第六節:いよいよ旭川へ〜三浦綾子を訪ねて〜

8月27日(水)天気:霧のち晴れ。
行程:士別〜旭川

 毎度おなじみ朝は4時起き。早速起きて朝食の準備、といってもいつもと同じレトルトなのだが。
朝食の準備をしていると、同志(キャンプ二人きりだったからね)が起きてくる。彼もライダーだというのに早い。そういや昨日は焼尻島をレンタサイクで回ったって言ってたっけ。そりゃしんどいからすぐ寝るわけだ(昨日はお互いに9時前には就寝)。
食事が終わると出発の準備、しかし、今日もまた全然お日様が出てこない。もうとっくに日の出は過ぎているのに…と思っていると、何だか体にまとわりつくような湿気、そう、今日も霧が出ているのだ。
霧が出ているときにフライを乾かすのはハッキリ言って無駄な行為。だからして今日もフライは乾かすことなく畳む。コレをするようになると出発がかなり早まるようになる(ただし、フライが臭くなるという欠点あり)。というわけで今日は6時前にはキャンプ場を出発。同志の彼には、HPのアドレスを教えておいたんで気が向いたら遊びに来てくれるかな…(来てくれた時は是非ともBBSに書きこみをヨロシク!!)

 キャンプ場を出て、平野部に出てみてビックリ。今日はなんて言うか、霧というより霧雨というほうが正しいみたい。別に走行に支障が出るわけじゃないが、走っていると髪からしずくがしたたり、ゴア(シミテックス)がかなり濡れる。これもまぁ、時間が経てば改善するのだろうが…
そうこうしているうちに10km程走って剣淵市街に到着。ここには「絵本の里」がある。”めるふぇんてぃっく”な輪駆としては、実はかなり楽しみにしていたのだが、こんな時間(7時前)に開いているはずはないよな…どうせならもっと遅く(9時頃)にキャンプ場出ればよかった…とか思いつつ行ってみるとなんと水曜定休とのこと。これはこれでちょっと嬉しい(時間を得した気がする)。
せっかく来たのに何もせずに剣淵を抜けるのは嫌なので、絵のあるアンダーパス(跨線橋の逆)なんかを見ておく。つくった時期が分かりやすいのでちょっとほくそ笑む(だって、絵の中にDQWのモンスターがいた)。
剣淵を抜けると、次は和寒。道道とか、ちょっとマニアックな(!?)道を通ったせいかカントリーサインが設置されていなかった。おかげで気が付けばそこは和寒町。ホントそんな感じだった。
和寒市街にはほとんどいる必要はない。和寒といえば塩狩峠。そう、今回のツアーの目玉の一つ、三浦綾子の小説「塩狩峠」のクライマックスを飾ったあの塩狩峠だ。今年の北海道、どこに行きたいか考えていたときに、まず浮かんだのが名寄〜旭川の軌道の隙間を埋めること。その区間にある、この塩狩峠、何も考えなければただの峠だが、せっかく「塩狩峠」っていう小説があるんだから、読んでから行けば面白くなるんじゃないだろうか、そう思って図書館で借りて読んだ「塩狩峠」。
その内容にかなり衝撃を受け、その後「天北原野」や「泥流地帯」などの三浦綾子の北海道関連の小説を読みあさっていたのがまだ春になる前。その後、「氷点」が図書館にない(借りパクされた??)ことで、止まってはいたが、とにかく「塩狩峠」を読んで以来、この峠に自分の力で登り、その風景、状況を楽しみたい、というのがずっとあったわけだ。
その塩狩峠への登り。これが思っていた以上に楽だったりする(笑)車は多いけど、路肩が広いので一人なら問題ない。
両太股筋肉痛でかなりやられている輪駆でも、ふつーに登れてしまう。そんな峠。でも、昔はこの峠も旭川(石狩)と士別(天塩)を結ぶ最大の難所だったりするのだから不思議なものだ。
ほどなく、塩狩峠頂上付近に到着。ここに、塩狩峠記念館(三浦綾子旧居)や、長野政雄氏を悼む碑やら、「塩狩峠」関連の施設がたくさんあるわけだ。当然、塩狩駅やユースホステル、温泉なんかもこの辺にある。
ただ、気になるのが開館時間。今が8時半。9時開館ならいいが、10時だったら…ドキドキしながら案内板を見ると見事に開館10時。しょうがないので塩狩駅の待合室でコレ書きながら1時間半を過ごす。コレ書いていたら1時間半って意外とすぐだったりするんだ、これが。

