北京珍道中
by かげやん

[目次] [前話へ]
2003年1月1日
(第5日目: 最後の買い物・帰国)


最終日5日目、午前7時30分起床。
今日は10時15分にロビー集合なので、それまでもう一度買い物をする予定。
8時に朝食。毎日同じメニューの朝食も今日で最後。おいしいライチヨーグルトも食べおさめ。
まるさんとシャンさんに京劇のお金があったことを報告。
シャンさんにぷぷっと笑われながら「かげやんさんて、ほんまにどんくさいなあ」と言われる。はい、ごもっともです。
しまさんが「今回の旅は珍道中やなあ」と言うと、すかさず「かげやんさんだけな」というシャンさんのつっこみが。
昨日のキットカットチョコのことを聞くと、まるさん達の部屋にはなかったらしい。
もしかして、あのメイドさんが置いてくれたんだろうか。

あとは荷物を運び出すだけという状態にして8時45分にホテルを出発し、王府井書店へと向かう。
中国語の辞書や二胡の楽譜を買うことになっていたが、私はやはり豆、豆。
豆が忘れられないので、もう一度あのスーパーへ。
というわけでまたみんな個人行動をすることにする。9時40分に王府井書店の1階でまちあわせ。あまり時間がないので急いで行く。

豆を求めてあのスーパーで最初にみつけたお菓子の量り売りのコーナーへ直行。
あるある。まずは味見をしてみないと。豆をひとつ口に入れると、あの胡同の家で食べた豆の味。ようやくあの豆と再会できた私は、袋にザザーっと豆を入れる。
入れること3袋(しまさんの分1袋)。ごめんなさい豆がなくなって入れ物の底が見えてきました。近くのお姉さんに量ってもらって値段をつけてもらう。何か言っているがわからないので、豆を指して「好吃!(おいしい)」と言っといた。お姉さん笑う。

急いでスーパーを出て、王府井書店近くのデパートへ行き、姪っ子のお土産用のパンダのぬいぐるみを買う。パンダの親子で80元(1200円)。ぼったくられてるなと思いつつ、時間がないのでそれで購入。
しかし、中国では値段てあってないようなもの。客との交渉で店員が値段を決めても別にいいのだろうか?こんな結構大きいデパートだし、しかも店員さん若いし。
そのへんの事情を教えてほしいものだ。

そして後は王府井書店で習字の筆入れをこれも土産用に購入。
文房具がいちばん上の階にあるのだが、ここのエスカレーターが折り返しになってない。上行きと下行きが隣あわせになっているが交差せずに同じ向きになっている。
だから1階から2階へあがるとまたぐるりと後ろへ戻って、3階へ。3階でもぐるりと戻って上がらなければいけない。
それでなくても時間がないのに、なんて非効率的なエスカレーターなのとぷんぷん。

無事に目的のものをすべて購入して待ち合わせ場所へ。
みんな辞書を買って、楽譜も買っていた。頼んどけばよかった。
それからホテルへ戻り、荷物を出し、精算をする。けっこう電話を使ったので電話代が高いかなと思っていたが、追加の電話代はたったの1元だった。

5日間過ごしたホテルを後にし、バスに乗り込み空港へ向かう。
新婚さんとも久しぶりにであう。でもこのカップル異様に荷物が少ない。
それぞれに自分の持ち歩きようのかばんとスーツケースが2人で1個。しかも私より小さい。行きは中身がスーツケースの半分くらいで、今はパンパンになっているそうな。
行きも帰りもパンパンで帰りは土産ものを入れるかばんがひとつ増えた私っていったい。
旅なれた人はやっぱり違うなあ。
今日のガイドさんはカクさんではなく男性。(名前忘れてしまった。)
あれこれと車窓の景色を説明してくれる。そういえばカクさんはあまり説明しなかったような。
途中で城壁のような大きな建物がポツンとあった。この城壁がずっと続いていた頃に北京を訪れたかったなと思う。(まだ生まれてないか・・・)

途中でバスはニューオータニに止まり、そこからの客をキャッチする。
ガイドさんがホテルのトイレに行っていいよというので、もちろん全員行く。
広い〜、きれ〜い、豪華〜、とみんなが口々に叫ぶ。
やっぱり高いホテルは違う。トイレは綺麗で鍵はこわれてないし、ティールームはあるし、ホテルの庭で太極拳できますという日本語の案内板はあるし。
はあ、何もかもがすごすぎる。でも、行きにこのホテルを見なくてよかった。
あまりにも違いすぎて悲し〜くなっていただろう。

再びバスに乗り込み、空港へ到着。
ガイドさんに空港税チケットをもらって別れる。空港内への案内は別のガイドさんに。
搭乗手続きをし、出国審査。まるさんとシャンさんは出国カードを書いてなかったので、ここで書いている。
ガイドさんとはここでお別れ。ハーフだかクオーターだったらしく、背も高くちょっぴり男前。最後に北京で男前を見ることができてよかった。

