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単発講座「交響曲の推薦盤」 改訂2016/11/11


 このような企画はいつの時代にもある。でも私は詳しく書く気は無い。なぜなら全ての録音を聴いているわけではないのだから。しかし一応私なりの基準を書いておこうと思う。
 ただ考え違いしてほしくないのは、評論家や私や誰かが言った「それだけ」を聴けばいい、というわけではないということだ。やはり「まあ普通の演奏」を知って、はじめていろいろな観点でのすばらしい演奏というものがわかると思うからなのである。したがって、曲そのもののすばらしさを知るためになるべく正統派(=普通っぽい)の、なるべく楽譜改変をしていない(と思われる)ものを聴き、その上で特徴のある名演も聴いて演奏の違いやすばらしさを堪能するという姿勢が大切であると思う。
 雑誌などに掲載されるいわゆる推薦盤とは、そのような過程を幾年も経た人が選ぶので本来は信用していいはずのものであるが、そこには商売上のお義理、お約束というものがある。もしそこに最新録音が紛れ込んでいたら、それは業者へのヨイショであると思ってまず間違いないだろう。交響曲に限らず名演奏というのはすでに出尽くしているのである。加えてかわいそうなことに、新しい演奏家ほど過去の演奏家の影響をより強く受けてしまう。ほんとにその新しい演奏家は自分の円熟を出し切ったのか? 少なくとも、おいそれと名演の評価を与えるのは早計なのだ。
 また、私がいう正統派というのは、別に楽譜に忠実とか伝統的演奏とか、そういうものではない。テンポも強弱も旋律の表情も「まあ、普通ならこんなふうにやるだろうな」と思うようなものである。熱血であるべきところはほどほどに熱血で、柔和であるべきところは、ほどほどに柔和にというものだ。

●単独で推薦します

交響曲第1番
 クリュイタンス/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1958年)
交響曲第2番
 クリュイタンス/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1959年)
交響曲第3番
 トスカニーニ/NBC交響楽団(1953年)
 フルトヴェングラー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1952年スタジオ録音)
 このような難曲は、両者をさしおいて他は選べません。
 最近、カラヤン指揮のベルリン・フィル創立100周年記念演奏会を聴いて、やはりいいなあ、すごいなあと思った次第です。
交響曲第4番
 クライバー/バイエルン放送交響楽団(ライブ)
 クリュイタンス/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 この第1楽章展開部冒頭に現れる新しい旋律の扱いで、カラヤン、フルトヴェングラー、ムラヴィンスキー、ブリュッヘンらは誤っています。装飾音符(短前打音)の扱いが誤っているのです。バロック的でもいけないし、センチメンタルな解釈もいけない。ベートーヴェンの装飾音符の扱い方を正しく把握して演奏しなければいけないのです。どうして彼らはこんな単純な誤りをおかしたのでしょうか。
交響曲第6番
 ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(スタジオ録音もいいけど、来日時の公演もいい)
 クリュイタンス/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
交響曲第7番
 ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1975年日本公演)
 クライバー/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(ライブ、DVD)
  ※この曲はライブなどで熱気をパワーアップしなければ意味がないです。
 ライブでないものでは、
 クーベリック/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
交響曲第8番
 クリュイタンス/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
交響曲第9番
 ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(デジタル録音初期の、ベーム最後の録音)
 ハイティンク/コンセルトヘボウ管弦楽団(ただし、ライブを。スタジオ録音よりもずっと良い)

●全9曲として推薦します
本命

コンヴィチュニー/ライプツィヒ・ゲバントハウス管弦楽団 最もクセが無いように聴こえる。無骨なおっさん的。
モントゥー/ロンドン交響楽団+ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 なるべく普通に演奏しているが、ロマンティックな巨匠時代の香りがけっこう残っているようだ。第9番のみウェストミンスターの録音で毛並みが違うのが惜しい
イッセルシュテット/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ベームとどっちが良いかなあと思うが、ベームよりは、あまり解釈に縛られずに自由に演奏しているような感じがする。
カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(第1回:1960年代,第2回:1970年代) 個人的には第2回全集が好きだが、第1回のほうがクセが無いように思う。

対抗

ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ウィーン・フィルの、一番普通の演奏であると思う。スタンダードという気は無いが。あまりに普通すぎて、発売当時の批評で意見が混乱しているものがいくつかあった。
バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 内容と録音の成立過程から、ウィーン・フィルにかなり自由に演奏させているように思えるが本当はどうだろうか。ライブ録音であるが拍手無し。
カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(第3回:1980年代) これを聴くと、第2回の全集で十分じゃなかったかなと思う。
クリュイタンス/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 ステレオ初期で録音がやや悪い。演奏は秀逸。

注目

クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団 全体的に遅めで、それが気になる人はやめること
マッケラス/ロイヤルリバプールO 別楽団で2個めの全集がある(私は聴いていない)が、こちらのほうが評判が良い
トスカニーニ/NBCSO エネルギーは十分。楽譜の改変は、かなりあり。録音がモノラルは仕方が無いので、比較的新しい1950年代のものを。

シェルヘン/ルガノ放送交響楽団 別ページに解説あり。不思議な魅力のトンデモ演奏。

×論外(聴くだけ無駄なものとして)

ジンマン/チューリヒ・トーンハレ管弦楽団 勉強していない指揮者。自分の売り出し方策に注意を払っていない。おまけに勝手な改変で意見も述べず。はっきり言って大嫌いである。


※ちなみに、デジタル録音になってからのものは、あまり買っていませんから…
※全集で所有しているもののうち、上に書かれていないものは…
 ワインガルトナー/VPO他
 レイボヴィッツ/ロイヤルPO
 岩城宏之/NHK交響楽団
 ハノーヴァーバンド
 ホグウッド/ACO
 飯守泰次郎/東京シティ・フィル(売却済み)
 アバド/ウィーン・フィル
 ザンテルリンク/フィルハーモニア管弦楽団
 クーベリック/9つの交響楽団(第7のみ上に記載しましたが)
 ノーリントン/ロンドン・クラシカルプレイヤーズ
※持っていないものについては何も書けませんので、ご了承ください。



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