ライブスチームの運転


6.運転のポイント  (H27.11.11掲載)

 ”ライブスチームはどうしたら上手に走らすことができるのか?”、 ”どうしたらボイラーの蒸気圧やボイラーの水を維持し、 長時間にわたって走行することができるのか?”

 その要素は、

  @機関車等の整備状態が良好であること
  A燃料(石炭など)
  B運転操作技術

 の3つと、更には ”安全であること” ではないかと思っています。これを式で表すと、次のとおりとなります。

  上手な運転(名機関士)とは= ”安全”  +   「機関車等の整備状態」×「燃料」×「運転操作技術」

  (経緯)まず最初、上手に運転するには、「機関車の整備状態」、「燃料」、「運転操作技術」の3つの要素が必要と考えました。
                     ↓
      次に、3つの要素は、どれ一つ欠けても走らないので、AND条件とし、× と表しました。
       よって、 上手な運転= 「機関車の整備状態」  × 「燃料」  ×  「運転操作技術」 となりました。
                     ↓
      これで、完成かと思ったのですが、”安全”の要素が無いのに気づき、加えることにしました。
       よって、 上手な運転=「機関車の整備状態」×「燃料」×「運転操作技術」 + ”安全”  となりました。
                     ↓
      でも、よく見ると、”安全”が最後にあるのはいかがなものか、やはり安全第一だと考え、
       上手な運転とは=  ”安全”  +   「機関車の整備状態」×「燃料」×「運転操作技術」 と、なりました。

    (H28.2.27追記)
      更に、機関車の整備の他に、連結する車両や線路・ポイントなどの整備も必要な要素だと気づき、 「機関車」に”等”を加えました。
       上手な運転とは= ”安全”  +   「機関車の整備状態」×「燃料」×「運転操作技術」 と、なった次第です。



(1)機関車等の整備状態
 ・機関車が機械的に故障しているならば修理が必要です。また、エマージェンシーポンプとも呼ばれるハンドポンプが動作しない (給水できない)場合は、火は入れられません。
 ・よく故障する箇所は、逆止・一方通行のために用いられるステンレスボールの固着です。軸動給水ポンプ、 ハンドポンプ、逆止弁、給油装置などに使われています。分解して固着を治すのがじょうとうですが、 走行による振動で回復することがあります。
  私は横着して、ハンドポンプは正常で軸動給水ポンプが不調な場合、ハンドポンプで給水し、 軸動給水ポンプの回復を待つことがあります。走行10分後に回復することも、1時間かかることも、 午前中は回復せず、午後の運転終了間際に回復したこともあり、いつ回復するかは不明で、 まるで我慢比べをやっているようなものです。1週間前には正常だったのに不調になることもあり、やっかいな事象です。
 ・蒸気圧の上がらない原因の一つに、煙管のつまりがあります。 前回の運転後にキチンと掃除がなされていないのかもしれません。 私は午前中走行し、午後も走行する場合、昼の休憩時間に有火状態でも煙管にブラシを 1回だけ通すことにしています。1回貫通させるだけでも効果大だと思っています。

(H28.2.27追記)
 ・機関車の他にも、連結する車両の整備も必要です。車輪・車軸などの点検、ブレーキが付いているならばちゃんと効くこと。 また、走行する線路の状態の点検も必要です。長年走行していると路盤が沈下して勾配ができたり、 カーブでは逆カントがついたりします。更にはポイントの動作も確認します。 リモートコントロールで切替える場合は確実に動作することを確認します。


(2)使用する石炭
 ・有煙炭(太平洋炭、マンデリ炭など)でも、無煙炭(ウェールズ炭など)でもどちらでもよいと思います。 有煙炭だと、煙が出て蒸気機関車らしいし、着火性・即効性が良いです。一方、煙い、煙管が詰まりやすい、 燃え尽きるのが早い、といった特徴があります。
  無煙炭はその逆で、煙がほとんど出ない、煙管が詰まりにくく、火持ちが良い。が、火がつきにくく、即効性がよくない。 一長一短であり、個人の好みです。
  なお、豆炭については快調に走らせている例を見たことや、自身が使用したことはありませんので分かりません。

