北京珍道中
by かげやん

[目次] [前話へ] [次話へ]
2002年12月31日
(第4日目: 二胡レッスン・王府井で買い物・京劇鑑賞)


4日目、7時半起床。
葛根湯を飲んだおかげで風邪はちょっとましになってきたよう。
身体のしんどさが違う。でも、鼻はずるずる。今日は8時15分に朝食会場でまちあわせ。
いつもまるさん達を待たせているので、超特急で身支度をし朝食会場へ。
廊下を歩いていたら昨日のメイドさんがいたので、「ニイハオ」と挨拶すると、「ニイハオ」と返してくれた。カードキーの秘密を共有しているような笑顔で。
今日は私達のほうが先に待ってたので、まるさん達おどろく。

9時に老師とロビーで待ち合わせなので、朝食を食べて、みんなでロビーで待つ。
老師が二胡をかついてご登場。みんなで挨拶をして、しまさんは二胡をもらう。
と、老師が私に何か話しかけられる。「中国語をしゃべれるのは君かね?」
いやいや、シャンさんです。一晩たってもう忘れておられる。
シャンさんに老師がしゃべられて、どうやら「これからレッスンをしよう!」とおっしゃってるようだ。
老師、私達これから買い物があるんですが・・・。
とみんな思っていたが、断れないであろうということもわかっていたので、シャンさんに11時ごろまでならと言ってもらて、レッスンをしていただくことに。
シャンさんだいぶん中国語が上達している。

シャンさん達の部屋へ集まると、老師がぶあつい楽譜を取り出される。
今日はそれを弾くみたいだ。それは、昨日の『敖包相会』に似たフレーズの4小節の続きで、『敖包相会』と同じくF調の『牧民的快楽』というモンゴルの曲だった。
老師がまずは弾こうとされるが、ん?老師の二胡が見あたらない。
なんと、しまさんの二胡をかついできたので、ご自分の二胡を忘れてこられたのだ。
「ほーほっほっほ」と笑われる老師。まるさんの二胡を借りて老師が弾かれる。
軽いから弾きやすい、ということを言っておらるようだ。
ちなみにしまさんと私の二胡は、北京へ行く前に日本で購入した老師お見立ての二胡だったのに、それには見向きもされなかった。

この曲の解説はされなかったが、(いや、されたかもしれないが理解できていない)、弦を左手ではじいたり、数字譜の数字が、右手で小さい数字ののったお盆を持っているような装飾音(なんて言うのかわかりません)が多用されてて、聴いてて楽しい、モンゴルちっくな曲でした。老師はどうやらモンゴルの曲がお好きみたい。
ささ、次は弾いてみなさいって、F調を初見で弾けって、そんなご無体な〜、とみんな思いつつ、そしてシャンさんが、「私,初見はほんまにあかんねん〜」と言いつつ練習する。
やはりこの曲も私達用に簡単に書き直していただき、プラス表情をつけていかれる。
そして、老師と一緒に弾いたり、上下にわかれて弾いたりする。
下はちょっと早弾きの部分があり初見なのでなかなかうまく弾けない。
私は一人でレッスン受けたけど、レベルはみんなと同じなの〜という心の叫びもむなしく、老師が「君は下を弾きなさい。」と言われる。

みんな最初はぎこちなかったが、曲の表情をつけるのはさておき、楽譜通りになんとか弾けるようになると、老師が手をたたいて「好! 好听(ハオティン:良く聴こえるという意味だったような)!」と予想外のリアクション。
kanaさんの漂流記にはなかなか「好」と言ってもらえないというくだりがあったので、こんなに「好」を、なぜ連発されるのかが不思議。

なぜ、あんなに「好!」と言ってもらえたかを、後で4人で分析してみたが、私達はきっと孫のような感覚だったのではなかろうか。
一対一のレッスンではやはり緊張したりして、なごやかな雰囲気は出せないが、私たちは年齢が近いのもあって、4人一緒にいると和気あいあいとした雰囲気なので、お正月におじいちゃんの家に遊びにきた孫娘という雰囲気を醸し出していたような気がする。そう、ちょうどあやされて、いや〜、ようできたな〜、えらいな〜って持ち上げられていたような感じかもしれない。

