皆様お久しぶりです。ブログは最低でも月一ということで浮上して参りました。そしてハロウィンなのでサイトの配色をそれっぽくいじってみました。うむ我ながら目に優しくない。明日には元に戻します。(※戻しました)
拍手やアンケートへのご回答、どうもありがとうございます(^-^) 皆様からいただく反応がとても励みになっております。現在の創作の状況はといいますと、以前ここでちょっと話した「The Only Exception」20話のカットされた部分、つまりぶっちゃけエロな番外編を書いています。我ながら筆がのろいので、あまり期待せずにお待ちいただければ(えーこんなに長くかかってこれだけ?的な思いをされる可能性が非常に高いです)
そして以前、夢で見たシーンを元にふくらませたお話を「続きを読む」に置いていきます。作品のページに持っていくにはもう少し練る必要があると思うのですが、ハロウィンにちょうどいい題材なので、とりあえずここを覗いてくださった皆様へのお菓子に……なればいいなあ。
美しい満月の夜。
俺は一人、家路を辿っていた。
街灯の少ない路地も、煌々と照る月明かりのおかげでいつもよりは明るい。
しかし、男とはいえ暗い夜道の一人歩きは気持ちのいいものでもない。さっさと帰ろう、と思っていた時ふと、何かの気配に気づいた。
さりげなく後ろを振り返る。
犬?
野良犬か? 今時……
最初はのんきにそう思った。しかし、気づいてしまった。
――でかい。
シベリアンハスキー……、いや、それよりもでかい。
こんな大きな犬を見たのは初めてだった。犬、なのか? いや、ひょっとして、これは。
狼。
月明かりで銀色に輝く毛皮、尖った耳。鋭い眼光。俺は狼を見たことはないが、それに間違いないと思わせる圧倒的な迫力が、その生き物の全身から発せられていた。
いや、日本には野生の狼なんていないはずだ。でも。
ひょっとして、動物園から逃げたのか。もしくは誰かのペットか。狼ってペットにしていいのか?
その狼には、首輪なんてついていない。もちろんリードもない。当然、御する者も。
つまり、自由。
太い前足が悠然と一歩、踏み出す。
――ぞっ、とした。
まずい。生まれてこの方、こんな危険信号は知らない。これは本能から来る恐怖だ。
大昔、まだ狩られるものだった頃は、人はしょっちゅうこんな気持ちを味わっていたのかもしれない。
動けない。
動いたら、次の瞬間には。
どこかで、クラクションが鳴った。
狼が一瞬気を取られる。
考える間もなく、足が逃げ出していた。しかし。
狼は、跳んだ、らしかった。
気がついたら地面に倒れ、圧し掛かられていた。転んだときに打ちつけたはずの痛みにも気づかない。恐怖で。
吊り上がった酷薄な眼。光る牙。背後に輝く満月。思考は完全に止まり、録画機械のように光景を受け取ることしかできない。
胸元にかかった牙が服を引き裂く。
喉元を舐める舌。
その暖かさに、走馬灯が回り始めた時。
月が、翳った。
喉笛に迫った牙が、止まる。
狼はうなり声を上げ始めた。様子がおかしい。
何かの威嚇かと思った。が、これは……苦しんで、いる?
狼は苦しみながら俺の上から退き、地面に転がってうなり声を上げ続けた。
そして俺は、信じられない光景を見た。
狼が、その形態を変えていく。輝く毛皮が、大きな爪のある前足が、ふっさりとした尻尾が消えて。
人間になった。素っ裸の。
……っていうかお前。
「武井?」
「俺……やっぱホモだったんだー!!」
「はあ?」
「渡辺先輩ごめんなさいほんとにごめんなさいもうどうしよううわ俺マッパだし」
武井は大学のサークルの後輩だ。大柄で、ちょっと西洋の血が入っているっぽい彫りの深い顔立ちをしている。しかし狼なんぞとはかけはなれた、よく言えば温厚、悪く言えばヘタレな性質で「見掛け倒し」と言われることの多い男だった。今も、素っ裸で背を丸めて座り込んでいる姿は正直とても情けない。
「……どういうこと?」
破られた服をどうにかするのも忘れ、思わず尋ねた俺に、武井は心底悲しそうな顔で口を開いた。
「……えっとね。信じてもらえるかどうかわかんないですけど、俺、狼男なんですね」
「はあ」
「で、いつもは満月の夜なんか絶対外出しないのに、ずっと明日だと思ってた佐々木教授のゼミのレポートの締め切りが今日だったって気がついて」
「……厳しいんだよな」
「電話したらまだ教授室にいるから持ってこいって言われて、急いで持ってったんだけど帰る頃にはもう月がすっかり昇ってて」
「うん」
「帽子にマスクにサングラスで不審者間違いなしの格好で頑張ってたのに、先輩見つけちゃって、テンション上がっちゃったらもう自分を抑えきれませんでした」
「……」
さて、いろいろとツッコミどころはあるが。
とりあえず、月がまた顔を出す前に光の届かないところに行こうか、武井君。