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  5. ピアノソナタ第21番 ワルトシュタイン

単発講座「ピアノソナタ第21番 ワルトシュタイン」


面白いところをさがそう

 「ワルトシュタイン」は「熱情」とセットで、交響曲第3番「英雄」とほぼ同じ時期に作られた。「英雄」がそうであるように、「ワルトシュタイン」や「熱情」は、それまでのソナタとは一線を画するスゴいソナタであることには違いない。などという解説なんて、聴けばわかることであろう。

第1楽章
 この曲には意味が無いような遊びがいろいろとあるが、本当は綿密に計算し配置されている。次に示すのは、第1主題にある「ちょっとした」フェルマータに至る音型だ。交響曲第5番、「田園」でも、主題の直後に同じようなフェルマータがある。「英雄」の第1楽章には無いが。そうそう、「テンペスト」にもある。
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 このままでは、さりげなく次に移ってしまう。しかし、この音型が主題再現部の第1主題の、その2度めの出現で以下のように使われる。この直前で、先に示した音型を2度続けて、あれっと思う方向に転調してしまうのであるが、それをこのようにして戻してしまったというところだ。さりげない中にも強引さで有無を言わせぬ面白いところである。
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第2楽章
 よく知られるように「アンダンテ・ファヴォリ」がここにあるはずだった。友人の忠告を得てそのかわりに作られたこの楽章は、おだやかで幻想的に進んでいく。けっこう明るい「ファヴォリ」が、ここに残されたままであったとするなら、ソナタ全体はかなり違った印象を持つことになっただろう。この短い第2楽章が幻想的であるおかげで、次の楽章に、すんなり続くことができる。「ファヴォリ」では、こうはいかない。あるいは何かスゴイつなぎ方が別に考えてあったのだろうか。

第3楽章
 ハ長調というのは、とりあえずは黒鍵を使わない音階になる。すると子供なら、指をすべらせて右から左へ、ザーーーーッなどとやらなかっただろうか。私はやった。この楽章はアレグレットであるが、早めに演奏してしまうと、ここの左手は、指がもつれてしまわないだろうか。
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 もしかすると、ピアニストも指をすべらせてザーーーーッとやっているのかもしれない。どうだろう。まあ、ここはそうしなくても普通の運指で無難にこなすことができるだろう。しかし、コーダに移り速度があがると、次は、アレが待っている。
 その前に……
 意味が無いような部分ということで、コレをあげておこう。
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 さて、意味なく次に進むが、「アレ」とは、コーダにおける、この部分のことだ。
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両手が交互にオクターブで上下運動をする。これはもう、絶対に指をすべらせていくしかない。でなければ、できないのだ。指をすべらせたくない場合には、バックハウスがやっているように、ここだけ速度を遅くするしかない。そして、この例の最後の3小節で、速度を戻すしかないのだ。それで面白いかどうかは別問題であろう。





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