC CAPSULE]を購入し……ゴダイゴウイルスは僕を浸食し始める。
Every little child can laugh and sing in the sun
Their song will be heard by everyone
〜BEAUTIFUL NAME
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僕は音楽を楽しむ人間が好きだ。特にステージの上で、純粋に音楽を楽しむ人間を僕はこよなく愛している。タケカワユキヒデはそんな僕に対し満面の笑顔で答えてくれた。それまでTVで何度か見かけたことはあるがやはりゴダイゴでの彼の表情が一番だと思う。何というか安心しきって楽しんでいた。そして、そんな彼が、いや5人がとてもカッコよく見えた。昔はともかく、今の彼らは断じてヴィジュアル系ではない。全員、いいオジサンであり、いいお父さんである。それでも僕は断言できる。少なくともステージの上での彼らはどんな若手バンドよりもかっこいい。無論、演奏のクオリティーの高さは言うまでもない。今回のライブで演奏した曲の半分以上が20年前のものであるにも拘らず、全く古さを感じないことでもそれは証明できる。
You make me feel so guilty
For wanting to be close to you
〜GUILTY
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先日、『タケカワユキヒデの音楽紀行』のフィリピン編を見た。一時間いっぱいタケカワ氏のナレーションを聴いて思った。彼の語り口は僕の耳に馴染んでいた。この四ヵ月、毎日聞き続けた理由がわかった気がした。彼の魅力はやはりその声にあるのだ。けして美声とは言えない。どこか舌足らずな口調はある意味、僕自身の口調にも共通するところがある。
そして[I LOVE YOU]のジャケット。別に好みの顔というわけではないのだが、このジャケットだけは気に入っている。そういうあいまいな魅力が僕をひきつけてやまないのだろう。
最後にタケカワ氏作詞のごく甘のラブソングを記して、このエッセイを終わろうと思う。
強いふりして はかなくて そして優しい君
柔らかな寝息 きかせて 僕の腕の中で
〜I LOVE YOU