単発講座「英雄の主題の演奏」
主題をどう演奏するか。
Kapellmeisterさん御希望の調査がありましたので、私の所有分における結果を報告します。
リサーチ依頼( Kapellmeister , 若干編集)
「英雄」のフィナーレ、前奏の後、弦のピッツィカートで低音主題が出て来ますが、よく見ると一回目は8分音符、2回目が4分音符になっています(画像参照)。
以前、此の曲を振った時、オーケストラにその事を言ったら、「難しいけれど、2回目にヴィブラートを強く掛けてみよう」といって試してみたら実に上手く行って皆で喜んだのですが、私の持っている録音を聴く限り、そこにこだわっているものは皆無でした。
お持ちの録音でそう演奏しているものはありますか。
結果
というわけで結果発表。数字は録音年(月、日)、M:モノラル、S:ステレオ、D:デジタル。特に記載が無いのは、1回目、2回目の違いが聞き分けられなかったもの。
ワインガルトナー、VPO 1936 M 2回めをアルコ
トスカニーニ、NBCSO 1938 M
シューリヒト、BPO 1941 M
クナッパーツブッシュ、BPO 194? M
フルトヴェングラー、BPO 1944.12.? M
フルトヴェングラー、VPO 1952 M
トスカニーニ、NBCSO 1953 M
モントゥー、VPO 1957 S
クリュイタンス、BPO 1958 S
ショルティ、VPO 1959 S
クレンペラー、PO 1959 S
コンヴィチュニー、ライプツィヒ・ゲバントハウスO 1959 S
ベーム、BPO 1961 S
レイボビッツ、RPO 1961 S
ミュンシュ、ボストンSO 196? S
カラヤン、BPO 1961,2 S
シェルヘン、ルガノ放送O 1965.2.12 S
岩城宏之、NHKSO 1968 S
クーベリック、BPO 1971 S
ベーム、VPO 1972 S
ショルティ、CSO 1973 S
コレギウム・アウレウム 1976 S
カラヤン、BPO 197? S
バーンスタイン、VPO 1978 S
コンドラシン、ロイヤル・コンセルトヘボウO 1979.3.11 S
ザンテルリンク、フィルハーモニアO 1981 S
マルケヴィッチ、ベルリン放送O 1982 D 2回めをアルコ
カラヤン、BPO 1984 D
アバド、VPO 1985 D
カツァリス (リスト編)(pf) 1985 D
ハノーヴァーバンド (古楽器) 1987 D
ホグウッド、ACO (古楽器) 1987 D
ブリュッヘン、18世紀O(古楽器) 1987 D 2回めをアルコ
ノーリントン、ロンドン・クラシカルプレイヤーズ(古楽器) 1987 D 2回めをアルコ
若杉弘、ドレスデン・シュターツカペレ 1985 D
山田一雄、新星日本交響楽団 1990.7.7 D
ティボリス、ボースラフ・マルティニューPO(マーラー編曲) 1994 D
ジンマン、チューリッヒ・トーンハレO 1998 D
違いを気にしているのか、1回めを指定通りのピチカートにしながら、2度めは弓で弾くアルコにした演奏が、4種。ワインガルトナー、マルケビッチの積極的改訂派(?)と、ブリュッヘン、ノーリントンの古楽器派でした。その他は、違いが全く無いと言ってよいでしょう。もしかすると違いを気にする指揮者がいるかもしれませんが、結果は、気にしていないのと同じ。
発売当時は「楽譜に忠実」という触れ込みだった、ショルティ指揮シカゴSO(1973)も、結局違いがわからない演奏でした。違いがわかる男の岩城宏之も、同じだったのです。
まあ、6秒ほどで過ぎ去るので、気にしない理由もわかります。