CQ Monitor Report
 HC−100ATモニター・レポート (CQ 2007.02 P.91) JA0BYV 佐藤 敏夫

 私の運用形態は、固定と移動でCWの方が多く月に一回以上は移動運用を楽しんでいます。周波数は7MHzや10MHzがメインですがコンディションの良いときはハイバンドのSSBや夕方からのローバンドも、移動運用といっても、車両で移動しながらの運用はほとんどありません。  移動の手段は四輪または二輪で、特に二輪の場合はいかに荷物を少なく軽くできるかで移動が楽になりますが電波の飛びとは、やや反比例するところもあります。  HFローバンドのアンテナに関しては、一番場所を取らないのが短縮コイルを使ったホイップで、一番場所を取るのがフルサイズのダイポールですが、飛びはやはり長さがものをいいますし、短縮したものよりも帯域がとれます。しかし、移動先がいつもフルサイズのアンテナが張れる条件の整ったところとは限りませんので、LWやWHIPの登場となるわけです。短縮ホイップの場合は駐車場でも路肩でも駐車可能であればそこが運用場所となります。しかし、バンド内どこでも同調がとれているわけではないので、アンテナ・チューナが必要になります。ロングワイヤはチューナが必須ですし、フルサイズのダイポールでも設置環境により、同調がずれることはよくあります。したがってアンテナ・チューナは移動運用には必須といってもいいでしょう。2006年春から夏まで東京ハイパワー製のHC-100ATオート・アンテナ・チューナを使用してみましたのでレポートします。

<大きさ、重さなど>
 私が今まで使用していたアンテナ・チューナはヤエスのFC-700という小型のマニュアル式のものを2個(1個は1.9MHz用に改造)と自作50MHz用の合計3個を常に車に搭載していました。二輪の場合はこのうち1個か2個を持って出かけるという状況でしたが、東京ハイパワーのHC-100AT一個でこの3個分をカバーできるようになり質量重量共、3個の合計と比較すると、1/3以下で、しかも、オート・チューナです。 カタログデータは下記のとおりで、大きさはCQ誌と比較したものが写真−1です。重さはカタログ値では640gですが、実測740gでした。とにかく軽量であることには違いありません。最大入力は100Wで移動局の最大出力は50Wですから十分に余裕があります。チューニング時間は私の使っているアンテナの場合はほとんど1秒以下で終わり、その動作の速さには驚きました。ロング・ワイヤの場合はバンドによっては2秒程度の時間を要し、複数回チューニングさせることもありましたが、マニュアル・チューナとは比較になりません。動作時の電流はカタログ値0.5A以下、待機時は実測7.5mA(12Vバッテリー)でした。
 
  写真-1    写真-2 FT-100M、FC-700、HC-100AT

 周波数範囲   :1.8〜54MHz
 最大入力    :100W
 チューニング電力:1.5〜10W
 チューニング時間:初回平均1.2秒(最大4秒以下)
 電源電圧    :DC12〜14V
 動作電流    :0.5A以下
 待機電流    :8mA
 外形      :180(W)×40(H)×177(D)mm
 重量      :640g
 付属品     :DC電源コード、3.5φプラグ

<トランシーバとの連動>
 [ICOM] オプションのケーブルを使用して接続すれば、トランシーバ本体のTUNERスイッチを押すだけで、HC-100ATを制御することができます。接続ケーブルはパーツを買い揃えて自作すれば1000円以下で作ることも可能です。写真−3は私が自作したもので、接続図は図−1です。
 
 図−1  写真−3 自作コントロールケーブル


 [YAESU]YAESUのトランシーバの場合はインターフェースが違いコントロールケーブルを接続できませんのでHC-100ATのTUNEスイッチを押して動作させます。手順は送信出力を下げて送信し、チューニングをとって運用モードとパワーに設定します。FT-100を例に以下説明します。
1.MODEを連続キャリア送出するモード(AMやDIG)にします。
2.FUNCTION 21 HF TX PO で送信出力を10W以下にします。(FT-100Mの場合0でDIGモードの時約2.5〜3W)
3.マイクのPTTスイッチを押してキャリアを送出します。
4.HC-100ATのTUNEスイッチを押してチューナーを動作させます。
5.同調動作が完了したらPTTスイッチを離しキャリアを止めます。
6.送信出力を必要なPOWまで上げます。
7.MODEを運用モードにします。
この一連操作も、10秒〜15秒ほどで完了します。
 「FT-100Mでの接続について」
 FT-100の本体には送信スイッチがありませんのでマイクのPTTを押しながらHC-100ATのTUNEスイッチを押すのですが時々送信せずにTUNEスイッチを押したりして操作がスムースにいかなかったりで、外部にスタンバイ・スイッチをつけました。自作マイクにつけたスタンバイ・スイッチの回路は図−2です。   また、FT-100の場合AMモードのみ単独でキャリア出力設定が可能ですのでAMモードのキャリア出力を1.5〜3W程度に設定しておけば、HC-100ATのチューニングをするときはモードをAMに変更するだけで送信出力を低減できチューニング後に運用モードに戻すだけでAM以外は運用時の設定POWになります。これで一連操作の2と6が不要になります。
 「取説の記述について」
 取扱説明書の接続方法の項目で(YAESUトランシーバーとの外部制御法については別途お問い合わせください)との記述がありましたので、E-Mailで具体的にFT-100Mの機器名も示して問い合わせたのですが、「YAESUのトランシーバとは接続できません。手動でのチューニングは可能です」という返事が来ただけで、残念ながら期待していた内容ではありませんでした。取説の「お問い合わせください」の一行はまったく意味がありませんので削除すべきでしょう。