あっという間に時間は過ぎて、レッスン終了に。それでも2時間ほどレッスンをしてもらっていた。昨晩のレッスン時に老師が「録音機は?」と言われててでも誰ももってこなかったので残念に思っていたが、しまさんのデジカメが動画と音声が撮れるものなので、それで老師の弾いている姿を撮影していた。曲はもちろん『牧民的快楽』。
撮れたのを老師に見せると、またまた「ほーほっほっほ」と笑って、「これはすごい機械だねえ」というリアクションをされる。

その後、老師と記念撮影をするが、写真を撮る前に老師はポケットから櫛を出して、髪の毛を整えられる。その姿がほほえましく、そしてちょっぴり感動してしまった。
写真を撮り終えると老師はご自分の家の住所を紙に書かれて写真を送ってくれと言われているよう。あと、『八月桂花〜』は好!と書かれる。ふふ。

そうして老師が帰り支度をされているときに、しまさんが、「デジカメまだバッテリーあるし、日本の先生宛てになんかしゃべってもらって」とシャンさんに言う。
シャンさんが老師に言うと、上着を着て、帽子までかぶられていた老師がまた上着を脱ぎ、帽子を脱ぎ、またまた櫛で髪の毛を整えてデジカメに向かってしゃべられている。
日本の先生は感激屋さんなのでこのビデオレター見られると、きっと泣いてしまわれるのではと思う。

そして、エレベーターまで老師を見送りに行く。老師はもういいよいいよと言っておられうようだが、4人で見送る。ほんの2日、それも数時間しか一緒にいなかったのに、別れがたく思わずうるうるしてしまった。まるさんも「お別れとか、あかんねん」と言いながらちょっぴり泣いている。
うまく表現できないけれど、レッスンで二胡の技術的なことだけを教わるのではなく、(教わったけどついていけなかった・・・)、何か人間として暖かなものをもらったようなそんな幸せな気持ちになった。
きっと老師にレッスンを受けた人はみんな北京におじいちゃんができたような感覚になるんだろうなあと思いつつ部屋に戻ると・・・。

ベッドの上に黒い物体を発見。
それはよく見ると、手編みの首巻き・・・。幅5センチくらいで首を一周するもので、端っこにホックがついていた。老師ったら、また忘れ物ですよ。
いやあ、でもこれうまいこと作ってあるわと感心しつつもう間に合わないだろうと思い、今晩京劇をパイさんと一緒に観にいくので、その時にパイさんに渡して老師に渡してもらおうということに。
感動的な別れの場面だったのもつかの間で、みんなであきれるやら笑うやら。

北京でのレッスンもこれで終了し、二胡を片付けていざ買い物へ。
ロビーでシャンさん達に会うと、「老師に首巻き渡せたで。」とシャンさんが言う。
私達が部屋を出た後にふと窓の外を見ると、老師がホテルの前に止めた自転車の傍で、何やらごそごそと探しものをしていたそうだ。(首巻きを探しているのね、老師)
あわててシャンさんが届けにいって、無事、首巻きは老師の首に。

さて、私達が最初に向かったのは、「王府井世都百貨」というデパート。
時間がなくてチャイナドレスを作れなかった時のために、シャンさんが先生から聞いていた、おしゃれなチャイナっぽい服を置いてある店がここにあるらしい。
早速その店に行こうとしたが、シャンさんが名前を思いだせなくて、上の階から下の階へと降りてゆく。婦人服のフロアでぶらぶら歩いていると、そこでおしゃれなチャイナっぽい服がある店を発見。
結構かわいい服も小物も売っているが、値札を見たらやけに高い。
マネキンが着ているチャイナ風のワンピースが3650元。
はっ?3650円ではなくて?日本円にしたら54,750円。いくら何でも高すぎる。
このデパートは、後で聞いたら普通の金持ちではなく、北京でも「超」金持ちが行くデパートだったらしい。
その店を、もちろん後にした私達は、バーゲン品のある手ごろな服屋さんを発見。
ここでしまさんとシャンさんが中国っぽい柄だけど、普段にもはけそうなスカートをあれこれと探して試着した末に購入。
発表会によさげな上着もあったが、日本円で4000円くらい。けっこう高いのだ。
後は、特に心ひかれるもなく、最後に地階へ。
この地階がまた地上階と比較にならないくらいお粗末でうす暗く、売れ残りのバーゲン商品みたいな服などが売っていた。また、端っこの方に喫茶店があったみたいだが、今はつぶれていて、かつては電飾で明るかったであろう看板が哀れ。
このデパートの地階への力の入れなさすぎときたら、首をかしげるばかりで、私達が体験した北京での不思議の三本の指のひとつに入る。