 塩狩峠記念館。10時になってすぐに行ったのに、既に人が入っていました。ってか、さっきまで塩狩駅で写真パチパチ撮ってた奴じゃねぇか。鉄だけに飽き足らず、三浦綾子まで読んでいるとは…って、俺も似たようなもんか??
結局40分くらい過ごして、記念館を後にする。時間さえあれば三浦作品の一つでも読んで帰りたいところだが、それをしていると=塩狩で一泊ということになるのでさすがに却下。今日は頑張って旭川に行かなければならないのだ(強気)。
そして、塩狩峠の下り。下り始めにカントリーサインと峠の表柱があるのでしっかりもらっておく。下りはいたって爽快。なだらかな下りではあるが、カーブがほとんどないので結構飛ばせる(路肩も広いし)。
比布の方に下りてきて、ここで一つ忘れちゃぁならないことがある。たしか、比布にはJRの線路沿いにサイクリングロードがあったのを輪駆は2年前の道北ツアーの行きに列車の中からしっかりと確認している。アレをうまく使えば直角に進む√40を通らなくとも、斜めにショートカットできる上に、自転車道だからサクサク進めると言うおまけ付き。コレを逃さない手はない。
で、北比布駅の少し南側から自転車道に侵入成功。コレで一気に進めるぞ…
進んだ先はもう比布駅のすぐ手前、この間10分ほど。一気にショートカット成功、である。
比布駅といえば、ピップエレキバンのCMで使われて一時人気の出た駅(その頃のことはよく知らない)、だが、今の比布駅は構内に喫茶店があるが開店休業状態、駅舎も大分疲れ果てているらしく、当時の面影を忍ばせるものはあまりない、窓に一枚だけ、ピップエレキバンのシールかなんかが貼ってあったっけ。
比布の市街地を走る。あまり食事できそうなところはない。郷土資料館に寄ってみるも、人が常駐しておらず、町の方に連絡をいれないと見学できない有様(まぁ、この小さな町の郷土資料館が見たいなんて人自体があまりいないのだろうが)。しょうがないので一気に旭川に向かうことにする。旭川までは約20km程。今が大体12時前なので、1時過ぎには着くはずだ。

 市街地を抜け、しばらく走るとトンネルが。400mという中途半端なトンネルを抜けるとそこはもう旭川市。しかし、市街地(買物公園辺り)まではまだかなりある。ひたすら√40をエッチラオッチラ走る。しかし、√40はさすが幹線国道。交通量が多いのはもちろんのこと、大型トラックなんかも多い。そのくせ意外と道が狭い(それでも本州よりは広い)ので、かなり困る。
特に困るのが、道路の両端の白線の外側(いわゆる路肩)だけが舗装しなおされてないところが多いのだ。白線より内側は、新しいアスファルトで舗装されており、轍こそはあったりするが、それでも走りやすい。でも、白線の外側になると、昔の舗装のままなので、地面にヒビが入っていたり、ギザギザだったりして非常に走りにくい。追い討ちをかけるように、排水用の溝口なんかもあったりするからなおさら走りにくいのだ。
かといって、歩道を走るのもまた大変。歩道は当然、段差が多いし、人だって通る(たまに、だが)。普段の自転車で通る分にはさしてストレスは感じない小さな段差でも、フル装備の自転車にとっては、小さな段差でもかなりの衝撃をもらう、それが続くとホント、ストレスの素になるわけだ。

 そんなわけで、状況に応じて車道や歩道を走ったりしながら、旭川へ向かう。旭川は何度か来たことがあるので、結構知っていたりするのだが、√40方面から来るのは始めてなので、結構新鮮。旭川スタルヒン球場なんかも見つけました。
で、ようやく√40の環状箇所(凱旋門みたいに道路がなっている)へ。ここからは駅方面ではなく、買物公園方面に向かう。まぁ、駅方面でも良いのだが、駅周辺は人が多いので自転車を止める場所にちょっと困る。買物公園の反対側から入ればまぁ、どこかしら探せるだろう(駅から離れるほど人が減る)、という魂胆だ。
久々の買物公園は、痛い位の日差しが照りつけている。すっかり腕は日に焼けてしまった(当然、グラブ焼けしている)。まだ人の少ないところで自転車を置いて、ついでにこの天気を利用してやろうと、自転車にフライシートを被せていざ出陣。目指すは今井丸井の旭川店。
しかし、買物公園って、かなり長いんだね。歩けども歩けども駅に近づかず。結構歩いたなぁ〜と思ったらようやく山頭火の4条店の辺り。で、日陰を歩いて何とか今井丸井へ。
しかし、目的のものがどこにあるのかイマイチ分からない。多分おもちゃ売り場か文房具売り場辺りなんだろうけど…とりあえずそっちの方に行ってみると…お、いましたいました、黄色く、丸いあの可愛いヤツが。

