Prologue

 雨が歌ってる。

 まだ眠いベッドの中で少女は思った。
 それほど激しい雨ではない。
 風が強くて窓ガラスを叩いているわけではない。
 水の匂いがした。

 雨が歌ってる。

 少女は歌声をなぞっていった。
 どこかで聴いたことのあるメロディ。
 なのに思い出せない。
 あれは誰の歌だったのだろう。
 誰の歌声だったのだろう。
 
 雨が歌ってる。

 少女の記憶がその歌声に届きそうな時、
 耳元で別のメロディが鳴り響いた。