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もう5月も終わり&景気づけ

  • 2012/05/31(木) 13:35

気づけば5月も下旬どころか今日で最後じゃないですか奥さん。最低限書こうと決めている月一回の生存報告にやってきました。過ごしやすい季節になってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

更新のない中にもアンケートや拍手を送ってくださった方々には心から感謝です! とっても励みになっています(^-^) いただいたコメントには随時返信しておりますので、お心当たりの方は返信ページを覗いてみてくださいね。

さて、長々とお待たせしております「The Only Exception」のホワイトデー話。景気づけに冒頭部分を「続きを読む」に置いていきます。正式な更新時には多少言い回しなど変更しているかもしれませんが、内容は変わらない予定です。先に読んでも構わないという方はどうぞご覧ください!


続き

『ホワイトデー(仮)』


「昼食に行ってきます」
「あ、鳴神」
 パソコンのモニターに注いでいた視線を上げた村田は、部屋を出て行こうとする長身を呼び止めた。
「今年はホワイトデーどうするか決めた?」
 足を止めた有能な部下は、いつも通りの中身の読めない表情で答えた。
「ちょっと候補の店がありますので、そちらに頼むかどうか決めたらまた報告します」
「あ、そう、了解。行ってらっしゃい」
 ひらひらと手を振りながら、隙なく美しい後ろ姿が去っていくのを興味深く見送る。


 バレンタインデー当日までの鳴神の不調と突然の復調、翌日の代休、そして翌々日である今日の朝に研美本社の秘書室で起こったささやかな事件。この一連の出来事について、詮索好きな人々の手によって固まりつつある非公式見解はだいたい次のようなものであった。

・鳴神に新しく彼女ができた
・守口の不在による激務でデートの時間が取れず、彼女を怒らせてしまって落ち込んでいた
・バレンタインデーの日に彼女と仲直りでき、急遽翌日に代休を取った
・彼女は鳴神がアレルギーだと知らず、チョコレートを準備していた

 そのチョコレートが守口に渡ることになった理由については、「鳴神と近しい守口への牽制」という説がスタンダードだが、「鳴神を仕事漬けにさせたことへの復讐」という説も有力視されている。もちろん守口の事故は不可抗力であり、意図的に休んだわけではないけれども、普段の彼らの関係性を知っている人間であればあるほど、たまには意趣返しもやむなしだろうと笑うところだった。それに、笑顔で高級店のチョコレートをプレゼントするという行為自体には別にマイナス要素はない。相手が守口である場合にのみその目的を達成しうるという点から、実にスマートで秀逸な復讐法だと評価されていた。提案者が鳴神なのか彼女なのかという点については皆の意見が分かれるところである。

「うーん」
 ここに、その見解とは少しばかり意を異にしている者がいた。当事者たちの上司であり、復讐劇(笑)の舞台となった秘書室を束ねる室長・村田である。彼は鳴神を新人の頃から育て上げ、鳴神の性格を社内でいちばん理解している人間だ。
 鳴神に恋人ができたであろうことは村田も確信を持っており、チョコレートの出所についてもその恋人で間違いないとみている。村田の意見が皆と異なるのは、その恋人の人物像だ。
「女性なら、言ったと思うんだよねえ」
 彼の有能な部下はもともとあまり隙のない性格をしているのだが、大企業の社長秘書としてみっちり教育されてきた上、ストーカー騒ぎなどもあって、ますますその面が強化されている。先手先手を打って誤解や不利になる状況を避けることに長けたその鳴神が、件のチョコレートについて「女から」の贈り物だと言わなかった。あの場で伊藤に「逆チョコですか?」と問われ、それを否定したにもかかわらず。
 だが、それだけなら、仕事に関する話ではないからそこまで気を配っていなかったという可能性もある。しかし村田のもとには、だいぶ前になるがもう一つ情報が入っていた。鳴神がリリスに、プライベートで誰かと食事をしに来たというものだ。
 一応これは顧客の個人情報に関わる内容であるから、いくら鳴神が村田の部下で、リリスのオーナー・加々美が村田の友人だからといっても、一緒に飲みに行った先で加々美が軽々しく漏らしたわけではない。くっついてきたデュシャンが聞いてもいないのにべらべらしゃべっただけである。まあデュシャンはあまり日本語がうまくない上に好き勝手に話すばかりなので、わかったのはその誰かがアラタという名前だということくらいで、後は加々美がしぶしぶ、アラタとやらがデュシャンに憧れるチョコレート職人であり、デュシャンに会うために来訪したらしいと教えてくれた。その憧れの君は初めて口にした芋焼酎をうまいうまいとがぶ飲みしてへべれけになり、加々美におんぶされて帰っていったけれども。
 さて。チョコレートアレルギーの男とチョコレート職人という取り合わせだけでも興味深い話だったが、そのとき村田が思い出したのは、秋頃職場の近くにオープンしたとあるチョコレートショップのことだった。ビジュー・トウキョウという名のその店を会長がことのほか気に入っているという話は耳に入っていた。おそらく鳴神も買いに行かされたことがあるだろう。そして、ちょうど彼らがリリスを訪れたと思しき時期に、「贈答品を購入したお店の方」にナンパされる鳴神が目撃されている。
 さらには、今日鳴神が守口に持ってきたのも、そのビジューとやらのチョコレート。
「ふーん」

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