ちなみに他の不思議はというと・・・、
一つ、かっこいい男の人および男の子がいない。
二つ、手が汚くなる。
三つ、40代から60代くらいまでの男性たちの働く姿がほとんど見られない。
などなどで、
一つめは、可愛い・綺麗な女の人はけっこういる。そしてまたおしゃれな人が多い。
しかし、男の人はあまりあかぬけてなくて、カップルを見てもどうも男の人がいまいち冴えない。なんでだろう・・・。
二つめは、ふと何気なく見た自分の手が汚い。特に汚くなるうようなことなどしてないのに指先や爪が黒い。これはお金をさわるからということでわかったが、なぜ、お金が汚いかはのちほど・・・。
三つめは、ホテルのフロントでもそうだったが、どこの店に行っても若い人が圧倒的に多い。それも愛想ない若い人が。そしていわゆるおじさん達をあまり見かけなかったので、おじさんたちはどんな仕事をしているのだろうと不思議だった。

ま、それはさておき、私達はデパートを出て、王府井大街をまっすぐに南へと進み、だいぶん北京の道にも慣れてきたのか、赤信号でも平気で渡れるようになり、時々チャイナドレスの店に入って店内を物色しては、ふらふらと出て行き、次に向かったところは「新東方市場」というこれまた大きなショッピングセンター。
入ると真ん中が吹き抜けになっていて、まわりにいろんな店があった。
そこでまたチャイナドレスの店に何軒か入るが、やはり既成のものでは乙女の心をわしづかみにするようなものがなかなかなくて、あきらめモードに。

何軒かまわるうちに、チャイナ服ではなくて小物を見るようになってきて、刺繍入りのベージュのストールが気に入ってそれを見ていたら、店員が電卓を持って話しかけてくる。「手刺繍でいいものだけどこれだけにまけてあげる。」と言われているみたい。
値札は320元で電卓は300元。う〜ん、高い。
初めての値段交渉だ。お決まりの「太貴了〜。」と言って電卓を半額の150にしてみる。
店員は顔をしかめて大きく首をふり、ちょっと考えて220にしてきた。
おお、結構安くなってる。でも、目標の150にはなかなか到達しないので、もう一度150にしてみる。(このときに最初の値段より半分以下やし、あかんかなあ、怒るかなあとちょっとびくついていた。)
でも店員はまた激しく首をふり、電卓を220に直す。う〜ん、あんまり下がらないなあと思って、やりとりも面倒になったので、もういいやと店員に言って去ろうとしたら、あわてて電卓を180にする。そういえば去っていくそぶりを見せると安くしてもらえると、何かの本で読んだことがあったなあ。(私はそぶりではなく、本当に去ろうとした。)
北京で実地体験をしてちょっと嬉しくなった。
そうしたらまるさんが「いくらになった〜。」と来たので、説明をすると、「そんなもんちゃうの〜。」と言ったので、そうねえ、これでいいかと思って180元でストールを購入。

けっこういろんな店を見てまわり、お腹も減ってきたので昼ごはんを食べることに。
上の階にレストランや、テイクアウトのお店があったので、レストランには入らず、テイクアウトの店でごはんを買って、店の前にいっぱい並んでいるテーブルで食べた。
昼食のメニューは、水餃子・ビーフン・にんにくの芽と牛肉・麻婆茄子。
4人で25元(375円)。こんなテイクアウトの店でおいしいのかと少々疑っていたが、予想外に全部がおいしく、また量も多くて人がいっぱいなのがうなづける。
テイクアウトの店は実際に見て選べるので失敗がないのがよいところ。
でも、何が出てくるのかがいまいちわからないレストランもドキドキして楽しいけれど。

ごはんを食べた後にトイレへ。
トイレで並んでいると出てくる人の誰もがそのまま去ってゆく。
えっ?手を洗わないの?ずっと見ていたが手を洗う人は一人もいなかった・・・。
トイレに限らずあまり手を洗う習慣がないのだろうか。
だからお金が汚なくなってゆくのね。
そしてトイレの鍵はこわれている。中国のトイレは鍵がこわれているのが多いから困ってしまう。