無事に出国もでき、搭乗時刻の12時50分まで間があるので免税店でお買い物。
12時半に搭乗ゲートの待合ロビーを集合場所にして各自ちらばる。
しかし、出国の方のフロアときたら入国とえらい違い。
免税店があるのがその理由だが、あのえんえんと続く薄暗い通路とえらい違い。
明るいしにぎやかだし中国の空港てどこも出国と入国でこんなに違うもんなんでしょうか?
私はまずは両替を。両替をするには両替証明書が必要。私は3日目に3万円分両替した証明書があったので、それと有り金の1200元を渡す。そしたら17,000円と残りは元になって返ってきたので驚き。
両替は手持ちの半額ではなく両替証明書の半額を両替してくれるものだとこの時にわかった。なるほど、両替は大金でしておくものだ。思わぬ臨時収入な気分。
それからまだお土産が買いきれてないので、免税店でプーアル茶や携帯ストラップなどを購入。免税店に入るのも買い物をするのも生まれて初めて。
元でも円でもドルでも買い物ができるなんてすごい。

そして買い物を終えて待ち合わせ場所へ行くと、しまさんがCDショップで二胡のCDを買っていた。それを見て衝動に駆られた私はすぐさまCDショップへ駆け込みCDを2枚購入。ここでも『瑶族舞曲』の入ってるCDはなくて、他に好きな『葡萄熟了』が入ってるCDと、二胡の有名な曲が12曲ずつ入ってる2枚組のCDを買った。
1枚2.8ドル。なんて安いのだ。

そろそろ時間も迫ってきて、みんなロビーに集合して免税店前などでバチバチ写真を撮る。
12時50分から搭乗が始まる。
飛行機は大阪直行、行きと同じANA。機内で迎えてくれるスチュワーデスさんは笑顔。
4日ぶりに日本のサービスを受けられる。席に着き二胡を足元に置こうとしていると、スチュワーデスさんが「後ろの座席に置かれますか?」と日本語で聞いてくれる。
席が結構あいてるらしく、しまさんと私の二胡をひとつの席に重ねて置いて、 シートベルトまでしてくれた。なんて親切なんだろう。
これがホスピタリティってものよね。でも、でも・・・。
こんなにサービスされるのが何故か変な感じ。
今まで、日本では客商売はサービスするのが常識と思っていたが。
その常識が全くあてはまらなかった北京のあらゆる店員の態度が懐かしく、かえって、笑顔やサービスを受けるということに怪しさを感じてしまう私がいる。

飛行機は渋滞もないみたいなので、予定時刻の13時20分離陸。
さ〜よ〜なら〜北京。別に感傷的にはなっていないが、何もかもが楽しく、そしてあまりにもどんくさい私を発見した北京。
次に来るときには絶対にもっと下調べをして計画をたてて来るのだ!
と、決意を新たにしたのだった。(二胡のことは・・・ええのん?)
機内のアナウンスは日本語、英語、中国語の順番。ステレオも日本のアーティスト番組や落語なんかをやっている。ああ、ここは日本だ、と思う。
機内はけっこう乾燥しているので、マスクをする。
ふと見るとしまさんもマスクをしている。

しばらくして機内食のサービス。メニューは、お蕎麦・マカロニサラダ・豚肉と三度豆のたいたん・サーモンにクリームソースがかかったの・チャーハン・瓜、というメニュー。
食べ始めると、みんな蕎麦がまずい、行きの機内食の蕎麦のほうがおいしかったと言い出す。新婚さんも言ってる。確かにパサパサでおいしくない。
しまさん曰く、行きは日本発なので日本の蕎麦、帰りは北京発なので中国の蕎麦。
だからおいしくないんやということらしい。でも全部たいらげた。

行きはみんなあれこれしゃべったりしていたが、帰りはさすがに寝不足と旅の疲れがでたのか、うとうとしたり音楽を聴いたり。
そうこうしているうちに日本上空を飛んでいるらしい。霧がかなり深くけっこうゆれている。大丈夫かいなと思いつつ、飛行機はゆっくり高度を下げてゆく。
定刻より15分早い16時40分到着。
入国手続きをし、荷物をうけとり税関へ。空港はカートがあるから楽だなあ。
外国製品の持ち出し届を取り出して手に持つ。
税関のお姉さんが、「それは何ですか?」と聞くので「二胡ですー。」と言ってみんなで通り過ぎる。それだけで誰も止められもしなかった。みんな口々に「ええのん?これで。」といいつつ、しかし誰もおいかけてもこないのでいいみたい。拍子抜け。
というわけで外国製品の持ち出し届けは今も私の手元に残っている。

空港からはるかで京都駅へ。
携帯の電源を入れると1月1日。友達からあけましておめでとうメールが入っている。例年のように年末から大そうじし、お正月の飾り付けをして、正月準備に忙しい街を見て、紅白を見て、という行事を全くしていなかったので、正月という気分が全くない。
一年の計は元旦にあり。今日は二胡を触ってないけど、なんとなく今年は二胡づけな一年になりそうだと思う。(その通りになっているけれども。)
1月25日に早速、演奏会があるんだもの。

