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  5. 第9の究極の楽しみ

大権現様の、わしの音楽を聴け! 第20
「第9の究極の楽しみ」



(大)聴き所満載の交響曲第9番であるが、今回は特に第2楽章について解説しておきたい。
(な)いきなり来ましたね。
(大)やあ、来年11月は第9ですからな。(※)
(な)まあ、これまで書いていたプログラムの解説を、第9の演奏会では書かなくてもいいようなので、ここでやっちゃってもいいですね。
(大)そういうことだ。で、いきなり第1楽章を飛ばして第2楽章を解説してしまうのであるが、その最大の特徴はティンパニがオクターブに調律されていることなのだ。しかし今回はそれには触れない。
 かわりに、リズム感に的をしぼろう。いきなりハイレベルであるが、注意して読むように。
(な)リズムというと、この楽章は3拍子ですね。
(大)うむ。スケルツォは楽譜の上では3拍子だからな。しかし、わしのスケルツォは高速で進むので、実際は4小節を単位とする4拍子に聞こえる。
(な)聴けば簡単な話ですね。ぜひご家庭で聴きながらお読みください。
(大)そこで、この楽章の流れを簡単に示すと、4拍子→3拍子→4拍子→2拍子(あくまでも聴感)と進む。2拍子は、トリオの部分だ。
(な)トリオ、つまり中間部が3拍子ではないというのは、新機軸ですね。
(大)そうだ。しかし、よく考えると、新機軸でもない。交響曲などで元々あったメヌエットという舞曲はゆったりとした音楽であったため、楽譜上の3拍子が確実に3拍子として聞き取ることができていたのが、スケルツォでは偉大なるわしによって高速化されたため、4小節単位で聴き取ることになったのだ。したがって、1小節3拍子という図式は徐々にどうでもいいものになっていったのだ。1小節1拍なのである。その1拍が3連符であるというのが、たまたまわしのスケルツォだったのだ。
(な)つまり、1小節が3拍というのは、意味が薄くなってきた、と。たしかに、「英雄」交響曲からは、速すぎて1小節の中の3拍子を指折って数えることはできなくなりましたね。
(大)そうだ。そのようなスケルツォ、たとえば「英雄」交響曲のスケルツォには、突如として2拍子が出現するだろう。
(な)第4交響曲の第3楽章でも3拍子に2拍子が埋め込まれていましたね。
(大)そういう面白さが第9のここにある。3拍子から4拍子に戻るところだ(譜例)。ここでは、3拍子の流れが突如混乱して4拍子に無理やり移るように書かれている。楽譜にも4小節を単位に数えろ(「4拍子のリズムで」)とある。ここは、3拍子→2拍子→4拍子という流れになる。拍子は頭の中で小節に置き換えよう。

(な)譜面では、コントラバスの下に数字がありますね。3拍子が2拍子になり4拍子になってますが、4拍子のリズムでと書いてあるのに、なぜ2拍子ですか?
(↑の箇所)
(大)正直に4拍子で数えると途中で2拍子が余るのだ。だからここでは、わざと2拍子として数えて書いてみた。2拍子がうやむやのうちに4拍子に変化していくように旋律が流れてくのがわかる。なかなか楽しいだろう? こういう、どこか余分、あるいは足りない、だけど面白いという感覚に親しむのがわしの音楽を聴くコツでもある。実例では、「月光」ソナタの第3楽章とか、ディアベッリ変奏曲とか、あるな。
 では諸君、3ヶ月後の「第9の究極の楽しみパート2」で会おー!
(な)まだやるんですか!?

(※) 2007年11月、
ここのオケが、第9を演奏する。

(2006.9)



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