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  5. 交響曲第9番録音紹介

ベートーヴェンの「第9」録音のご紹介


 こういう企画は雑誌でありがちですが、結局のところ、名盤紹介で終わってしまいますので、何かいいネタないかなと思いましたが、特に思い浮かびません。

★「第9」の録音は非常に多い

 いっぱい持っているように見えますが、重複しているものもありますし、これでも、全「第9」録音の4割以下しかない、と申し上げておきます。ですから「自慢する」には、まだ足りないんですね。
 また、私は基本的に演奏の質をうんぬんするような人でないので、大した寸評にはなっていません。「第9」のような曲は、当然のこと、個々の楽器の音色や部分的な演奏の質ではなく、「総体」として出来がいいか、ということが価値判断の基準であると思っています。すると、ここのあるほとんどのものは、ほんとに良質、と言ってよいでしょう。

★「第9」は録音が難しい

 第9は、合唱部分で録音の破綻(録音レベルオーバーによるノイズ)が聞こえてしまう場合が多いので、注意します。デジタル録音初期は、フォルティッシモで音がつぶれてしまうものがありましたし、ステレオ初期でも、録音機材の設定ミスで同様のものがあります。たとえば、ケーゲル指揮のものは見事に合唱部分で録音のレベルオーバーがありましたので、さっさと中古屋に売ってしまったのです。
 また、こういう曲は、ある程度のレベル以上のステレオでお聴きになることをお勧めします。もちろん、初心者というレベルならある程度の装置でいいのでしょうが、上級者ともなると、いろいろCDを集めることでしょう。すると、それらの大切なコレクションを満足いくまでに聴き込もうと思ったら、ある程度、低音が充実していたり、高音域も伸びた装置である必要があるでしょう。そうでなければ、曲の真の姿を楽しむには、足りないと思うのです。
 いくらの装置なら、とは、とても言えませんので、ここでは、そこそこの装置と言うにとどめておきましょう。オーケストラのコントラバスやファゴットが明瞭に聞こえたり、合唱が破綻なく聞こえたり、バイオリンのつややかな音色が壊されないで聞こえるためには、それなりの装置が必要なのです。

★録音紹介 下線付きは、おすすめです。
 表記は順に、
 演奏者、録音年、発売会社国籍、録音形態(M:モノラル,S:ステレオ,D:デジタル)、特記(SP:SPから復刻,L:ライヴ,空白:スタジオ録音)、媒体(LP,CD,LD)、その他
です。

1 ワインガルトナー、VPO他       1935    日MSPLP 東芝EMI
2 ワインガルトナー、VPO他       1935    日MSPLP アルティスコ
3 ワインガルトナー、VPO他       1935    英MSPCD
          持っているとよい、まともに聴ける世界最初の「第9」。
4 フルトヴェングラー、BPO他      1942    日MLLP
5 フルトヴェングラー、ストックホルムPO他 1943    日MLLP
6 シェルヘン他              194?    加MSPLP
          このあたりの3枚は聴き込んでいないです。
7 ワルター、NYPO他          1949-53   日M LP
          初めて聴いたLPで、ちょっと懐かしい。冒頭が粗削りなのもよい。
          ここから下ならば、ノイズが減ってきて聴きやすくなります。
8 ブッシュ、デンマーク放送交響楽団他   1950.9. 9  独M CD
9 アーベントロート、ライプツィヒ放送交響楽団他     1951.6.29  日M LP
10 フルトヴェングラー、バイロイト祝祭O他 1951.7.29  日MLCD
11 フルトヴェングラー、バイロイト祝祭O他 1951.7.29  日MLCD ブライトクランクステレオ
12 フルトヴェングラー、バイロイト祝祭O他 1951.7.29  日MLLP 足音入り

