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  5. 交響曲第9番編曲

ベートーヴェンの「第9」のピアノ編曲


有名な編曲は3種類

 あちこちの資料をかき集めるとわかるが、「第9」に限らず、ベートーヴェン存命当時には、交響曲などの編成の大きな曲は、よく数人の室内楽やピアノ用に編曲されたもののようである。
 しかしさすがに、「第9」はピアノ版しか無かったようだ。合唱の練習用でピアノ編曲版(第4楽章のみ?)もあるようだが、今、実際になんとか聴くことができる「第9」の全楽章編曲版は3種類ある。体験順に並べてみたい。

(1)リスト編曲ピアノ二重奏版
 連弾ではなく2台版である。この録音には、今は売っていないコンティグリア兄弟の演奏の他に、2004年頃にどこかから発売されたと思う。
 手元のコンティグリア兄弟のLP(PHILIPS、1979年再発売)には1972年録音とあるので、たぶん1973年頃に日本で発売となったはずだ。じつは、その最初のLP盤(コニサー・ソサエティ)を持っていたのだが、売り払ってしまった。当時は2枚組で、3面までが「第9」、あと1面は何だったか忘れた。この録音では、第4楽章の、いわゆる歓喜の主題が管弦楽で鳴ってバリトン・ソロに至る部分で、1小節欠けているのである。その「不足」が、なんとも気になってしかたがない。これが、楽譜そのものに起因したものか、演奏(録音)のミスかは、不明だ。まさか編集段階で欠落するとは、絶対にありえないとは言えないが、容易には考えにくい。楽譜を持っていないので、そこが不明だ。再発売盤は1枚になって、第3楽章の途中で盤を裏返すことになる。
 演奏は、まあ、こんなものか、という程度。21世紀になって最新録音がどこかから発売されたはずなので、それを探すとよい。ドイツ・ハルモニアムンディだったような気がする。国内盤では無い。もちろん私には、それの第4楽章に本当に1小節欠落があるかどうかは、不明だ。無かったらよいなと思う。

(2)リスト編曲ピアノ独奏版
 録音には有名なシプリアン・カツァリス盤があり、他には、シャンドス、ナクソスにあったと思う。
 カツァリスは、本来のリスト編曲版に足りない音を加えての、まさにこれこそ超絶技巧なのであって、これさえ聴けば他は聴く必要なし、と言わしめるほどのものだ。とにかく楽譜を買って聴くことをお勧めしたい。楽譜は、春秋社から2巻に分けて出版され、まだ入手可能と思う。その楽譜(第2集にある)に、本来あってしかるべき音などが効果的に追加されている。どう演奏しているかわからないくらいに複雑になっているところもあり、とにかく聴くしかない。その圧巻は、やはり第4楽章の二重フーガだろう。新たに音も加わって物凄い。何というか、じつに怪演である。
 技術のみならず、演奏そのものがあまりにもすばらしいので、他の演奏は買っていない。このカツァリス盤を店で買ってから家で聴きはじめるまで、2台ピアノの指20本版よりも、1台の指10本に減っているのだから、絶対に物足りないのではないかと思ったものだったが、その懸念は、すぐに吹っ飛んだことを付記しておきたい。これ以上、何を望むというのか。なお、この版には楽譜にも1小節の欠落も無い。
 カツァリスが2人いたら、2台版も、立派な演奏になったろうに。

(3)ワーグナー編曲ピアノ独奏版 pf:小川典子、合唱:バッハ・コレギウム・ジャパン。(BIS BIS-CD-950)。
 こちらはワーグナーの若気の至り。どうも、絶対に演奏不可能な音の並びがあるのだそうで、少し音を変えて演奏しているそうである。楽譜を持っていないので、それがどこかはわからない。ワーグナーは、一流のピアニストではないのだから、演奏不可能な場所があってもおかしくない。
 演奏は、カツァリスとは比べてはいけない。合唱がついているのは、うれしいものである。

sp_cd_4.jpg (17880 バイト)


2016/11/11



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