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この曲を聴け 5


 ここでは、有名曲の前後に書かれた作品を集めてみた。とりたててコンセプトがあるわけではないが、そうなったのである。もちろん、聴いて面白いということでは、無名の小品よりもずっと価値あるから、大丈夫である。こういう曲についても、いろいろと解説本があってもいいじゃないか、と思うのだが、どうだろう。この中では、「ロマンス」が結構知られた曲であるのに、どうも、こういった小曲はベートーヴェンでは無視されがちなのだ。そもそもLPレコードができる前、SPレコードの時代は小品の時代だったのだ。小品について、もっといっぱい語ろう。

1.バイオリンと管弦楽のためのロマンス ト長調 作品40、ヘ長調 作品50

 ヘ長調の方が旋律としてきれいなので、バイオリン小品集によく収まっている。しかしト長調も面白い。冒頭から重音奏法なのである。同時に2つの弦を鳴らすわけで、この曲の特徴でもある。このやり方が、バイオリン協奏曲の第3楽章に活用されていることを考えると、この2曲のロマンスは協奏曲への布石ということができる。
 このような小品は、最近の録音では、おざなりになっているのではないだろうか。ヘ長調の優秀な演奏では、1960年代にシェリングがイッセルシュテットの指揮で録音したものが最高に美しい。私などは、バイオリン協奏曲(これはこれで非常に名演なのに)の第3楽章に続いて入っていたこの演奏で、呆然としてしまった経験がある。何かをやっていたはずなのだが、手が止まったまま、あっけにとられていたのだ。いまだにこれを越える演奏にはまだ出会っていない。
 バイオリン協奏曲のオマケとしてしか収録されないので、有名なわりに聴くチャンスが少ない。これほど暖かい曲なのに、そこが寂しい。

2.序曲「レオノーレ」第2番 作品72a

 いわずと知れた第3番の元になった曲である。ということは、ベートーヴェンの作曲の手順をうかがい知ることができるのだ。ソナタ形式の面白さという点では、第3番の方が抜群に面白い。逆に、第2番は推敲されていない姿の持つたどたどしさがあり、粗削りな面白さ(感銘を受けるとはいえない)ということでは、こちらだろう。2曲を比べて聴くと、「第3番」のものすごさというものがよりいっそうわかるのである。
 序奏、アレグロの第1主題で盛り上がる部分、中間でのラッパ、コーダでの盛り上がりなど、両者を比較するたびに面白さ倍増である。

3.序曲「レオノーレ」第4番

 いわずと知れた第3番の後に発見されたという、いわく付きの作品。と言いたいところであるが、じつはパロディ音楽の最初にして最大の傑作音楽祭「ホフナング音楽祭」の名物作品である。第3番を小節単位で覚えている人にとっては、笑いながらも「そうだよな、そうだよな」と思わず納得しながら聴けてしまうという空前絶後の大作でもある。第3番が好きなあなた、第2番も聴いたあなたは、絶対に第4番も聴くべきなのだ。無論、第3番のスコア片手に聴いていただくと、面白さ100倍である。

4.ピアノ協奏曲 ニ長調

 クイズ:ベートーヴェンはピアノ協奏曲をいくつ書いたか。
 解答:正式には5曲、編曲で1曲、あぶれた楽章が1つ(WoO6)、若い頃の番号なしが1曲(WoO4)、スケッチのみが1曲で、計:7曲+1楽章+1断片、ということになる(一応、今もなんとか聴ける曲として)。
 このピアノ協奏曲ニ長調は、バイオリン協奏曲のピアノ版で、今まで何種類もLP,CDが録音されてきた。知られていないとはいえ、かなり録音数が多い。これも元が有名であるからに他ならない。
 元がバイオリンであるだけに、左手部分が思い切った音を割り当てられていないのは仕方がない。この曲は、バイオリン版とほぼ時を同じくして編曲されたということで、時間の制約もあっただろう。結果として、バイオリン協奏曲よりは迫力が出なくなったりする。昔のピアノならともかく、今のピアノでは荷が軽すぎるかもしれない。
 珍しさでは、ポリーニがこの作品をライヴ演奏(録音)したということ。有名ピアニストでも有名になる前は、いろいろなことをしたのだな。有名どころでは、バレンボイムが弾き振りをしたものがある(グラモフォン)。

5.ピアノ協奏曲 変ホ長調 WoO4
 前述の若かりし頃の作品。管弦楽のかなりの部分が失われたということで、音楽学者のヘスが編曲したものが現在演奏されており、スコアも出版されている。管楽器はフルートとホルンが2本づつ、ティンパニなし。で、古典派といっても、モーツァルトより前に作曲されたかのような印象である。スコアを見たのみでは、どこからどこまでがヘスの筆になるものかはわからないが、作曲年代的には、満足できる復元であるといえる。



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