ホームフェルメールの研究フェルメール作品の将来作品の盗難は?
ホームお勧めベストイレブン今後の作品の盗難は?

今後の作品の盗難は?

 フェルメールの作品は盗難に遭いやすいことは、ご存知の方は多いと思います。その要因は、1)画家が有名であること、2)寡作であること、3)どの作品も真珠のように奇麗であること、そして、1番狙われる要因は、4)作品が小さいこと(参照フェルメール全作品大きさ比較)、などです。


 今まで、起こった事件を振り返ってみましょう。今回は、内容のほとんどを盗まれたフェルメールを参照にまとめました。作品名は、マウスポインタを画像に載せると出て来ます。クリックしますと、ホームページ内のコメントにリンクします。


 背景が黄色のものは無事作品が戻ったもので、灰色のものは、解決していないものです。

番 号 盗 難 日 画 像 場 所 犯人(職業) 目 的 結 果 一 言
1971年9月24日 恋文 パレ・デ・ボザール美術館 マリオ・ピエール・ロイマンス

(21歳・ベルギー人・ウェーター)
東パキスタンへの寄付 10月6日逮捕
館内に隠れており、絵を切り取り、窓から脱出

絵画は悲惨な状態だったが、修復チームの努力で、翌年9月28日に再展
1974年2月23日 ギターを弾く女 ケンウッド・ハウス 不明

(IRAシンパの犯行?)
テロリストのアイルランドへの輸送 犯人逮捕はないが、作品は5月6日に聖バーソロミュー教会の墓地から発見 ガラスを破って、入り、盗難

③の事件の結果を知り、要求を諦めた
1974年4月26日 手紙を書く婦人と召使い ラスボロー・ハウス ブリジット・ローズ・ダグデール一派

(33歳・IRA過激派)
テロリストの北アイルランドへの輸送

50万ポンドの買い戻し金
5月4日ダグデールの逮捕

作品発見

虚偽の助けを求め、中に進入

全部で19点の作品が盗まれたが、犯行声明には従わず、犯人を逮捕した
1986年5月21日 手紙を書く婦人と召使い ラスボロー・ハウス マーティン・カーヒル

(37歳・泥棒)
盗品を闇販売

買戻し金請求
1993年9月1日、ベルギーのアントワープ空港で、ほかの絵とともに、救出 警報装置誤報を偽装して、絵画を盗難

11点の絵画を盗んだが、買い手がみつからず、困惑
1990年3月18日 ガードナー美術館 警官を装った二人の男たち

正体は不明?
明らかにされず いまだ発見されず 警官を装った人物たちが、警備員をらち

全部で13点が盗まれた、事件解決に色々のことが試みられたが、解決せず。

恋文の犯行が、パレ・デ・ボザール美術館でおきたのは、作品が貸し出されていたためです。
IRA(アイルランド共和軍・カトリック系過激派組織)の略です。
ラスボロー・ハウスは、バイト卿の私邸で、沢山の美術品コレクションがあった。後に、アイルランド・ナショナル・ギャラリーに寄贈しました。
世紀の大泥棒マーティン・カーヒルは、絵を盗んだことで窮地に陥り、最終的にIRAに射殺されました。

 これらの結果を踏まえてわかることとして、下記があります。

 1)フェルメール作品のような有名な絵を盗んでも、人命にはかなわないということ
 2)盗めても、絵を闇で売ることはできないということ
 3)警備に問題があったということ



 1)について
 ②・③の絵画テロリストの要求は受け入れられませんでした。③の被害者のバイト卿の「絵を破壊されても、その用意は出来ている。」(盗まれたフェルメール・第八章 女性アート・テロリスト「手紙を書く女と召使い」を盗む・153ページ」の言葉は、賞賛に値すると思います。


 2)について
 世紀の大泥棒マーティン・カーヒル(彼は、映画『ザ・ジェネラル』のモデル)は、仲間に「ラスポロ・ハウスから絵を盗んだことを後悔している。」と、言っていたらしいです(⇒盗まれたフェルメール・第九章 窃盗犯に悪運をもたらしたフェルメール・185ページ)。フェルメールほどの絵になると、正規のルートでないと売れないのです。


 3)について
 ①・③・⑤に関しては、警備に問題があったように思われます。とくに⑤の被害総額が、2億ドル(⇒盗まれたフェルメール・第十章 暗礁に乗り上げたガードナー事件捜査・188ページ)と言われているのに、その場に居た警備員たちが、1週間の訓練を受けた20歳代の学生アルバイトの青年たちで、その時給が6ドル85セントだったというのは、寂しいです。また、同じようなことが、ボストン美術館でも起こりかけていて、その時は警備員が中に入れなかったそうです(⇒盗まれたフェルメール・第三章 至上最大の美術品泥棒-ガードナー美術館事件・54~56ページ)。

 
 確かに、警備が甘かったりしたら、今後も作品の盗難はありえるかもしれません。しかし、その結果は、世紀の大泥棒でも、不幸な死に至ったのです。ですから、「フェルメール作品」は、盗んでも良いことはありません。


 また、①の犯罪を犯した青年も、勘違いしていることがあります。確かに、人は生まれながらに持ってくるものが50%です。親は選べないわけですから・・・。しかし、残りの半分は、自分の努力です。東パキスタンへの寄付を考えるのでしたら、別に自分が出来ることをしなくては、なりません。幸い優秀な修復チームが、いたので「恋文」は甦りましたが、もし、いなかったら、取り返しがつかないところでした。作ることは難しいが、破壊は簡単なのです。フェルメールは苦労して、作品を描いてます。


 次は、これらの盗難が、もたらした思わない「副産物」について述べたいと思います。このページを終えるにあたり、読まれてた人には是非、盗まれたフェルメールを読んで頂きたい、一度読まれた人にも読み返して欲しい。素晴らしい本だと、私は思います。


(平成14年7月16日作成)


ホーム   戻る   戻る(お勧めベストイレブン)  次へ