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聴きやすい曲はどれか!?
「チェックしよう」


 どれがどんな曲なのか、聴かなきゃわからないのは絶対の真理だ。本は立ち読みすればいいし、食品は陳列された棚を見ればある程度想像できるが、音楽は無理だ。だからあえて、ここでマッピングを試みて、どれが聴きやすいのかどうだか、チェックしておきたいと思う。
 ほとんどの曲は組曲なので、曲全体がこうだ、と一言では決めつけられないことは、了解いただきたい。

 陰陽とは、陰が暗い、陽が明るいという意味も含むが、それだけではない。陰は渋い、陽が能天気、陰は旋律がしっとり、陽はリズミカル、ということもある。陰は静か、陽はうるさい、陰は地味、陽は派手、でもある。主観的この上ないが、こうするしかない。
 聴きやすいというのは、あまり考えなくても聴ける、とか、聴くのに構える必要がない、とか、わかりやすい旋律が多い、とか、そういうレベルだ。聴きにくいとは、その逆。

 これを見てわかることは、実はベートーヴェンの音楽は基本的に「陽」で「聴きやすい」ことが基本なのだ。もともと古典派なのだから、そうなって当然なのだ。交響曲第5番、「英雄」「熱情」のような重い音楽をベートーヴェンの本質と判断してイメージを固定することは、その人の体験がいかに偏っているかの証左であると思う。そういう人には、さらりと流しているようで奥が深い最後の3曲のピアノソナタや、難解そうな雰囲気に屈託の無い素直さが込められた後期の弦楽四重奏曲を聴いてもらうしかない。

 というわけで、交響曲から。

1.交響曲
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 交響曲第5番(5)を中央に持ってきたのは、基準の意味もある。また、第1楽章と第4楽章の平均をとると、ここかな、とも思う。交響曲は基本的に組曲なので、全ての楽章をひとくくりにはできない。したがって、このマッピングが正確かという点では、うーん、ちょっとな、ということでご了承願いたいが、1,2,4,6あたりは、どの楽章も似たり寄ったりなので、けっこういいセンじゃないかなと思う。なんだか、名前無しが上のほうに来てしまった。そのあたりに、ベートーヴェンの作られたイメージがあるかのようだ。つまり、交響曲第5番、「英雄」などでベートーヴェンを判断することは、すなわち片手落ちなのである。

2.弦楽四重奏曲
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 弦楽四重奏は、全部をマッピングするとわかりづらいので、半分にした。ラズモフスキーの3曲は、もう少し下でもいいかな、と思う。私には、第15番が、聴きやすかった。初期の6曲が書かれていないが、総じて右上にあると思っていただきたい。


3.ピアノソナタ他
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ピアノソナタなどでは、やはり「ハンマークラヴィア」「ディアベッリ」が聴きにくいほうに入ると思うが、それほど難しいわけでもない。じつは、総じてピアノソナタは陽のほうへ偏っている。バガテルは、20曲以上存在しており、実際には広く散らばっている。


4.協奏曲他
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協奏曲では、聴きやすい筆頭に三重協奏曲(Triple)が来る。「皇帝」(Pfc5)も、なかなかのものだ。ハ短調であるピアノ協奏曲第3番(Pfc3)は、けっこうベートーヴェンらしさが出ているといわれる曲であるが、この位置は短調ゆえの偏見かもしれない。第1,2協奏曲以外が、ベートーヴェンらしさに満ちている。協奏曲は他の曲種と比べて娯楽の要素が強いのか、聴きやすいものが多い。バイオリン協奏曲(Vlc)は、ちょっとせつない。なお、ロマンス(Romance)は2曲ある。

5.序曲など
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 序曲は、集中している。歌劇の幕開けである、レオノーレ第1,2,3番の序曲は、フィデリオやプロメテウスの創造物序曲と近接している。戦争交響曲は、長めであるが能天気なので、このあたりにした。


6.各種室内楽
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 バイオリンソナタやチェロソナタなどの室内楽は楽器数が少ないこともあって、それほど聴きやすいところへは上がってこない。バイオリンソナタ「春」が聴きやすいのは旋律の親しみやすさが突出しているからだ。7重奏曲は、発表当時から絶大な人気であったが、3本の管楽器の音色が親しみやすさを増大させるからだ。クロイツェルは、その熱気に引き込まれるので、比較的聴きやすい。管楽器が主体の室内楽は、右上にほとんどは位置する。



(2006.5.16、2007.4.22増補)



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