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ちょいネタ 交響曲第5番、第6番を比較する



交響曲第5番について、Wikipediaを読んでみよう。
第1楽章は、"「ジャジャジャジャーン」、もしくは「ダダダダーン」という有名な動機に始まる。これは全曲を通して用いられるきわめて重要な動機である。特に第1楽章は楽章全体がこの「ジャジャジャジャーン」という動機に支配されており、ティンパニも終始この動機を打つ。"

では、どれくらいこの楽章は例の音型に支配されているのだろうか。小節を数えるよりも視覚に訴えるとしよう。まず、例の動機の冒頭2小節を赤で示すことにする。その派生として、1小節分をオレンジで示すことにしよう。


  なお、冒頭1小節は同じ音程で3つあるが、音程が変わってもリズムとして同じと判断できるものは、オレンジ(斜線入り)で示そう。ということで、全502小節を色分けしてみると、こうなる。
1行は100小節で、これはおよそ1分10秒くらいになる。この楽章のおよそ半分の小節がひとつの動機でできていることがわかる。もちろん全く出てこない部分もある。聴いてみてどのような進行をしているのか確かめてみよう。第2主題は例の動機とは一聴関係ないようにみえるが、低音弦に動機がさりげなく出てくる。3行めと5行めの白いところは、第2主題から派生した部分。真っ白であっても、これらの部分が持つエネルギーの凄さに驚いてしまう。
 とにかく、 まんべんなく配置されているわけではないことは、音楽としてメリハリがあり聴いて面白くなるように考えられていることに気付けば、当然のことだろう。



  さて、交響曲第5番と同時期に作られた曲は言わずと知れた交響曲第6番である。実はこの第1楽章も動機の積み重ねでできているが、そのおだやかな曲想のためか、あまり言及されない。そこで今回は、比較の意味を込めて同じように図示したいと思う。

  第1主題群で冒頭の1小節めをオレンジ、2小節めを赤とする。同様に、派生した音型を斜線入りで示す。今回は長めの音でできている青の音型も用意した。

全512小節を図示しよう。


  目立つのは中間(展開部)にある2つの赤い帯だろう。ここが有名な「長大なクレッシェンド」を形成する繰り返し部分だ。これは2つある。展開部の後半では青が何度も繰り返されていることがわかる。ここでわかるのは、この楽章の展開部の元はたった4つの小節だということである。そんなんでいいんかい! とでも言いたくなるが、これぞベートーヴェンということだ。
ちなみにこちらの楽章も、色の無い長い隙間がある。ここは主に第2主題があるが、交響曲第5番と違って第2主題が流れていく中で第1主題の動機は現れないので、全く別個の部分という印象を持つ。そういうことでは、第5番のほうに緻密な印象を与えやすい。しかし、この2曲の第1楽章における動機の使い方という点では、全く同じくらいに執拗に利用していることがわかるだろう。そして、全く使われない部分もあることも。


 (2019.11.28)



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