 早速購入。今度は+αで紐を引っ張るとブルブル震えるヤツも手にいれてみた。まさに一日振りの再会ってヤツだ。「おかえりなさい、onちゃん♪」(実際は二世になるわけだが)
onを手にいれたら(さすがデパート、かなりの過剰包装をしてくれた、しかし、おくりますか?って聞かれたから、てっきり地方発送かと思ったけど、多分プレゼント用ですか?って聞いたんだろうな。まぁ、こんな男が一人でon買いにきたら、そりゃプレゼントだと思うわなぁ〜)次は昼飯。もう1時を過ぎているので腹も減っている。やはり旭川といえども、昼は豪華に行かなければ…
旭川で食べる、といえば当然浮かぶのが旭川ラーメン。今じゃすっかり全国区になってしまった。が、何が楽しくて北海道まで来てラーメン食って帰らなきゃならんのか。山頭火、八尾に行きゃあるよ、梅光軒だって、奈良でのれんわけした店があらぁ。別に旭川にいなくとも旭川ラーメンなんて食えるんだよっ!!ってか、ラーメン屋ってのんびりできないじゃねぇか。ゆっくり飯食って、のんびりしたいの俺は。まぁ、基本的にあまりラーメンに対する執着心がないんだよね。嫌いじゃないけど、好きこのんで食うかといわれればNO(ブラックnoちゃんは関係ない)、だな。
と、べらんめぇ調に語ってしまったが、要する所ラーメンは食べたくない、だから別の店を探す。そうだなぁ〜海鮮ものは結構食ったからなぁ〜揚げ物なんかが恋しい季節だなぁ〜と思っていたら、ちょっと高級そうな寿司と天ぷらの店を発見。吸い込まれるように入ってゆく。こういう敷居の高そうな店でも、昼間は結構良い値段で定食食えたりするもんね、まぁ、ちょっと位高くても、どうせ夜はカレーなんだし、昼飯位は良いもの食うんだ。
で、そのお店で「特上天ぷら定食(¥1,800)」を食う。いやだってさ、特上よ特上。こんなの絶対高槻で一人暮らしているときは頼めないもの。こういう機会に食べるべきだよね。ってか、観光客向けの北海道っぽい寿司なんて二千円以上するもの、それに比べると安い安い。
がっつりと堪能。まさか海老天が3匹も…帰りに板前さん(寿司握ってる人だがらお世話にはなっていない)が、私をチャリダー(旅人)だと見越してなのか、「頑張ってくださいね」と声をかけてもらえる。そういう一言が嬉しかったりするんだよねぇ〜
店を出た後、自転車に戻る。フライシートが完全に乾いていて嬉しい。これからの旅の基本になりそうだな、これは。フライをしまって、いざ出発。とりあえず今日泊まるキャンプ場に向かうことにする。ことにする、といっても、これからいく「春光台グリーンスポーツ施設」は’99のソロツアーで泊まったことのある場所。道も覚えているから気は楽だ。
キャンプ場で受付をし、説明を受ける。自転車がサイト内持ちこみOKになっているのが嬉しい(前はリヤカーで荷物だけを引っ張っていったものだ)。
荷物を下ろし、テントを張ったら、風呂…の前に行っておきたいところがある。それは「三浦綾子記念文学館」だ。旭川にも実はあったりする、というよりこちらの方がメインかと思われる。で、キャンプ場の管理人に場所を聞くと、何と駅の裏にある川の向こう側とのこと。それなら買物公園から直接行けばよかった…と悔やんでもしょうがない。とりあえず装備を全て外した銀輪駆号は、快調そのもの。水を得た魚とはこのことをいうのか、さっきまでフル装備でのんびり走ってきた道をあっという間に駆けてゆく。
そして、15分ほどで記念館到着。一度道の駅で道を聞いただけ(しかも、そのすぐ近くだった)で着いたのは管理人のおっさんたちの説明がよかったから(俺が市内の地理をある程度知っていた、というのもあるが)。感謝しますよ。
記念館、ちょっと入館料高いかな(¥500)と思ったけど、結構良かったっス(どちらの記念館も館内撮影禁止なので写真は一枚もない)。それと、記念館の裏にある営林省の見本林(氷点の舞台にもなっている)ここがまたかなーりのまったりスポット。今日はちょっとあわただしかったんでゆっくり出来なかったけど、今度旭川に来ることがあったら、ここでゆっくりしよう、と心に決めたくなるような、そんな場所です(三浦綾子氏も好きな場所といっていたが、良く分かる)

記念館から再びキャンプ場へ。しかし、記念館の近くにもう一つキャンプ場があった(そっちも旭川市営だった)のだから、そっちにすればよかったとちょっと思う。でももう荷物も置いてきたしなぁ。
キャンプ場に戻ると風呂。ゆっくり入る。上がったら後は飯食って眠るだけ。いつものようにカレーを食って、いつものように眠る。そうそう、今日は火星が地球に大接近する日。東の空に明るく輝く火星を見ながら、明日は頑張って走るぞーなんてことを思っておりました。
明日は北海道に来ているブラックシュガー氏に会うために遥か遠く、岩見沢を目指す。心配なのは明日の夜から悪くなる天気だが…

今日の走行記録
走行時間5:17:07走行距離88.46km
最高速度48.2km/h平均速度16.7km/h
第七節へ