          言わずと知れたものであるが、ブライトクランク版がなかなかいい。
13 トスカニーニ、NBCSO他       1952    日M CD
14 トスカニーニ、NBCSO他       1952    日M LP
          早めで、鋭い「第9」で、やはり必須アイテム。
15 フルトヴェングラー、VPO他      1953.5.31  伊MLCD
16 クレンペラー、PO他          1957    日S LP
17 クリュイタンス、BPO他        1957    日S CD
          このあたりの3枚は聴き込んでいないです。
18 フリッチャイ、BPO他         1958    独S LP
          ベルリンPOの特性を生かして、重厚に仕上げています。LPですが合唱部分でも破綻なく、たっぷりと鳴らしています。おすすめの1枚です。
19 コンヴィチュニー、ライプツィヒ・ゲバントハウスO他 1959    独S CD
20 コンヴィチュニー、ライプツィヒ・ゲバントハウスO他 1959    日S LP
21 コンヴィチュニー、ライプツィヒ・ゲバントハウスO他  1959    蘭S LP

          正統派です。普通の演奏。しかし、若干テンポ・ルパートぎみです。控えめですから、気にはならないでしょう。
22 ミュンシュ、ボストンSO        196?    日S LP
23 モントゥー、LSO           1962    米S CD
24 モントゥー、LSO           1962    米S CD 20bit復刻
          これら2種は、いい演奏のはずですが、聴き込んでません。たしか、モントゥーの方は合唱部分で録音がレベルオーバーしている記憶が。
25 カラヤン、BPO他           1961,2   独S LP
26 カラヤン、BPO他           1961,2   独S CD OIBP処理
27 カラヤン、BPO他           1961,2   独S CD DG第二回全集,OIBP処理
          年代的立場的に、この頃のカラヤンが、結構いいと思う。
28 セル、クリーブランドO他        1961    日S CD
          皆がほめるから買っただけです。
29 レイボヴィッツ、ロイヤルPO他     1961    米S CD チェスキー高品質
          音がいいから買っただけです。
30 ライナー、シカゴSO他         1961    日S CD
          トスカニーニに似ているね。
31 ベーム、VPO他            1963.11.7  日SLCD
          日本公演のライブです。
32 シェルヘン、ルガノ放送O他       1965.4.5  日SLCD
          私はこーゆーのは結構好きだな。速度は早めの「熱血第9」。
33 カイベルト、NHKSO他        1965.12.15 日SLCD
34 イッセルシュテット、VPO他      1965    日S LP スーパー・アナログ
          低音充実のスーパーアナログディスクならではの、ウィーン・フィルの音。じつに豊かに鳴ってくれます。CDも、良いよ。
35 ミュンシュ、ボストンSO他       196?    日S LP
36 オーマンディ、フィラデルフィアO他   196?    日S LP
          録音のせいもあるが、明るめで少々はずれの「第9」。
37 岩城宏之、NHKSO他         1968    日S CD
          安かったから買っただけです。
38 ベーム、VPO他            1970    日S CD
39 ベーム、VPO他            1970    独S LP
40 ベーム、VPO他            1970    独S LP DG第一回全集

          かなりいい1枚です。
41 ショルティ、シカゴSO他        1972    日S LP
          発売当時は「楽譜通りの演奏」と、結構話題になったんです。
42 コンティグリア兄弟     (リスト編,2pf,初録音)1972    日S LP
          ただ演奏してみただけ、と言える一枚ですが、珍品です。
43 ケンペ、ミュンヘンPO他         1973    日S LP
          それほどでもない一枚。
44 クーベリック、バイエルン放送SO他   1976    独S LP
45 カラヤン、BPO他           197?    独S CD
          意外とよい「第9」です。
46 バーンスタイン、VPO他        1979    日SLCD
47 バーンスタイン、VPO他        1979    独SLLP
48 バーンスタイン、VPO他        1979    日SLCD 音楽之友社全集