太平洋炭
太平洋炭
20kg入りの袋で購入したものです。選別されていませんので、適当な大きさに割って使用します。 写真は割ったもので、形はまちまちです。


ウェールズ炭
ウェールズ炭
OSさまから購入した、ウェールズ炭です。選別してありますので、割る手間がかかりません。ビーンズの粒サイズは10〜20mm角で、 グレインの粒サイズは5〜10mm角です。写真は、ビーンズとグレインが混ざっており、 大きい方がビーンズで、小さい方がグレインです。


 ・私は着火後のスチームアップ時は太平洋炭を使用し、安全弁が噴いたらウェールズ炭に切り替えて、 走行の常時はウェールズ炭を使用し、圧力低下時は一時的に太平洋炭を使用し圧力を回復させる、といった使い方をしています。
 ・適度な大きさ。大きな機関車(5インチゲージの国鉄のSLクラス)であれば20から40ミリ程度でもかまわないようですが、 そうでなければ、それより小さい方が良いと思います。小さい石炭は大きな機関車に使えますが、 大きな石炭は小さい機関車には使えません。第一、焚口から入りませんし。
  OS弁慶号、OSコッペルでは、5〜15ミリ程度が適当(OSが販売しているウェールズ炭のビーンズもしくはグレイン)だと思います。 ビーンズは5インチの国鉄SLクラスでも十分使えます。ナッツは5インチの国鉄SLクラスでも使い難いと思います。
 ・石炭の粉はくべない。購入した石炭の袋の底部には粉状となった石炭がありますが、これをくべると、燃えが悪くなります。 火室内に空気を取り込むのを妨げるのかもしれません。
 ・一般に発熱量は単位重量当たり(1Kg)で表しており、単位時間当たりの発熱量とは異なります。 太平洋炭とウェールズ炭を比較すると、前者はウェールズ炭の方が高いが、後者は逆です。 太平洋炭が即効性が良いのは単位時間当たりの発熱量が高いからだと思います。

   単位重量当たりの発熱量: 太平洋炭(新特中) < ウェールズ炭(OS販売)
                      (6200Kcall/kg)      (7700Kcall/kg)

   単位時間当たりの発熱量: 太平洋炭(新特中) > ウェールズ炭(OS販売)


 ・太平洋炭とウェールズ炭はそれぞれが特徴がありますので、うまく使い分けていきたいものです。ざっと、こんな感じでしょうか。

   ・着火性の良さ           太平洋炭 > ウェールズ炭
   ・即効性のよさ           太平洋炭 > ウェールズ炭
   ・発熱量(単位重量当たり)    太平洋炭 < ウェールズ炭
   ・発熱量(単位時間当たり)    太平洋炭 > ウェールズ炭
   ・発煙量                太平洋炭 > ウェールズ炭
   ・燃焼後の灰の量の多さ     太平洋炭 > ウェールズ炭
   ・煙管のつまりにくさ        太平洋炭 < ウェールズ炭