さて、もう少し買い物をすませてから次に向かったのは、「王府井小吃街」。
ここは、いろんな屋台が集まっている通りで、通りを歩くと、すごく活気があって、呼び込みがすごい。「へい、らっしゃい!安いで安いで、姉ちゃん買っていってんか!」と中国語で言ってるような気がする。
ふと屋台に並んでいるのを見ると、サソリの串刺しがいっぱい・・・。
でも、この雰囲気、ウキウキしてきてすごく楽しい!
とりあえずは、さらっと通りを歩いてどんな屋台があるのかチェック。
食べ物や雑貨の屋台がほとんどで、雰囲気は楽しいけれどいまいち心ひかれるものがなく、しまさんがパシュミナのストールの山をかきわけているのを見ていたら、ちょうど向かいの店に鞄ばかりが置いてある。ウイグル地方の鞄のお店らしく、店のお姉さんも民族衣装らしきものをきている。なんだか日本人ぽい顔だ。
そこで私のハートをわしづかみにしたのは、生成りの厚めの布に色とりどりの刺繍がしてあり、取っ手が丸い籐製になっているかばん。
二胡の教本も入りそうな大きさなのでレッスンバッグにいいかなあと思い、値段交渉。

値段を聞くと「180元。」なんと日本円で2700円。えっ、高いやん。
日本でこの値段だったら迷いなく買うけども、こういう屋台でこの金額は高すぎる。
ていうかもう、金銭感覚が麻痺してきて(高いものばかり買い漁る麻痺ではなく) 金額で何十元というのが高いと思うようになってしまったので、百元単位の金額が出てきた日には、それこそ大金のような気がしてくる。

えらいぼったくられてるわと思って「高い、80元にして」と単語で言う。
お姉さん駄目駄目と首をふる。かばんの刺繍部分を指さして何かしゃべってる。
手刺繍だからまけられないというようなことを言っていたらしい。(シャンさん談)
でも、このまま引き下がるわけにはいかないので、シャンさんに登場してもらう。
しかし、このお姉さんシャンさんが登場してもまけてくれない。
ここまでまけないのも珍しいなあと思ってると、シャンさんが私の狙ってるかばんの色違いで小さめのを出してきて値段を聞くと、「100元」これまた高い。
これもまけてくれない・・・。一体このお姉さんの自信はどこからくるのだろう。
シャンさんも「(値段交渉に)のってくれな、おもしろないやん」と言う。

そしてしょうがないから、「2つで180元(大100元・小80元)にして」とシャンさんが長い間ねばると、お姉さんも根負けしたのか、それとも早くおっぱらいたいのか、ついに2つで180元にしてくれた。ああ、お気に入りのものがみつかって、そして安くで買えて嬉しい。その後もシャンさんはしまさんと一緒にパシュミナのストールで、抱き合わせ値下げ交渉を成功させていた。
さて、ここでの買い物も終わり、次にみんな買いたいものがバラバラで、時間もなくなってきたので、別行動をすることに。30分後に「王府井小吃街」の通りをはさんで向かい側のデパート前で待ち合わせ。
私は、やはり豆が忘れられず、お土産にいいわと思ってもう一度昨日のスーパーに行く。
今度は10袋を購入する。あとはお茶を買ったりして待ち合わせ場所に向かう。
京劇鑑賞のためにパイさんとの待ち合わせ時間までにもう少し余裕があったので、再び「王府井小吃街」へ行き、しまさん、シャンさん、私がパシュミナのストールを購入。
しまさん、ストールばかり買っている。シャンさん、またまけさせる。

そろそろ待ち合わせ時間が迫ってきたので、いったんホテルの部屋に戻り、お土産を置く。
シャンさんから「京劇のお金もってきてや〜。」と電話がある。
大丈夫、ずっとかばんに入れてたから。でも、念のために確認。
あら、あら、あら、あらっ?お金がない。
別にしてかばんのポケットに入れたと思ったんやけど・・・。
かばんをひっくり返して探すが見あたらない。
ふと思い出す。昨晩、お金を勘定していたときにやたら元があるなあと思ってたのは、もしかして京劇のお金だったの・・・?
ということは、早く元を使ってしまわなあかんと思って(元は日本では換金できない)使ったのはみんなのお金だったの・・・?がちょーん。
さーっと血の気がひき、ちびまるこちゃん状態になった私。心配そうに見ているしまさん。

