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まだLPを捨てられない


CDが発売されて、もう30年だろうか(今は2008年)。

 そろそろCDの次のメディアが台頭するのかと囁かれている。SACDがパッとしない今、固形物を使用しないでネット上で売買される音楽データがさかんになりつつあるが、実際はどうなのだろうか。私はやはり、固形物でなければいけない。もしあなたが、電気の+−とか磁気のNSなどという目に見えないもので満足しているならそれはそれでいいのかもしれないが、私は手にとって実感できる物を買いたいと思う。半導体メモリや磁気ディスクにあるデータは、心もとない。それをCD−Rに焼き付けたとしても、しょせんそれは焼き付けただけ。いかにデザインが悪くても、ジャケットのある、厚みと重さのある物を買いたいのである。

 「こうしてさわれるものが、あったかいものが、信じられるものなの」(c)磯光雄

 CDはたしかにLPに比べて周波数帯域が狭いのかもしれないが、劣化しつつあるおっさんの耳にはもう関係無い。LPと比べて小さく軽くなって良い。次の世代がどうだか知らないが、私の代はこれで十分な代物なのである。
 でも、まだLPを捨てられない。捨てられない理由はいろいろあるが、持っている全ての録音がCDで提供されていないというのが一番の理由だろう。
 クラシック音楽以外の一般的な音楽はアーティスト=演奏者が固定されているから、そのアーティストの全集を作ってしまえば、それでこと足りる。多少の例外はあるだろうが。
 しかし、クラシック音楽は、たとえば1曲に100種類の録音があるというとんでもない世界なので、結果としてLPからCDへの移行なんて、まさにとんでもない費用と時間と根気が必要だ。私もまだ600枚ほどのLPを持っているが、そのうちのおそらく200枚はCDとダブっているだろう。そもそも、数えたことがない。LP600枚のうち、CDで買えるのは550枚ほどだろうか。つまり、おそらく50枚はCDで発売されていないに違いない。これは、いくら金と暇があってもCDで買い換えることはできない。

 ある曲が欲しかったとして、演奏者が誰でもいいのなら問題無い。しかし、CD時代に誰も録音してくれなくてLPでだけ持っていたら、お手上げ。LPを聴き続けるしかない。しかしこの数年でネット上の店舗が充実したので、検索と入手は手軽になった。昔は電車に乗って遠い街に買いに行ったものなのだが。もう、演奏者さえ気にならなければベートーヴェンの全作品を揃えることができる時代になった。「全作品」というのは細かく言うと問題がある。
 そんな中で入手が難しかったのは、op.104の弦楽五重奏曲。これは、リヒノフスキー侯爵邸で初演されたピアノ三重奏曲op.1の3曲のうちの第3曲ハ短調で、ハイドンによって「出版しないほうがいいんじゃないか」と言われてしまったいわくつきの作品なのだ。それが、他人によって弦楽五重奏に編曲され、ベートーヴェンがおそらく校訂したもので、op.104という数字が与えられた。あの、安かろう悪かろうというCASCADEの全集にも無かったが、その直後のEMI音源の全集には含まれていた。この曲は、じつはその少し前にCD化され、ネット上で検索して購入できる。今になっても発売されている数はLP時代と変わらず、たった2種類のようだ。よくもまあLP時代に集めていたもんだ。下はLPのジャケット。
 ちなみにこの編曲はなかなか良くできたもので、大変面白い。もちろん、元が面白い曲だからだ。ハイドンになった気で聴いてみて、出版すべきかどうか判断しようじゃないか。ちなみに、op.1-3は当然として、op.104のほうも楽譜が売られていたので持っている。


↓スーク四重奏団+1名の演奏による盤。CD化されている。1977年録音、SUPRAPHON(チェコスロヴァキア)。記憶では、1985年頃に買ったようだ。
suq-op104.jpg (24695 バイト)

↓チューリヒ室内合奏団の盤。こちらはCD化されていない。1983年録音、Jecklin(スイス)。1990年頃に買ったと思う。なお、非常に紛らわしいが、チューリヒ弦楽五重奏団がこれとop.4などの珍しいものをいっしょに録音した(2004年)。
zurich-op104.jpg (17515 バイト)





(2008.6.10)



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