「これこそ正しいベートーヴェンの聴き方」
未完の「魔王」
シューベルトで有名
「魔王」はゲーテ。というより「シューベルト」であろう。しかし、このゲーテの詩にベートーヴェンも作曲しようとした。以下の画像はノッテボームの「ベートヴェニアーナ」に掲載されている、「魔王」のスケッチである。
あたかもオペラのような劇的なシューベルトの「魔王」に比べて、ベートーヴェンのこの作品は、単なる「お話」という作品である。シューベルトを「劇画」に例えるなら、ベートーヴェンは「絵本」、それも、おだやかな雰囲気の絵の絵本といってよいだろう。
古典派のベートーヴェンなのだから、こうなったと考えるべきだろうか。ベートーヴェンの劇音楽(例えば「エグモント」)を思い出してみると、この程度の歌曲になりそうなのは、ある程度想像がつく。しかし、シューベルトの交響曲などを思い出してから、シューベルトの「魔王」に目を向けると、どうしてもその違いに目を見張る。シューベルトの「魔王」は、じつに衝撃的なのだ。
ベートーヴェンは、やはり器楽の作曲家なのであろう。未完に終わってよかった、と思うべきか。
(2002.7.10)