今回の旅行は、とことんどんくさいなあとため息をしつつ、幸いまだ円を持ってきてたので、1人300元×4人分の1200元になるように18,000円ほど両替。
何はともあれよかった・・・。

気をとりなおして地下鉄で西単駅へ向かう。
6時半の待ち合わせ場所の地下鉄駅すぐ横の書店をまずは確認。
晩御飯を食べていないので、近くで食べることにするが、ぐるっとあたりを見回してみても食べ物屋がみつからない。
書店の近くの地下通路への階段にそれらしき看板があるので行ってみると、そこは「ハッピージム」というファーストフードの店だった。
もう6時前だったので仕方なくそこで食べることに。
うう、北京最後の晩餐がハンバーガーなんて悲しすぎる。
みんな15元か19元のチキンなどのバーガーセット(プラスポテトとジュース)で、味はまあまあ普通。でもファーストフードのくせに店員が少なく、かなり待たされた。

晩餐が終わり、店を出たら書店の地下のフロアになってたので、すぐに1階へ上がり、待ち合わせ場所でパイさんと無事に合流。
まずはトイレへ行く。時間がないのか早足のパイさんにみんな小走りでついていく。
トイレがある階はちょうど二胡の楽譜などがいろいろ置いてあって、うわー見たいなあと思いつつ、トイレへ直行。
そして書店を出て、京劇会場の人民劇場へはバスで行くということなので、バス停までてくてく歩く。
西単のあたりは、かなりひらけていて若者むけの服屋などが集まっている。ちょうどバーゲン時期みたいで、あちこちの店に、七折、八折という札がかかっている。これは定価の7割、8割という意味なのだろうか?

バス停に到着してバスを待つ。バスではよくスリが出るらしいからかばんをしっかりと自分の前に持って、あと、財布をバスの中では広げては危険らしいので、バス代1元(安い!)をポケットに入れて乗り込む。
中国のバスは(北京しか知らないが)中にお姉さんが乗っていて切符を売っている。
それを買って、おりる時は切符は別に見せなくてよかった。
これでは、買わずに降りることも可能ではなかろうか。でも、パイさんに聞くと切符売りのお姉さんは案外しっかりと見ている、かつ、すでに買った人にさえ「切符買ったか?」と何度も聞くことがあるらしいので、買わずに降りることは無理らしい。

さて、無事、目的地へついたのでバスを降りてくてく歩くとCD屋があった。
パイさんが「ちょっと見ていい?」といわれるので一緒に入る。
ここでも二胡のCDを見ていたが結局またどれを買っていいのか迷ってしまって買わず。
そして店を出て人民劇場へ到着。パイさんにチケットを買ってもらうが、どのチケットにする?と聞かれる。
チケットの値段は5種類くらいあって、私達は当然300元の席と思っていたが、パイさんが「私は一番安いので・・・。」とおっしゃる。パイさんには本当にお世話になっていて、今日も風邪で体調が悪いのに私達の案内役をしていただいている。だからここのチケット代は私達で持とうと決めていた。ということで160元(2400円)のチケットを5人分買うことにする。

劇場の中はまあまあ人が入っていて、私達の席はまん中より前だったので見やすくいい席だった。しかし、寒い!きっと空調設備がないのであろう。また風邪が悪化する。
よく見たらまわりの人はみんな上着を着て観ている。夏だったら猛烈に暑くて大変だろう。
今日の演目は『玉堂春』。京劇は生まれて初めて見るので、どんな内容か全くわからない。舞台の横に電光掲示板があり、そこにセリフが表示されるのでわかるかなと思ったが甘かった。表示される漢字は中国語の簡体字なのでさっぱりわからない。
わかったセリフは「三郎」のみ。でもこれが何を指すのか今もってわからない。
私は京劇=悲劇というイメージを持っていて、また、説明書きに死罪とか毒死などの言葉があり、ますます悲劇だわと思って観ていると、話がすすむにつれ客席から笑いがおきる。
よく観ると男の人たちの表情がなんとなく喜劇っぽい。
これは悲劇ではなく喜劇だったのか?と思いながらよくわからないまま9時40分に終了。

