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この曲を聴け 4


 ここまでもめったに聴けない曲について書いてますと、辟易される方も多いと思うが、ま、許してやっておくんなまし。音楽の醍醐味というのはこういうところにもあるものなのだ。

1.バイオリンとピアノのためのロンド WoO41

 クライスラーが「ベートーヴェンのロンディーノ」として編曲したことで有名。ある解説者は、クライスラーの曲について「ベートーヴェンのどの曲かわからない」と書いてあったが、不勉強はなはだしい。ベートーヴェン好きの解説者に尋ねたらすぐにわかることだ。
 原曲であるこの曲は、旋律としては硬めといえる。一方、クライスラー編曲は、音の基本の流れは同じであるが、かなり旋律がなめらかに変化している。また、中間部の旋律まで同じというわけではない。とりあえず、聞き比べてみよう。

2.2本のフルートのための二重奏曲 WoO26

 こういう曲が存在していることは、一種不思議な感じがする。特に親しい友人がいて初めて書こうかな、と思うのではないだろうか。ベートーヴェンの室内楽でフルートが含まれる曲は少ない。その中でこの曲は、フルートの練習曲集には欠かせない曲である。これ以外に、3本のフルートのための曲があるが、それはベートーヴェンの真作かどうか疑わしいということだ。

3.12のスコットランド民謡集から、第11曲 WoO156

 この曲は旋律が「蛍の光」である。なんとスコットランド民謡だったのだ。そんなことも知らずに歌っていた私であるが、当然だろう。もっとも英語の歌詞は「蛍の光」ではない。ベートーヴェンはイギリスの業者からの依頼でピアノ、バイオリン、チェロの伴奏部分を編曲したということであるが、ベートーヴェンは歌詞を知らされずに旋律のみで仕事をした。民謡の編曲集なので、いくつかに親しみが持てたり、どこかで聴いたことがあるな、と思わせる曲がある。まとめて聴いてみるとよい。

4.フルート、ファゴット、チェンバロと管弦楽のためのロマンツェ・カンタービレ Hess13

 なんと、1990年頃にこの曲のライヴ演奏がテレビで放送されていた。何を考えてこの曲を選んだかわからないが、私にとっては快挙であった。ただ、聴衆にはどこが面白いのかわからなかったに違いない。もちろん、それほど面白い曲というわけではない。
 最近、ミュン=フン指揮でグラモフォンが発売した。

5.幻想曲 作品77

 この曲は、じつに自由な形式で書かれている。これはどういうことかというと、ベートーヴェンの即興演奏に非常に似ているということなのだ。だからといって伝記に書かれているように、この幻想曲も「じつに感動的な」曲だろうと想像してもらっては困る。やはり即興というのは「劇的効果」が主体で、この曲とは全く違った印象を持っていたはずなのだ。それとは逆にこの幻想曲は、後世に残ることを想定した「おとなしい」曲なのである。ベートーヴェンの本当の即興とはどういうものだったろう。「悲愴」「熱情」「告別」ソナタがごっちゃになったような曲だったのだろうか。



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