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  5. わしの曲の難所とは

大権現様の、わしの音楽を聴け! 第19
「わしの曲の難所とは」



(な)次の演奏会(ここのオケ)では、序曲レオノーレ第3番をやるそうですよ。
(大)ワクワクしますな。この曲は、単一楽章としてはわしの最高の作品なのだから。
(な)というか、先生はもともと単一な楽章の作品は少ないのではなかったですか?
(大)まあ、せいぜい「コリオラン」序曲くらいのものだったかな。
(な)「大フーガ」もそうですけど、「レオノーレ第3番」も本来の住み家から追い出されたようなものですよね。
(大)なにを失礼な。追い出されたのではなくて、わしが自主的に出て行かせたのだ。あまりにすばらしい出来なのでな、埋もれてしまっては申し訳ないというものだ。
(な)ですが、どちらも比較的大きな曲になってしまいましたね。本来の位置にあると、そこだけ肥大しているかのような印象を受けてしまいます。
(大)とにかくどちらも超大作だな。聴き所が満載である。
(な)そこで「レオノーレ3」ですが、やはり最大の聴き所はあそこですね。
(譜例@)
rei-1.gif (45748 バイト)
(大)単に難しいだけではなく流麗だ。気品がある。ファゴットのさりげないサポートが最高である。
(な)しかも、この主題ではここだけハ長調ではなくト長調なんですよね。
(大)ソナタ形式の再現部のようで、じつは展開部だというような、どちらでも受け取れるような巧妙な仕組みが隠されているのだ、エヘン。
(な)レオノーレ序曲もそうでしたが、先生の作品は管楽器に難所が多いですよね。たとえばコレ。
(大)第4交響曲にある、ファゴット(譜例A、交響曲第4番第4楽章)とクラリネットだな。アレグロであるにもかかわらず、多くの演奏では、この直前で速度を落としてしまうのだ。残念この上ない。
(な)ここはスラーが無いので、速いと音が切れなくなってしまいます。仕方が無いですね。といいますか、存命当時の楽器は、今のようなキー・システムが無かったはずですから、今よりも演奏が困難だったのではないですか?
(大)ほら、わし耳が悪かったから、微妙なところは聞き取れなかったし…。
(な)こちらはホルンです(譜例B ピアノ協奏曲第5番「皇帝」第2楽章末尾)。この例の1小節前から鳴っていますが、これがなかなか。ピアノが思いっきりゆったりと演奏すると、息切れをしてしまいます。しかも、第3楽章に入ってピアノが主題を演奏する間も、ホルンはそのまま続けて吹いているわけですね。
(大)絶対どこかで息切れしていると思うな。ただし、皆がロンドに入ったところのピアノに気を取られているスキに、すかさず息をするのだ。
(な)こちらも有名な「田園」交響曲の嵐(譜例C)です。コントラバスのコレは…
rei-2.gif (19974 バイト)
(大)正直言って、正しい音程と速度では演奏は非常に困難、ヘタをすればグリッサンドになる。バイオリンのように小さい楽器ではないから、手の動きが恐ろしくめまぐるしい。誰がどう見たって、正確に弾いているとは思えない。
チェロは、やや小さめな楽器であるから、まだマシなのだろうがね。
(な)きっと音程はむちゃくちゃなのでしょうね。そういうことでは、ここも同じなのでしょうか(譜例D 第9交響曲第4楽章)。とにかく、情け容赦なし。
(大)いつか演奏会場においでの際には、ぜひ注目してやってほしい。わしのイタズラの粋を尽くした一大パフォーマンスなのだから。

(2006.7)



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