劇中の寒い中、眠気で何度か意識が飛びそうになりつつ凍死をなんとか免れた私達はパイさんに甘栗を買ってもらい帰りのバス停へと向かう。
ここでも乗りたいバスがなかなか来ず(他のバスは同じのが続いて来たりする)、一区間てくてく歩いた後、バスに乗って地下鉄の駅へ。駅でパイさんと別れる。

さて、本日は12月31日の大晦日。せっかく中国で年を越すのだからケーキでも買ってカウントダウンしようということに。
地下鉄を降りて、またいつものスーパーへ行ったが、もう閉まっている。ホテルへの道の途中になんかあるだろうと探すがそれらしき店は見当たらない。大晦日だし、遅くまであけてる店はあるはずだ!と思ったが案外あいていない。
やはり中国は春節がメインで、日本でいうところの年越しは全然気合が入ってない。
(飾り付けはまだクリスマスだし)
それでもあきらめられない私達は、個人商店ぽい店(ケーキなんてない)や昼に行った「王府井世都百貨」(2階にティールームがあった、でも閉まってた。)や近くのホテル(喫茶フロアなし)に行ったがやはりなく、最後の頼みの私達が泊まっているホテルの横のレストランに行ったがそこにもなかった・・・。

あきらめた私達は、ケーキなしでカウントダウンをすることに。
私達の部屋に集まることにして部屋に戻るとベッド横のテーブルにキットカットチョコが2つ。しまさんも知らなかったので、もしかして大晦日のホテル側のサービスかなと思ってちょっと感激。

2人がきてそれぞれに飲み物をつくって、あとはカウントダウンの瞬間を待つばかり。
まるさんはビール、あとの3人はしまさん持参の甘酒やしょうが湯など。
4人がベッドに座り、真ん中に時計を置いて5・4・3・2・1・かんぱ〜い!
異国での初めての感動的な年越し・・・?
独身女4人、しかも甘酒とかで乾杯してるし。
気を取り直して、あては何かないかいなと思ってたら、豆があったことを思い出した。

秘蔵の豆をとりだし中を見てみると、ん?あれれ。
ちがう、何かがちがう。大きさも形もちがう。
ひとつ食べてみると全然味がちが〜う!カレー味でかなり辛い。
がちょーん、15袋も買ったというのにどないしよう・・・。
袋の後ろを良く見ると、そら豆と書いてある。ピーナッツは花豆だよ!
5袋買った日にあけて確かめといたらよかった。
あとの3人にバカ笑いされたことは言うまでもない・・・。

カウントダウンの宴会(?)が終わり、お風呂&荷物の整理を。
いまいましい豆が14袋もあって、すごい邪魔。帰国後の楽しみがなくなってしまった。
カイロはいっぱい余るし、ティッシュもいっぱい余るし、やはり初海外は勝手がわからん。
持ち歩いているかばんの中も整理しているとマスクの空き袋が入っていて、ほかそうと思ってかばんから取り出すと、何かが入ってる。
中をあけて見たら、な、なんと元が入っている。
数えたら1200元。あらら、京劇のお金だ!
みんなから徴収したときに自分のお金と一緒になったらあかんと思ってわけていたのだ。
封筒がないからマスクの袋に入れて、そのまま気づかず、京劇に行く前にかばんの中を漁ったときにも盲点になっていたのだ。でも、よく、ほかさずにいたもんだ。

これで安心と思ったが、明日1日で1200元(1万8千円)を使い切らなければいけない。両替は中国でしかできないし、所持金の半分しか両替してもらえないと聞いたので、これは大変だ。どうしようと思いつつ、でも、京劇分のお金を本当に使ってしまったのかと腑におちてなかったので、すっきりした気分。
もう明日は帰国するので、床にまく水もそんなに気合いれてまかなくてもいいやと思って2・3杯にしておく。
でも、しまさんはぬらしたバスタオルを使用済みタオルを入れるケースの上にのせて、ベッドの横に置いていた。
2人ともぐったりして午前2時就寝。

[目次] [前話へ] [次話へ]
[index]