1. ベートーヴェン勝手解説大全集 >
  2.  
  3. メニュー >
  4.  
  5. CDのキズ

CDのキズ


■注意■ 音楽をCDに頼っている方は、読まないほうがいいです。

 皆さんは、どれほど注意してCDを扱っているだろう。LPよりはキズがつきにくいことは事実であるが、そのぶん注意力が散漫になり、結局キズをつけてしまうこともあるだろう。まあ、自分でつけたキズは自己責任で仕方が無い話であるが、ここでは、自分がつけていないCDのキズについて書いておきたい。

 それは、CDのノイズのことである。いや、テープヒスとか量子化ノイズじゃないよ。デジタル化の過程で埋め込まれた人的要因のノイズなのだ。製造業者が注意さえしていれば防げたはずのノイズなのだ。
 最初にそれを発見したのは、約2年前、クーベリックの交響曲全集(国内盤)だった。

キズ発見

 ffの場面で、「チッ」というノイズが聴こえた。時間にして約0.2秒といったところ。CDにキズがあるのかと思ったがキズは無い。ピン・ホール(アルミが欠けた小穴)も無い。聴き続けていると、あちこちにあった。どれも、時間にして0.2秒程度。聞き逃したことも多かったかも。そのCDをいつ買ったかというと、5年ほど前(2004年頃)。中古で買ったが、それほど古いというわけでもないだろうに。とにかく、キズの多さに閉口した。それも、全集のうちの1枚だけではないのだ。

 もしスピーカーで聴いていたら、生活雑音にまぎれてわからなかったはずだ。最近、ヘッドフォンでよく聴くようになったのでわかったのだ。
 その時は、このノイズはクーベリックの交響曲全集に特有なものだろうか。いい演奏なのに惜しいな、と思った。がっくり来た。そのまま、しばらく経った。

再発見

 今年(2009年)になって、ベーム指揮の第9(国内盤、1970年録音)を聴いていた。また発見した。あのノイズがあった。急いで位置を確認。第1楽章、10分23秒のところである。そのとき聴いていたCDは、国内盤からコピーしたものだ。コピー失敗かと思ったが、元のCDにも同じ位置にキズがあった。私がコピーした時のミスでは無かったのだ。わざわざ元のCDにキズを付けないようにコピーしたのに、もともとキズものだったのか。
 そうすると、製造業者が作ったCD作成用のマスターにキズがあったのかと思うだろう。しかし、ここからが問題なのだ。私はもう1枚CDを持っている。演奏は同じであるが、新たにリマスタリングしたと表記されているものだ。なんと…同じ位置に同じノイズがあったのだ。おいおいリマスタリングって何だよ! 実際の製造工程がわからないが、どうもアナログテープからデジタル化した、まさに最初の工程でノイズが入ったのである。
 つまり、例のCDにある表記でADD(A→D→D)の、A(アナログ)からD(デジタル)にする過程でノイズが入ったのだ。だから、次のCD用マスターを作るDからDの工程でいくらマスタリングをやりなおしても、元が変わらないので同じノイズが入るのだ。CDにあるこれら3文字の意味はここでは省略する。
 またまた、がっくり来た。一度そこにノイズがあると知ると、また気にしてノイズを聴いてしまうじゃないか。

再三発見

 さて、バーンスタインの第9(国内盤、1980年録音)を聴いた。またあった。第1楽章第1主題が出てすぐのところだ。じつはこのCD、別の時期の発売としてもう1枚持っているが、結局同じところに同じキズがあった。前述のベームと同じ結果なのである。良い演奏なのに、本当にもったいないことである。
 おかげでさらにまたがっくりと来た。もうかんべん。
 最近(2008年?)に再発売されたものも同じじゃないかなぁ。

これは、メーカー特有?

 ここまでで察しの良い皆さんにはわかるように、これらは全て例の黄色いレーベルである。しかも、国内盤。黄色といえば、最大手じゃないかってばよ。
 じつは、カラヤンのツァラトゥストラでも、弦楽器の強奏時にノイズが入っていて辟易した覚えがある。例の、金環食がジャケットになっているCDだ。ここで問題としているノイズの種類とは違うが、モノが名演奏なだけに興ざめなのだ。
 黄色いレーベルは問題ありなのだろうか。それとも、国内盤のみの問題なのだろうか。

 じつは手元に、ベーム最後の第9の、国内盤と海外盤があるのだが、怖くて確認できていない状態なのである。まあ、元がデジタル録音だら、問題ないとは思うが…。それでも怖い。何度も聴いているが、キズは無かったような気がする。

 さあ、皆さんも、キズのあるCDを探してみよう。ポイントは、黄色いレーベルで、元がアナログ録音だ!

CDには、いろいろなノイズがあるので列挙してみよう。

1.量子化ノイズ
  デジタル処理に伴うノイズ。最近の技術により、作る側でも聴く側でもほぼ回避できているため、知らない人も多いだろう。
2.テープヒス・ノイズ
  アナログ録音をCDにした場合に、仕組み上、必然的に入ってしまうノイズ。そのいわれを知っている人は、もともとCDでも気にならないものだ。
3.ジリパチ・ノイズ
  正式名称は、これでいいのかな。SP盤などからレコード針で音を取り出したときにゴミやキズなどで発生するノイズで、知っている人には、元々了解済みのノイズだ。
4.演奏時の音の歪み
  エレキギターのアンプなどのボリューム調整で、わざと(あるいは、本人も知らずに)歪ませている場合の音など。これは結局演奏者に由来するので、聴く側ではそれも含めて音楽とするしかない。
5.CDの表面のキズによるノイズ
  このノイズは、キズを付けた人の責任だ。
6.演奏者のノイズ
  イスがきしんだ。楽器などをどこかにぶつけて、カチンと音がした。楽譜の紙をめくる音。指揮者のうなり声。まあ人間だからいろいろある。

以上は、由来が問題ないか、消費者が納得できるノイズだ。
しかし、以下のものは腹が立ってしまう。聴く側では、どうすることもできないからだ。

7.製造業者が、知らずにレベルオーバーさせたノイズ
  デジタル録音は数字的に音量の限界が確定する。一定の音の強さを超えると、レベルオーバーになり歪みとなって聴こえるのだ。デジタル・マスタリングの際に失敗するとこうなる。こういうレベルオーバーは装置に警告表示くらい出るものだと思うが、結局、そんな警告灯も見ないで適当にやっちゃっているのだろう。
8.製造業者が、わざとレベルオーバーさせたノイズ
  これはあるCDについて発売元から直接私が回答を得たのであるが、ポップス/ロックの分野に特有のもので、レベルオーバーさせると迫力が増すとか。そんなもの、聴くほうでボリュームを回せばいいだけのことなのに、何を考えているのだろうか。これも、製造業者の責任である。この勘違いの間抜けさについては、ここでは言及しない。
9.製造業者が、アナログからのデジタル・マスタリングを失敗したときのノイズ
  製造業者の責任である。試聴もしていないのかよ、ってことになる。今回私が問題にしたのは、これである。




(2009.8.28)



トップに戻る メニューに戻る