ライブスチームの運転


22.蒸気圧低下の原因  (H27.12.10掲載)

 スチームアップが完了し、蒸気圧もボイラー水位も充分となったらと、いざ走行開始となります。しかし、走行開始した途端、 正確には加減弁を開けてからわずかな時間で、蒸気圧が低下したり、あるいはレイアウトを1周したところで蒸気圧が低下することがあります。 こうした蒸気圧が低下する原因について考えてみます。
 蒸気の発生量より消費量が上回ると蒸気圧が低下するのでしょう。たぶん。蒸気の発生系に問題があるケースと、消費系に問題があるケースと、 その両方に問題があるケースがあると思います。


1.蒸気の発生系の原因
 ・石炭の焚き方
  ・投炭量が適切でない。
   投炭量は少なくても多くてもよくありません。特にスチームアップ直後は火床が充分に出来上がっていませんので、 多く給炭する必要があります。走行開始直前に数杯くべると良いと思います。
   また、たとえ蒸気圧が上がっていても火床が薄ければ投炭します。火床が薄いまま走行したら蒸気圧が低下します。 この時点が石炭燃焼のピークかもしれません。ピークが過ぎれば、石炭は燃えつきてしまいます。ウェールズ炭の場合、 明るい色(赤というより、うすい黄色、白っぽい黄色)で燃焼していたら、その時が燃焼のピークではないかと思っています。 ウェールズ炭は投炭してから活発に燃焼するまでタイムラグがありますので、 石炭が燃え尽きるよりもっと前に投炭しないと蒸気圧が下がります。ましてや、火床が薄いのであれば、 タイムリミットです。

  ・石炭の大きさが適切でない。
   OSはウェールズ炭のナッツ(大)、ビーンズ(中)、グレイン(小)の大中小の3種類のものを販売しています。OSのC21、 S6クラスではビーンズが適当で、5インチゲージのC56、8620クラスの大きな機関車でもナッツよりビーンズの方が使い易いと思います。 ナッツの使い方は難しいと思います。

  ・石炭がライブスチームには不向きである。
  石炭(豆炭を含む)なら何でも良い訳ではなく、カロリーが低くては蒸気圧が上がりません。 たとえ上がっても時間がかかれば、そのころにはボイラー水位は低下しています。ライブスチームメーカーが販売している石炭を使うのが、 無難だと思います。

  ・灰箱に灰がたまって、火室内に石炭燃焼に必要な充分な空気が供給されていない。

  ・火室内にクリンカーができ、石炭の燃焼を妨げている。
クリンカー
運転終了後、火室内から取り出した”クリンカー”です。

  ・煙管がすすや石炭で詰まっている。
  午前中走行し午後も走行する時は、昼休みに使い古して細くなったブラシでかまわないので、 1回でも煙管を通せば大きな石炭の詰まりが除去できます。これでも効果大です。

  ・煙突の付け根部分に灰が付着し煙突の口を狭めている。
  これは所属する倶楽部のベテランの方に教えていただいたことです。OSコッペルの煙突はねじ込んであり、 運転終了後、煙突を回して外し、煙突内側と、付け根部分(煙突の取り付け側)にこびり付いた灰を取り除きます。

  ・焚口戸が開いている。
  焚口戸を開けたまま走行すると火室に冷たい空気を火室内に吸い込み冷やされます。蒸気圧が上がり過ぎるときにわざと開けて対処するくらいです。 走行中に給炭した時は確実に焚口戸を閉めます。閉めたつもりが開いていることもありますので注意します(私の失敗事例です)

(H28.5.14追記)
  ・煙室戸が密着していない。
  煙室戸を閉めるハンドルのネジが緩んでキチッと閉まっていない。 そのため、煙室内が真空になるのを妨げ、外気が煙室に進入し、それゆえ、火室下部からの空気の吸入量が減少した。

  ・ブロアーノズルが、煙突の方向からズレている。
  運転終了後の煙室・煙管を掃除した時にブロアーノズルの銅管に誤って触れて、曲げてしまったのかもしれません。


2.蒸気の消費系の原因
 ・スチームアップが完了し、さー走行開始でテンダーもしくは機関車の次位に連結した乗用台車に乗って加減弁を開けたものの走りださず、 そのまま加減弁を開けていると蒸気圧が下がってしまいます。また、この時、ブロアーバルブを全閉していたらダメージが大きくなります。 走行するまでブロアーバルブは開けておきます。こうした時は足で地面をけって補助するか、あるいは乗らずに機関車だけで動かしてみると 負担が小さくてよいと思います。もし、動かなければ手で機関車を進行方向に押してやってもいいと思います。そして、 この時にドレンコック(シリンダ排水弁)を開けてシリンダを暖めておくとよいと思います。ドレンコックを開けるのは蒸気圧を下げる要因になりますので、 乗用台車に乗らずに機関車にとって負担の軽い状態において、シリンダから水の排出と、シリンダを暖めるのを時間をかけずに短時間で行いたいためです。 ようは、スタート時は機関車の火床の状態も万全ではありませんので、できるだけ負担を軽くするため、補助するとよいと思います。

 ・ドレンコックを長い時間開けていた。開けたまま走行していた。あるいは確実に閉まっていることに気付かず走行していた。

 ・シリンダから蒸気が漏れていた。
  グランドパッキンを押さえているシリンダカバーナットが緩んでいるのか、あるいはパッキンに問題があるのかもしれません。

 ・蒸気室からの蒸気漏れ
  3.5インチゲージのOSクラウスのキットを組み立て試運転した時、加減弁を開けたらシリンダ上部の蒸気室のカバーから蒸気が噴き出てきました。 蒸気室カバーのパッキンが不十分なのが原因でした。

 ・ボイラーへ急激に給水した。
  ボイラーの空焚き防止のため、水面計を監視し、OS製の場合は最低限、水面計に見えるよう水位を保持する必要がありますが、 水位を気にするあまり、急激に(短時間に大量に)給水するとか、あるいはボイラー圧力を無視して給水すると蒸気圧が低下します。 ”水位の保持”と”蒸気圧の保持”の相反するものの両方共を保持するには両者のバランスをとるよう、さじ加減が必要です。 給水すれば蒸気圧低下の恐れがあり、かといって給水しなければ空焚きしてしまいます。給水量の微妙な調整が必要です。 なお、こうなった時の対処方法は、18.”特効薬? スタミナ剤?” (H27.11.28掲載)を参照してください。


 私は最初に入手したOSクラウス(3.5インチゲージ)をろくろく走らせることができませんでした。 OS法隆寺のレイアウトではわずか半周しか走行できませんでした。今思えば、蒸気の発生系にも消費系にもたくさんの問題がありました。 でも悲しいかな当時はどうしてなのか、どうしたらいいのか、分かりませんでした。


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