ベートーヴェンの楽譜のどこかにちょっと(その1)
ベートーヴェンの真骨頂は、いろいろある。クラシック音楽に不慣れ、というか、全く相手にしていない人たちにとっては、何だか暗そうと思うかもしれない。それは「難聴」や「苦悩から…」「交響曲第5番がそもそも短調で、冒頭なんて、気持ちよくない」というのが大半の理由なんだろうが。慣れてくると、全く違う。
貴族や大衆への浸透を考えたり、出版社へ売り込んだり、未来永劫に残るような曲にしたい、などという理由で、聴衆への受け易さや聴き易さと、内容の深まり、作曲技術や楽器の使い方の進化、新機軸の取り込みなどが、いろいろな組み合わせで曲に現れているのだ。だから、どんな音楽の要素も彼の作品のどこかにある(というのは書きすぎかもしれない)。
なんて書いてはみたものの、ここでは、ちょっと変な、しかし魅力的な書き方の作品を部分的に取り出して紹介したい。(「その2」に続くかどうかはわからない)
1.弦楽四重奏曲第16番第2楽章
これが一番わかりやすいと思う。いわゆるトリオの部分で、第1バイオリン以外が延々と同一音型を繰り返すところである。まず、赤い下線のところの動きが面白い。続いて、矢印の、第2バイオリン、ビオラ、チェロの動きだ。単純に、面白い。旋律や形式感を重視した古典派からは、絶対に逸脱している音の遊びだ。実験的な手法などとカッコつけて言ってもいいが、そういうことを平気で盛り込めるのはベートーヴェンならではである。
2.弦楽四重奏曲第13番第1楽章
こちらは比較的おとなしい部類だ。中間で第2バイオリンなどが一定の音型を継続する。時折音程が変わるのでさほど面白みは無いが、面白いことは間違いない。延々と続くと味わいがある。
3.弦楽四重奏曲第13番第2楽章
楽章の冒頭では存在しないが、途中で現れる。絶対、こう言ってる。
(続く?)
(2007/1/2)