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「ベートーヴェンの楽譜」


 皆さんは、楽譜というものには珍版というものはないと思われるでしょうが、探せばあるのです。ヨーロッパまで行けばもっとあるでしょう。また、最近は原典版という新しい動きが活発のようですから、ドイツあたりでは、いっぱい店頭に並んでいるに違いないでしょう。
 珍しいものということでは、何かの本の口絵にあるもののスキャン画像を載せてはつまらないので、なかさんの選んだのは以下のような掘り出し物であります。
 リンクで表紙の画像を見ることができます。ただし著作権上問題がありそうなものは見られません。

「月光」のファクシミリ版 音楽之友社 1971年 絶版
「熱情」のファクシミリ版 音楽之友社 1972年 絶版
 ファクシミリ版というのは簡単に言うと、写真式複写みたいなもので原稿の写真を印刷したもの。しかし写真集とは違う趣きである。おそらく生誕200年記念に乗じて企画されたのだろう。なんと自筆草稿と初版本のセットの「月光」「熱情」が音楽之友社から発行された。たぶんピアノ曲ならページ数が少なくて出版しやすかったからであろう。内容はどちらも、当時を彷彿とさせるものである。「熱情」の自筆草稿では、ときどき解説本に説明が見受けられる、雨滴のにじみがあるページが発見できる。
 ファクシミリ版ということでは、岩城宏之氏の本「楽譜の風景」(岩波)には、「第9」のファクシミリ版の話が載っている。「第9」も、あるのだね。限定版らしいですが。

「指の訓練と楽想の断章」 全音楽譜出版社 1984年 発売中
 ピアノの教則本と言うと、バイエルや、ベートーヴェンの弟子チェルニーとかが有名で、その後に普通のピアノ曲集が並ぶのであるが、これは別格(?)。ベートーヴェンのスケッチ帳にある指の練習用音形から、ピアニスト山崎孝氏がよりすぐったという練習曲。非常にありがたいことは、前半3分の1がさまざまな解説にあてられていることで、ピアノが弾けなくても見ごたえがあるというところだろう。おまけに、ピアノ曲(未完成)が2曲(ひとつはHess58、もうひとつは番号なし)ある。これは非常に珍しい。よくこんな企画が通るものだと思う。誰が買うんだろう(私のような人間です)。

「交響曲第1番」他 ヘンレ 1997年? 発売中
 原典版の出版が盛んであるが、ヘンレでは、交響曲などから始めるようだ。すでに手許には、交響曲第1、2番と、ピアノソナタ全2巻、弦楽4重奏曲Op.18、ピアノトリオ第1集、バイオリンのためのロマンス2曲、ピアノ協奏曲第4、5番がある。今世紀中に「第9」は出るだろうか。一般流布のオイレンブルグ版やブライトコプフ&ヘンテル版などと比較して楽しみたい。

「ピアノ協奏曲第1番」他 ベーレンライター 1996年? 発売中
 ベーレンライターでは、協奏曲から始めているようだ。手許にはピアノ協奏曲第1、2、3番、バイオリン協奏曲、三重協奏曲、交響曲は、第3、5、7、9番がある。ヘンレと重なった曲目が出たら、両方買うしかないのか? それは困った。とにかくドイツの出版社はがんばっているのだ。そりゃ、ベートーヴェンは国の誇りでしょうから。その点、日本の出版社は、売れそうなものしか出さない。仕方ないけど。ヘンレやベーレンライターは、どこまで出版する気だろう。「全部」だろうか。どこかの放送局は「全部やる」(C)NHK だそうであるが、同じ心意気でがんばっていただきたい。私には到底全てを揃える金は無いことであろう。

「交響曲全曲」 春秋社 発売中
 1981年のことだ、カツァリスがリスト編曲の「田園」で華々しくデビュー(「田園」が最初だった)したのは。そのピアノ版楽譜を欲しかったが、当時はなかなか輸入されていなくて、注文しようかどうしようか迷っていた。しかし、春秋社が出してくれました。リスト編ピアノ・ソロ版交響曲全2巻は、解説、丸山桂介、校訂、小林仁による豪華本。管弦楽譜とリスト編曲譜との相違点も網羅されたたのもしい楽譜である。これを見ながら、カツァリスが、どのようにさらなる技巧を加えて弾いているのか確かめるのも非常に面白い。とにかく難しい譜面なので、アマチュアのピアノ弾きでは音楽にならない部分が多いだろう。いったい誰が買うんだろう(私のような人間です)。

「マーラー編曲セリオーソ」 ヨゼフ・ワインベルガー社 発売中?
 変人(?)マーラーによる弦楽4重奏曲第11番セリオーソの弦楽合奏編曲版。当然コントラバス入り。編曲というよりもコントラバスの追加のみのように見えるが、じつは随所に、気にならない程度に修正が加わっている。聴いただけでは、ちょっとわからない。どこかのオケで、やってくれないかな。元が弦楽4重奏なのだから、オケの弦楽の技術がモロにわかってしまう恐い編曲になっているわけだ。
 もののついでに書くと、「ラズモフスキー第3番」を弦楽合奏(コントラバス付き)でやったら、ものすごく聴き応えのあるものになるだろう。ぜひ、どこかでトライしてみてほしい。

「ベートーヴェン全集」 カルマス、ベルウィン・ミルズ まだあるかな?
 右がカルマス、左がベルウィン・ミルズ。じつはアメリカの同じ会社なのだ。どっちが現在の名前なのかな。ベートーヴェンの楽譜による全集を1970年頃に出版し始めたらしい。その中で珍しいものを10種類ほど1990年頃に注文したところ、半分程度が絶版であった。内心そりゃまそうだろうと思ったが、在庫も残っていないのかよ、うう。製本が悪い出版社でもある。ある巻を1回めに注文したものがひどい乱丁だったのでもう一度注文したら、またひどい乱丁だった。あまり買い手のいない企画をするものだから雑なのかな。日本では、到底できない企画である(乱丁も含めて)。



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