京都に着き、他の3人はそれぞれ別々の電車に乗り換えるので別れる。
一週間後のレッスンでお会いしましょう。
京都は暖かかった。北京のあの寒さに比べると底冷えの京都なんて何でもない。
私は、京都駅から出て、ちょっと離れたところにある忘れ物センターへ。
出発日に落とした手袋がもしかしたらあるかもしれないので行ってみる。
忘れ物センターのおっちゃんに手袋の片方を見せて、28日にこれと同じものを落としたと伝えたら、見たことがあるというおっちゃんがいて、倉庫まで見にいってくれた。
そしたらなんと落とした手袋があったのだ。うう、感激。拾ってくれた人に感謝。
お礼を言って忘れ物センターを後にし、幸せ気分で帰ろうとしたが、やはり疲れてるので、タクシーに乗り込む。
車内が広いタクシーに、そして左側通行の道に、ああ日本に帰ってきたんだなあと改めて思う。

家に着くと注連縄に鏡餅、姪っ子にお土産とお年玉。ああ、正月、正月。
お節とお雑煮を食べて、食後には例の豆。
豆を食べながら北京での日々を思い出し、にんまりする。
本当に楽しかった5日間。
絶対、また行くのだ!!


あとがき


北京への旅から半年で、ようやくこの珍道中を仕上げることができました。
kanaさんからは昨年の10月頃に依頼があったにもかかわらず、遅筆の私は、kanaさんに会うたびに「まだできてませ〜ん」と言っておりました。
そのたびにkanaさんは催促もせず、結局、一度も催促されなくて、プレッシャーも与えられず、今さらながらkanaさんのやさしさに感激してます。
ごめんなさい、ありがとうございました。

しかし、この珍道中の最終チェックをしていたら、なんとよく歩いたことか。
旅行に行くと必ず太る私が、帰国後体重を計ってみても全く変わっておりませんでした。
寒くて寒くてしょうがなかったんですが、歩いても全然暖まらず、本当に刺すような寒さでした。風邪をひいていたというのもあったと思いますが。

風邪といえばSARS。北京での感染者、死者はようやくおちついてきたと新聞に載っていますが、半年前に自分たちが行って、そしておおいに楽しんだ土地で、あんな肺炎がすさまじく流行するとは夢にも思いませんでした。
老師はぴんぴんされていると聞いてほっとひと安心したのですが、ホテルのメイドさんや、輪タクのおじさんや、いろんな店の店員さんなど、そんなに親しくなったわけでもないのに、どうしているのか元気でいるのか気がかりです。
本当にいつ落ち着くのか全くわかりませんし、いつ行けるようになるのかもわかりません。
はやく、SARSが完全に落ち着くように、そしてみんな無事でありますようにと願っています。

また、私もkanaさんと同じく、今さらながら北京のガイドブックを丹念に見ております。ここは、こんなところにあったんやあ、とか、こんな歴史ある場所やったんかと、もっと調べていけばよかったとつくづく思ってます。
そして、今、北京が舞台の小説をガイドブックをみながら読んで楽しんでおります。
北京の地理もおぼろげながらわかるのでね。
それと、北京で買った品物、とくにセミハードケースですが、1月25日の発表会の時に、あわててチャックを閉めたらベリッと破れて、チャックの部分にそって中の赤い布が見えてしまって、ああ、やっぱり中国製だわとがっかりしました。
(もちろん、ボンドで貼って今も使ってます)
かわいい鞄は二胡のレッスンバッグとして冬の間中おおいに活用しました。
また、北京へ行くことがあれば、絶対に絶対に、計画をきちんとたてて、おいしいものを食べまくり、雑貨を買い、チャイナをつくり、観光をして・・・、したいことがいっぱい。

今回の私達の旅は本当に楽しく大満足で、どちらかというと遊び色のほうが強かったです。北京に行って二胡のレッスンを受けたら何かが変わる、音色が変わるという話を聞いていましたが、やはり楽しいだけのレッスンでは何かが変わるはずもなく、ましてや音色がかわるはずもありません。
中国の老師とのレッスンに対する考え方のギャップなどはあまり感じることもなく、レッスンも楽しかったという感想しかなかったので、今後の二胡における自分の方向性なども何も見いだすことができませんでした。
(レッスンを受ける心がまえが、まずできてなかった。)
その点では心残りのある旅になってしまいましたが、北京に行ったおかげで、個人レッスンを今も続けることができているのが、一番の収穫かもしれません。
今は、一年前の自分が、想像だにしなかったレベルの曲を練習しているので、この北京への旅が、私の二胡人生のひとつの転機となったと思っています。
来年は、今の自分が全然想像できないレベルの曲をもっともっと弾けているように、今後も二胡の練習に励みたいと思います。

最後に、このような機会を与えていただいたkanaさん、ありがとうございました。
何年経っても忘れることなく、取り出しては、にへらと笑うことができます。
遅筆のお詫びは、あなたの手足となって働きますので許してくだされ〜。(2003.6.6)

[目次] [前話へ]
[index]