ホーム(オマージュ・ゴッホ)ゴッホの考えた「三幅対」とは?三幅対とは?

三幅対とは?

 『三幅対』とは、絵が三枚あれば良いのでしょうか?それは違います。英語でtriptych(トリプティーク)、三枚組みの祭壇画は、いかなるものか詳しく検証しましょう。マウスポインタを画像の上に乗せて頂くと、題名がでます。


 ゴッホも観たであろう、そして日本でもフランダースの犬のネオが理想の絵とした「十字架昇架」こそが、まさしくトリプティークの祭壇画です。この絵は、アントワープの聖母大聖堂にあります。私は、昨年(2002年)に観て来ました。リューペンス(ルーペンス)が、1609〜1610年にかけて描いたものとされています。中央のパネルは、460×360cmで、9人の死刑執行人助手が、イエス・キリストが掛っている十字架を引っ張りあげています。その側面に側面パネルとして460×150cmの絵が二枚あります。向かって左側は、「ヨハネ、マリア、悲しむ女達と子供達」で、右側は「十字架昇架を命じるローマの司令官」です。左右の絵は、全くの別物です。

十字架昇架
No.1




 この大聖堂には、さらに、ルーペンスの「十字架降下」(1611〜1614年)があります。これも、トリプティークの祭壇画です。中央のパネルは、421×311cmで、キリストの身体を十字架から下ろしています。その側面に側面パネルとして421×153cmの絵が二枚あります。向かって左側は、マリアの「エリザベイトへの訪問」が、右側は幼子のキリストを描いた「キリストの奉献」です。これも、左右は別ものです。

十字架降下
No.2




 そして、三つ目として、これもルーペンスの「キリストの復活」(1611〜1612年)があります。これも、トリプティークの祭壇画です。中央のパネルは、138×98cmで、洞穴から出てくるキリストが、光輝く状態で描かれています。その側面に側面パネルとして136×40cmの絵が二枚あります。向かって左側は、「洗礼者ヨハネ」が、右側は「聖マルティナ」です。これも、左右は別ものです。

キリストの復活
No.3




 この三つのトリプティークと、「聖母被昇天」をあわせて、聖母大聖堂の四つのルーペンスの傑作と言われています。

聖母被昇天




 ゴッホは、1885年11月〜1886年3月まで、アントワープで過ごしています。河や城を描いたスケッチも残っています。ルーペンスに惹かれて、と書かれています(⇒ゴッホの参考書(ゴッホ巡礼)・28ページ)。ゴッホの頭の中には、このルーペンスの絵があったと思います。

 私は、昨年の夏買ったアントワープ聖母大聖堂という本を読んでいます。他にもトリプティークの祭壇画があります。フランス・フランケンの「律法学者のもとのキリスト」(1587年)、ヤコブ・ドゥ・バッケルの「最後の審判」(中央パネル1580年頃・側面パネル1591年)などで、左右の絵は同じものはありません。本に掲載されている、六つ(一つは作者不明で「キリストの磔刑」で、1593年より少し前とされています)のトリプティークは、全て左右別物の祭壇画でした(No.1〜6)。左右同じものは、一つもありませんでした。それぞれの絵が別々で、なおかつ三つ集まると意味をなす、それがトリプティークです。

「アントワープ聖母大聖堂」の表紙


律法学者のもとのキリスト 最後の審判 キリストの磔刑
No.4 No.5 No.6



 美果さんがいう「両脇が左右対称をなすものやら、いろいろなパターンが実際には存在します。」は、ゴッホの頭にはなかったと思います。それに、私はプラド美術館の本や、色々の本を調べましたが、やっぱり、左右同じものは見つかりませんでした。確率のことを考えても、左右は別物が来るのが、はるかに妥当と思います。

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