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小銭は、はたして幾らだったのか?
「ロンド・ア・カプリチオ」Op.129を聴く


「ロンド・ア・カプリチオ」は、「小銭をなくして怒り心頭、カプリースで怒りをぶちまける」という副題を持つが、これは出版社がつけた。もともとは、「ハンガリー風に、奇想曲のように」というタイトルである。この曲は大変面白い。
 ロンド形式は、とりあえず、[A-B-A-C-A-B-A]などというように、主題(A)が何度も現われる途中で別の主題が出てくればよい。ま、それはそれでいいのだが……。

 じつは、この曲は普通のロンドじゃない。まず、主題(A)、ト長調。24小節。
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次に出るコレ
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は、16小節しかない(版によっては、8小節しかないものもあるが、構成上無理がある)ため不完全であるが、主題(B)とするしかない。そして主題(A)が2度めの出現をする。

続くのは、主題(C)変ロ長調は分散和音でテクニックを披露。これはかなり難しいんじゃないか。
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 主題(C)から(A)に戻るとき、主題(A)が左手に出現。これは、じつは主題(A)の回帰ではない。変ホ長調で、ト長調に転調する役目を持つ。紛らわしいところが面白い。

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 この後で主題(A)ト長調が回帰し、3度めのご披露になると、右手では変奏されてしまったことに気付く。続いて主題(D)ホ長調の出現。和音でにぎやかに現われる。
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 これは、8小節をくり返し、続く8小節が繰り返される。合計、32小節。その次は、5小節という半端な長さで、強引に主題(A)に回帰させている。このような半端な小節数で推移する手法は、ベートーヴェンならでは。下例はその5小節のうち後半3小節。和声学的な知識が無いので説明はできないが、ホ長調は一気に3度上に転調し、ト長調になった。
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 主題(A)の4度めの出現では、右手は変奏されていないが、左手は分散和音になっているのがご愛嬌。

 以上で、[A-B-A-C-A-D-A]となった。普通のロンド形式はこの程度で終わる。
 ここまででも十分面白いが、ここからが、さらに面白い。主題(A)の展開部があり、その長さは、ここまでの長さとほぼ同じ。そう、折り返し点を過ぎたら、ロンドはおしまい。つまらんロンドよりも、ここからはオレの展開技法を聴けということなのだろう。主題(A)は分割し抜き出され、変奏され、こねくりまわされることで展開される。ベートーヴェンが、暴走を始めたのだ! 一気にまくしたてる曲の雰囲気と、作曲したのが30歳前ということもあり、この展開部は性格変奏にはならないが、かなり面白いのは間違い無い。

 以上により、この曲の形式は、[A-B-A-C-A-D-A-展開部-コーダ]。カプリチオなので、これでいいのさ。
(2004.8)



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