私は、ゴッホの大作のひとつは、この『星月夜』と思います。サン・レミの精神病院に入院中に作製したものです。左下の黒い炎のように燃え上がっているのは、南フランス特有の糸杉です。ゴッホは、自分では観たままを描いているわけですから、その時の精神状態が、そのまま絵にあらわれます。糸杉が燃える炎のように、彼の目の前にあるのです。背景の月や星も、黄色い輪を伴っています。光輝くというのを、このような形であらわしてます。ただ、夜一時的に、このように見えることは、ありませんか?私は、見にくい時に、時々光が流れてこのように見えることがあります。ただ、調べた限りでは、この描写にいたるまで、結構苦労されたみたいです。
ただ、この絵に辛さと温もりを感じませんか?夜道を照らす月・星は、心のともし火ではないでしょうか?
この絵は、1889年の6月の制作で、縦73.7cm×横92.1cmで、キャンパスに描かれた、油絵です。今、ニューヨークの近代美術館にあります。昨年の年末にニューヨークに行った時、仮設のMOMAの美術館で観ました。私は、燃え上がるような、暗闇の流れの中での、星と月の明かりを期待していたのですが、彫刻等で作られたような作品で、思ったより、凄いという感じはありませんでした。
ゴッホは、生前にこの絵かわからないのですが、糸杉の絵を、同時代の批評家アルベール・オーリエに送ろうとしました。アルベール・オーリエは、ゴッホの絵の中に、「ひとつの思想、一つの理念がある」と最初の言った人です。それに、答えたかったために、ゴッホは絵を贈ろうとしたわけです。ゴッホの絵は、ある面では「叫び」の絵かもしれません。
星月夜 |
ゴッホは、狂気になることで、傑作を残したと、私は考えています。『感性を高める』それは、人間が限りなく神の領域に近づき、そのことによって、不可能が可能になります。その代わりに、何かを失うのかもしれません。
ゴッホの初期の絵には、輝きがあまりありません。でも、そこにもゴッホらしさは、あります。それが、開花したのが、アルル以降だったと思います。
(2003年8月27日作成)