ホーム>フェルメールの研究>フェルメール作品の将来>新しい発見がある可能性?
「フェルメール作品」に、今後新しい発見がある可能性は、100%だろう。これだけ、色々研究がされていても、絵は輝いて賞賛に値する。色んな人を魅了すれば、そこから色んな疑問が湧き上がり、また新たな発見があるであろう。
前ページで、盗難で思わない「副産物」があったことを述べた。2回の盗難があった「手紙を書く婦人と召使い」でのことです。
1)1回目の盗難後の修復作業によって
6箇所の傷の修復と古いニス層を取り除き、新しいニスを塗る作業をしていたアンドリュー・オコナーは、フェルメールが描いたあとに加筆されている部分があることに気づいた。バイト卿の許可を得て、昔の姿に再現しました。その結果でて来たのが、下写真の矢印2箇所の部位です。
これが、何かわかりますか?私も知識不足で、Catch eyeする時は、まったく気づきませんでした。これは、棒状の封蝋(右)と、赤い円は溶けた封蝋の一部だそうです(盗まれたフェルメール・第八章 女性アート・テロリスト「手紙を書く女と召使い」を盗む・162ページ)。
この発見にを見て、アーサー・ウィーロックは、「この床に落ちている手紙(封蝋の棒のすぐ上)は、女主人に送られた手紙で、内容が気に入らなかった女主人は、怒って一心不乱に手紙を書いている。」という新しい仮説を打ち立てました。従来の説は、アルバート・ブランケルトらの、落ちた手紙は、女主人が恋文の手本集に従って書いたが、気に入らなかったので丸めて捨てたものです。
ひとつの発見が、面白いことにつながりました。私は、前者の説を取りたいですが、「あいまいさ」がフェルメール作品の魅力なので、?でよいのでは、ないでしょうか?
2)2回目の盗難後の修復作業によって
発見としては、こちらの方が大きかったです。理由は、その発見が「手紙を書く婦人と召使い」に留まらなかったからです。ユンゲル・ウェイドムが、手紙を書いている女性の左目に、針でついたような小さな穴が空いていることを発見しました(⇒第九章盗まれたフェルメール・第九章 窃盗犯に悪運をもたらしたフェルメール・183ページ)。ウェイドムは、他のフェルメール十二点の作品にも、同じような針の穴があることを、つきとめて、フェルメールの遠近法の消失点が、そこにあたるという仮説をたてました。これが、透視図法です。
頭の悪い、私には、この透視図法の意味がよくわかりません。適当な写真がなかったので、自分で本を参考に描いてみました。私が思うには、結局一点からの角度(茶色の部分)が同じということではないか、と思いました。
これらのことは、盗難後の修復という作業が、引き出した新しい発見といえるでしょう。修復家の努力の結晶です。こういう努力がある限り、新しい発見は、続くと思います。