 ・使い慣れて性質を理解している石炭を使うのが良いと思います。石炭は数千万年以上も前の自然界から現代の人類へのプレゼントと考え、 大事に使います。


(3)運転操作技術
 ○蒸気圧の低下や水位の低下は避けたいこと。そのため、その要因となる事項を取り除くことが肝要かと思います。
  ・ドレンコックは必要最低限の時間しか開けない。開けたらできるだけ短時間で閉める(長く開けない)
  ・力行中以外はブロアバルブを開け火勢を弱めない。停車中であろうと走行中であろうと常に通風が効いている状態にする。 走行中であっても下り坂で加減弁を絞った時はブロアバルブを少し開けてもよい。
  ・加減弁を開けて、動輪が数回転するまではブロアバルブを開けておく。 ブロアバルブを閉めてから加減弁を開けるのではありません。 OSクラウス、OS弁慶号などの小型の機関車は常時(走行中も)ブロアバルブを開けておいた方が良いくらいです。
  ・停車しようとする時は加減弁を閉める前にブロアバルブを開ける。 ブロアバルブは停車時に開けておく必要な分を停車する前に開けておけば、 停車位置の目標で止まれるよう、前方注意し加減弁やブレーキ操作に気を集中することができます。
  ・焚口戸は必要最低限の時間しか開けない。開けたら、さっと給炭し、できるだけ短時間で閉めます。長く開けておかない。 (国鉄C62などの大型蒸気機関車の一部には自動給炭装置が付けられましたが、 焚口戸を開けずに給炭できることは冷たい外気の火室内への侵入を防げて効率的であったのではないかと思われます)そのためには適当な大きさのショベルが好ましいです。 小さすぎるショベルでは何回も投炭することになり、時間がかかってしまいます。かといって、大きすぎては焚口から入りませんし。
  ・走行中、焚口戸が閉まっていることを時々確認するとよいです。閉めたつもりが、いつのまにか開いていることがあります。

 ○給炭のタイミング
  ・停車中に給炭するのが最も良いです(冷気の火室内への侵入が少ないし、火室内の石炭の燃焼状態を見ながら給炭できますので)
  ・力行中の給炭は避けたい(冷気が火室内へ勢いよく侵入するのを避けたい)。長距離のため走行中に給炭する必要があるならば、 できれば通風の弱い惰行中が良いです。
  ・給炭量は多くても少なくてもよくありません。火床が厚くても薄くてもよくなく、適度な厚さを維持します。その厚さは 「こうだ」といった知識は持っていませんが、複数ある煙管のうち、最も下にある煙管を塞がない高さが上限だと思われます。 その煙管の高さは運転中は見えませんので、焚口の最下点と比べてみると良いと思います。例えば、最も下にある煙管を塞がない高さが 焚口の最下点より5ミリ下であれば、その高さを上限と考えればよいと思います。
  ・火床は、厚目の方が蒸気に粘りがあって、圧力が下がりにくい傾向にありますが、厚すぎると、通風が悪くなるのか、 石炭分量に対する火室内の酸素量が少ないのか、活発に燃えず圧力が上がりません。

 ○給水のタイミング
  ・急激(短時間に大量)な給水は避けます。時間的にずらし少しずつ給水した方が圧力低下のダメージが少ないです。 これはボイラー容量の多少に関わらず、共通と思われる。(ボイラー容量に応じた給水能力が備わっているので、 機関車の大小に関わらず、時間的には同じに感じます)
  ・安全弁が噴きそうな時、多めに給水(軸動ポンプのフィードバックバルブを全閉し全量給水する。 それでも不足ならハンドポンプなどを併用して給水する)します。安全弁を噴かすのはもったいないです。なお、ボイラーに十分な水があるならば、 焚口戸をあけ火勢を弱めることとなります。が、しかし、それは石炭のくべ過ぎかと思います。
  ・水位は一般に最低でも水面計に見えているように給水します。それ以下の場合は、たとえ圧力が低下しても給水します。 圧力低下を恐れて給水しないのは危険です。空焚き厳禁。安全第一です。

 ○走行中の注意点
  ・安全第一とし、圧力計・水面計を常に監視し、軸動ポンプのフィードバックバルブを適宜調整する(全開、少し絞る、全閉など)と共に、 適宜給炭します。また、前方を注視し、前の列車に追突しないように、レール面に障害物が落ちていないかなど確認します。 運客時はお客様の動きにも注意します。カーブを高速で走行すると遠心力でお客様が台車から落下してしまいます。 安全速度(6Km/h以下)で走行します。


 ”物を燃やす。石炭を燃やすって、どういうことなのか? その神秘性を追求することが、 運転操作技術の向上につながるのではないか?”

  と思っています。


(”安全”については、「777. ”安全”について(その1)(R6.1.14掲載)」を参照してください)


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