ホームコメントしなかったフェルメール作品『信仰』の寓意

『信仰』の寓意

 『信仰』の寓意の色々の配置は、「絵画芸術」のものと大変似通っています。そのため、「絵画芸術」を観た人からフェルメールが依頼されて描いたのではないかといわれています。制作年から、「絵画芸術」の数年あとに描かれた作品みたいです。残念なのは、この時期にはフェルメールは停滞期に入っており、あらゆる面で、この絵は「絵画芸術」に劣ります。


 この作品は、道徳的なテーマを描いたもの、教訓画=「寓意画」です。「絵画芸術」では、ほのめかすようにされていたモチーフが、この絵では、背景にキリストの絵が描かれていることにより、明らかにわかります。この画中画は、ヤコブ・ヨルダーンスの『キリストの磔刑』の簡略化されたものです。フェルメールが亡くなった後の財産目録に「十字架上のキリストを表現した大きな絵」(1676年)とありますので、フェルメールの家には、原画か版画があったものとされています。


 モデルの娘(蝋人形みたい)は、右手を左胸にあてて、目は左斜め上をみつめ、右足は地球儀の上に置かれています。リーパの「イコノギア」から借用されて表現とされています。「絵画芸術」の絵の中の娘には、不自然ながらも、魅力を感じましたが、この娘には、ほとんどそれを感じられません。



マウスポインタを絵の上に乗せてみてください。

「絵画芸術」が出ます。


 マウスポインタを乗せていただいたら、よくわかると思いますが、左のタビスリーのカーテン、梁(はり)のある天井、市松模様の大理石の床など、「絵画芸術」と大変似通っています。ただ、床には落ちたかじられたリンゴ、血を吐いて死んだ?蛇と、気持ち悪いです。


 絵画芸術からは、『暖かさ』を感じられるのに対して、この絵からは、『寒気・厳しさ』を感じられます。


 この作品は、ニューヨークのメトロポリタン美術館にあります。12月には、ゆっくり観て来たいと思います。原画を観れば、新しい発見があるかもしれません。


(2002年10月29日作成)


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