          いい演奏なんですが、私にはベームの遅い「第9」に隠れている感があります。
49 ハイティンク、アムステルダム・コンセルトヘボウO他  1980    蘭DLCD
          この録音より前のハイティンクはへたくそだったのに、これはかなりいける。この録音後、彼は円熟していくのでした。
50 ベーム、VPO他            1980    独D CD
51 ベーム、VPO他            1980    独D CD 再発売
          遅めの演奏ですが、大好きな1枚。
52 マズア、ライプツィヒ・ゲバントハウスO他 1981.10.8  独SLCD
          正統派のようで正統派でないところもある。ただ正統派を求めるなら、1960年代の録音でいいものがいっぱいあります。
53 ザンテルリンク、フィルハーモニアO   1981    英D CD
54 カツァリス     (リスト編,pf,初録音) 1983    独D CD
          驚嘆。しかもテクニックに陥らないのはさすが。
55 カラヤン、BPO他           1983    独D CD
          デジタル録音初期なので音がすっきりしないのがキズ。
56 アバド、VPO他            1986    独DLCD
          まだ若造である。
57 ハイティンク、アムステルダム・コンセルトヘボウO他  1987    蘭D CD
          熱気という点で、前の録音の方が面白い。
58 ノーリントン、ロンドン・クラシカルプレイヤーズ他 (古楽器)  1987    英D CD
59 ハノーヴァーバンド他     (古楽器)  1988    英D CD
60 ホグウッド、ACO他     (古楽器)  1989    英D CD
          これら3つは、演奏者に重複が避けられない古楽器演奏。もちろん当時の演奏がこんなふうであるはずがない。指揮者のコントロールが弱いということで、ハノーヴァーバンド盤が一番当時に近いだろうと思う。
61 ドゥヴィエル、スラヴォニカPO他          198?    伊D CD
          イタリア新婚旅行の記念品です。もっといい録音を買えばよかったのですが、あらかた買っていたので、これくらいしか無くて。
62 バーンスタイン、バイエルンRSO他   1989.12.25 独DLCD ドイツ統一記念
63 バーンスタイン、バイエルンRSO他   1989.12.25 日DLLD ドイツ統一記念
          これは、「20世紀の記念品」です。
64 山田一雄、新星日本交響楽団他      1990.2.11  日DLCD
          ただ買ってみただけ。
65 アツモン、名古屋PO他         1990.12.23-25日DLCD
          私の拍手も入っているかもしれない。
66 サミュエル、シンシナティPO他(マーラー編)1991    米D CD 珍
          珍しいから買った。
67 マッケラス、ロイヤル・リヴァプールPO他(古楽器)1991    英D CD 
          古楽器で、バイオリンが左右両翼展開は、これのみ。
68 ドラホシュ、ニコラウス・エステルハージ・シンフォニアO他 1996     D CD
69 小川典子(Pf)、バッハ・コレギウム・ジャパン(合唱)他(ワーグナー編) 1998  D CD
70 ジンマン、チューリッヒ・トーンハレO 1998 D CD
          買ってはいけない1枚。
71 飯守泰次郎、東京シティ・フィルハーモニックO(ベーレンライター原典版) 2001 D CD

☆何を持とうか
 ということで、ここにいらっしゃる皆さんが誰の録音をお持ちなのかはともかく、(上級編なのですから)皆さんを「上級者」ということにしますと、最低限、たとえば以下のものぐらいは持っていてほしいものです。
 フルトヴェングラー、トスカニーニ、ベーム、カラヤン、バーンスタイン各1種
 モノラル時代の巨匠演奏を上記以外に1種、ライブ録音1種、古楽器演奏1種、カツァリス1枚。

 これで9枚ですね。これらさえ持てばOK、あなたは立派なマニアです。演奏の好き嫌いで、持っている持っていない、ではマニアではありません。
☆買ったら大事なコレクション
 私の場合では、金の都合で持っていないものもあります。「第9」だけ買っているわけではないので、仕方ありません。私もかつて、ベームのモノラル盤とバイロイト盤、ケーゲル盤など数種類を「録音が悪いから、ま、いらないか」と思って中古屋に売った経験があります。今になって感じているのは、「もったいない」の一言であります。
 レコードは買うことはあっても売ってはいけない、そう思う今日このごろです。



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