 [KENWOOD等その他]その他のメーカのトランシーバは私の場合使用していませんのでここでの記述はひかえますがYAESUと同様の操作で使用できるはずです。


 図−2

<5mワイヤ・ホイップ+HC-100AT>
 5mのビニール電線でどこまで楽しめるかやってみました。自作の簡単なタイヤ・ベースに立てて、5mのタモ竿に巻きつけ電線の先にはギボシ・コネクタのプラグを付けて、車のアンテナ基台に差し込んだだけで、アースは車のボディのみで50MHzから10MHzまで7BANDを運用してみました。さすがにバンドを切り替えた直後はチューニングが取れるのに2秒ほどかかったり、複数回TUNEスイッチを押すこともありました。しかし、7BANDすべてで問題なく送信でき、マニュアル・チューナの時はバンドQSYに5分は必要でしたが約10秒もあればQSY完了、ワイヤ1本ですので車外に出てコイルの交換の必要も無く、小雨の時などはQSYが楽です。日曜日の昼食後近くの川の土手の上で夕食前まで運用し、30局と楽しくQSOができました。 翌週はオートバイで移動し、同様に5mのワイヤをオートバイのアンテナ基台に差し込み18MHzを中心にバッテリー運用でしたので出力20Wで運用、18/21/24MHzでSSBをメインに24局とQSO、アースはバイクの車体のみでしたが、なんとかチューニングがとれました。 しかし、これらは、車種やボディへのアースの取り方等で変わると思いますので、カウンタポイズ用の線を用意しておいた方が良いでしょう。
 
 
 写真−4 アンテナ基台への接続 写真−5 オートバイ移動の様子

<5mワイヤ・ホイップ+18mワイヤ+7mワイヤ>
 5mのワイヤで10〜50MHzまで運用できましたので、さらにローバンドを運用するべく夕方から移動して、5mのワイヤの先にギボシ・コネクタをつけて18mのワイヤを接続し、5mタモ竿から斜めに18m引き下ろし、最低地上高1.5mでしたが10/7MHzを運用、さらに7m追加し3.5/1.9MHzを運用してみました。約2時間で34局とQSO、特に3.5MHzでは福島県の局とSSBで25分間59-59の快適なQSOができました。1.9MHzでは2エリアの移動局とQSOできました。
 
 
 写真−6 軽四輪での移動 写真−7 軽四車内の後部座席

  <まとめ>
 とにかくお手軽移動には最適です。特にICOMのトランシーバには最適で、ICOMのAH-4同様IC-703、IC-706やIC-7000などトランシーバ本体から制御できます。 ただ、限りなくSWRを1に近づけないと気がすまない方はマニュアル・チューナを使用してください。 短いワイヤ一本で多バンドを素早くQSYできるHC-100ATは移動運用をよりスピーディに快適なQSOを約束してくれるでしょう。   アンテナ・チューナはアンプではありません。送信機のパワーが定格以上にUPするわけではなく、より良好に動作させるためのものです。過大な期待はしないようにしましょう。本来はちゃんと同調したアンテナを接続するのが一番なのです。



[CQ出版へ後から送ったが間に合わなかった追加記事]

<フロントパネル>

 移動先で車内の場合は問題ありませんが、バイクや外で直射日光の当たるような場合、筐体の温度がかなり上昇して、フロントパネルが膨張し、2〜3ミリほど前にせり出してきます。写真−8は冷えて少し戻った状態ですので良くわからないかもしれませんが、矢印の中央付近は1.5ミリほどでています。材質の関係で熱膨張が大きいのでしょう。直射が当たるような状況ですと、筐体の中もかなり熱くなっていると思われますので、中のパーツも厳しい状況下で使用されているわけで、そのような状況で運用しないように気を付けなければならないというアラームとして受けとめました。Hi ほかの局も同じくパネルが前に出てきたと言ってましたので、パネルの材質についてはアウトドア運用を考えた場合、メーカー側にも一考をお願いしたいところです。

 写真−8