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進捗状況+α

  • 2012/07/07(土) 03:58

月一の生存報告をぶっちぎりながら七夕の日に登場です。ブログはホワイトデーの話が完成してからと思っていましたが無理っぽいため、進捗状況+αを。
ホワイトデーのお話は全2話の短いものですが、1話はできたけど2話が進んでいません。1話だけ更新して「猫の手」の二の舞(続きが一年後)になるのも嫌なので、できあがってからまとめて更新するようにします。お待ちくださっている方には本当に申し訳ないですが……頑張ります。

アンケートや拍手を送ってくださった皆様、どうもありがとうございます! なかなか思うように書けなくて落ち込んだりもしますが、そんな中こうして、完成した作品を読んでくださった方の思いを受け取ると、今作も頑張って完成させようという気持ちになります。いただいたコメントには随時返信しておりますので、お心当たりの方は返信ページを覗いてみてください。返信不要でメッセージ下さった方もありがとうございました(^-^)

さて、自分の引き出しの少なさを嘆きながらネタメモを眺めていたら、かなり昔に書いたリーマン物の小ネタを見つけたので「続きを読む」に置いていきます。当時のサイトで日記に載せていました。何年前だっけ? 懐かしい。

続き


高科(たかしな):商社営業、課長補佐。
石原(いしはら):高科の後輩、ヒラ営業。


 日曜日。昨夜から続くだるさの中で目を覚ました高科は、いやいやながら熱を測ってみた。37度9分。ため息。
「効かねー薬め……」
昨晩のみきってしまった薬の空箱を恨めしげに眺めると、ゴミ箱に放った。
 さて困った。薬もろくな食料もない。食欲は皆無だが、何か食べなければまずいことはわかっている。明日は絶対休めない会議もある。
「……あいつに頼むか」
電車で15分。いちばん近い場所に住んでいる知り合いを思い、別のため息をつく。
 その知り合い、石原は案の定、
「すぐ行きますから!」
と、今にも家のドアを飛び出してきそうな声で要請に応えた。
 携帯を放り出す。石原は入社以来、ずっと高科が面倒をみてきた後輩だ。人懐こい男で、高科をとても慕っている。だが最近、彼の視線に何か、先輩への憧憬といった感情以上の深みを感じる気がするのだ。しかし、石原がそのような話を口にしたことはない。自意識過剰だと思いつつも、石原の視線にぶつかるたび、むずがゆいような気分になる高科だった。
 複雑な思いを巡らしていたところ、携帯が震えた。着いたか。
「高科さーん……」
先ほどとはうって変わった、しょんぼりした声である。何ごとだ。
「あの、財布を忘れてしまいました」
「はあ?」
「定期でここまでは来れたんですけど……」
頭痛が増す。そうだ、こいつはこういう奴だった。接待の会食が終わった後に財布を忘れたことに気づき、取引先に立て替えさせたという前科もある。
「こっち来て俺の財布持ってけ。どうせ俺の買物だから」
そう言って、いったん家に戻るという後輩を押しとどめた。
 恐縮しながら財布を借りていった石原は、風邪薬とレトルトのおかゆの他、頼んでいないスポーツドリンクやヨーグルト、栄養剤なども買ってきた。
「とりあえずこれ飲んでください、薬と一緒でも大丈夫だそうですから」
差し出された小瓶には「病中病後の栄養補給に」とある。高科は決してうまいとは言えないその中身を一気に流し込んだ。
 気は利くんだけど、どっか抜けてるんだよな。
キッチンでおかゆを温める後ろ姿を眺めながら思う。しかし、憎めない男なのだ彼は。前述の食事代を立て替えてくれた取引先の部長は、その後すっかり石原を気に入り、今や名指しで仕事を回してくるほどなのだから。
 布団で少量の食事と薬をとった高科は、そのまま横になった。すぐにうとうととする。食器を下げに来た石原の、
「よかったら洗濯とかしますけど、いいですか?」
という台詞に生返事を返し、水音を聞きながら眠りに落ちた。
 ふと目を覚ますと、枕元にいた石原と目が合った。
「あっ、目、覚めたんですか?」
何やらあたふたする石原に、高科はぼんやりと聞いた。
「……何時?」
「5時です」
「そっか……」
身体はだいぶ楽になっていた。これなら明日は出社できそうだ。そう告げると、石原は喜んだ。
「でも、無理しないでくださいね。―――じゃ、俺、帰ります」
 その顔が寂しげに見えたのは気のせいだろうか。そして自分も今、寂しいと思いはしなかったか。
自身の思考に驚いた高科は慌てて気分を切り換え、彼に謝意を伝えるべく口を開いた。
「ありがとな」
立ち上がった石原の見せた照れたような笑みに、切り換えたはずの胸の奥からかすかな熱が湧くのを感じる高科だった。

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