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なんとなく10曲を選んでみた


 ほら、ナントカ・ベスト10とかいう企画、ありがちじゃないですか。ってことで、私がよく選んでしまいがちな曲を10曲、選んでみた。聴く上で参考になるかどうか、たぶんならない。

1.ピアノソナタ第30番 ホ長調 Op.109

 たとえばピアノソナタ全集とかがあったとき、どの曲から聴くだろうか。私の場合も何曲か候補が出るが、そのうちの1つがこの曲だ。いえね、単に第一楽章が好きだからなんだが。さらりと流すような第1主題が可愛い。ここで気持ちよく演奏できないピアニストはボツだ。続く第2主題は速度が変わるが、こちらもさりげなく演奏してほしい。これに続く楽章も、作為的な表現は勘弁願いたい。無理にそうしなくても十分に形を成す曲であると思う(*)

(*)しかし、昔買ったエランド(と読めるピアニスト)の演奏は、ひどかった。枯れてしまって色も無く味も無く、水気も何も無い。あれほど無味無臭で演奏できるのは、ひとつの才能かもしれない。

2.交響曲第4番 変ロ長調 Op.60

 交響曲なら、やはりこれでしょ。第1楽章の明快な高速感覚、第2楽章の美しさ、第3楽章の面白いスケルツォ(何が面白いかは省略)、第4楽章のユーモアとスピード感。一番機嫌が良いベートーヴェンが感じられる、とまで書くとウソっぽいが、何の疑問も出てこない音楽だ。これは普通に演奏すれば必ずサマになるはずと思うので、つまりこの曲の演奏がダメな指揮者は、何やってもダメじゃないかと思う。

3.ピアノ三重奏曲第5番 ニ長調 Op.70-1「幽霊」

 いわゆる名曲と呼ばれる「大公」は選ばないんだな。あれは全体が長いし演奏が難しいし、それはつまり聴くほうも難しい。スゴい演奏でないと「大公」は最後まで聴けない。その点「幽霊」は良い。題名に惑わされないようにしたいが、第1楽章も第3楽章も快活。第2楽章は、何も考えなくてただただ浸るだけでいい。室内楽を聴く場合には丁度良い音楽と思う。

4.6つのバガテル Op.126

 好きなんだな、バガテル。これらのような短い曲は良い。ピアノソナタに含まれると曲全体を壊してしまいそうな、デリケートな様々なイメージが、ここにある。なんて書くと、これまた興味深いんじゃないかと。ピアニストは、これをきちんと弾いてほしいもんだと思う。ソナタだけ弾いてりゃいいってもんじゃない。

5.バイオリンソナタ ニ長調 Op.12-2

 冒頭の主題が面白いことで気になる曲。あんな主題でいいんですかと思うかもしれないが、いいんです、あれで。あれで曲ができるんです。不思議です。こんなつまらない主題で即興演奏をさせられたこともあったのかなと想像するのも一興だ。つまらない主題だなあと思うのは冒頭だけなので大丈夫。変奏曲の名手はうまく味付けしてくれる。

6.弦楽四重奏曲第10番 変ホ長調 Op.74 「ハープ」

 別ページにも書いたが、第1楽章も第3楽章も好きなのである。第3楽章のトリオは、思いっきり高速でなければいけない。第13番や第16番にしようかと思ったが、前述の2楽章の魅力に勝てなかった。

7.バイオリン協奏曲 ニ長調 Op.61

 癒し系(?)という感じで選んだが、どっこい重厚な部分も多いので、普通に演奏すればいかにもベートーヴェンになる。私には、どう考えてもここが白眉。泣かせる音楽をあといくつか作曲してくれたら良いのになあと思う。
be_vc1a.jpg (16898 バイト)

8.七重奏曲 変ホ長調 Op.20

 ベートーヴェン自身による評価は結局高くないままだったけど、比較的録音の数が多いし、選ぶならこれははずせないでしょ。クラリネット、ファゴット、ホルンが、弦楽器を丸い(?)音色でカバーしてくれるといった感じ。少人数の室内楽は慣れないうちはつまらないと思うが、この曲は室内楽を慣れさせてくれる楽しい曲だ。そして、ベートーヴェンがよく使った形式が全部入っている。つまり、ソナタ形式、ロンド、スケルツォ、メヌエット、変奏曲の5つだ。6楽章もあるのだから当然か。

9.祝典劇『アテネの廃墟』行進曲と合唱 Op.113-第6曲(Op.114)

 独唱と合唱にバイオリンのソロが重なる祝典劇『献堂式』への合唱(WoO 98)にしようかと思ったが、こっちも面白いので選択。あまりにもマイナーなので、誰も狙って買おうとしないだろう。通俗的で単純にめでたい合唱付きの音楽を選ぶなら、この2曲になる。あれだけ名曲があるのに、こんなもの選んでどうすんのかと言いたい人もいるだろう。それは、この2曲を聴いてから言ってくれ。

10.コリオラン序曲 Op.62

 展開部の緊迫感が、さすが劇を題材にしただけのことはあると思う。ただ、劇を題材にしたという曲なら他にもいくつかあるが、コリオランはただこれ1曲だけで、しかも実は劇伴というわけでもない。これ1曲で全部表現してみせるぞ、という気概があったのかもしれない。展開部の緊迫感をうまく表現できない指揮者は、それだけで水準以下。


(2012.7.22)



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