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  5. コンピュータで「第9」「第5」

コンピュータの「第5」開発中、「第9」も改訂中、(2007/7/7)
こちらで→http://redant.fc2web.com/index-zx2.html


■それはもう、20年も前のことだった。

 LPレコードで、シンセサイザーによる交響曲第5番を偶然に見つけたのは。ナニ、シンセサイザー?!、20年も前なら、どうせ大した音じゃないんだろう、というのは、ナシ。CD世代は知らないだろうが、冨○勲がクラシック音楽をシンセサイザーで鳴らせたのが、丁度その頃、つまりCDが出る前だったのだ。当時、冨田○は、シンセサイザーの音の面白さにかまけて、まさに有名クラシック音楽におんぶにだっこの状態で作品を発表していたが、原曲に勝るわけがない。そもそも…


本題に戻そう。

 シンセサイザーの巨匠ヴァンゲリスが1975年に発表した「HEAVEN AND HELL」(天国と地獄)は、いまだに色あせないシンセサイザー音楽の傑作で、今も私は良く聴く。そういった曲に代表されるように、新しい楽器は新しい音楽をもたらすものだと思っていたので、○田勲が、クラシックの名曲の編曲をせっせと出していたのを、変に思っていたものだ。あやつ、「ジャングル大帝」という名曲があるでわないか。(キャプテン・ウルトラもあったな)ちなみに、最近は普通に作曲しているようです。


 また本題からずれたが。

 というわけで、店頭でシンセサイザーによる交響曲第5番のLPを見つけたのは、廃盤になっても気にしないで棚に残ったままになっているような、古き良き昭和の時代の名残を残す店でのことであった。
 そのLPは、○田○とは違って、正攻法の交響曲第5番だった。というか、はなっからシンセサイザーは手段にすぎない、と考えているかのようなものだった。とりあえず弦楽合奏に似せた音(当時のことなので仕方が無い)、なるべく管楽器に似せた音(当時のことなので…)でできているのだ。現在のように、本物の音をサンプリングして音色を作り出すわけではないので、似ているようで似ていない音なのだが、正しく楽譜を音にしていこうという姿勢でできていたので、面白く聴けたのである。
 自分で音楽を演奏するという夢の実現では、管弦楽ほど難しいことはない。ある実業家がマーラーの交響曲「復活」を指揮するため「だけ」にプロの指揮者について学び、猛練習をして、プロのオーケストラを雇い、演奏会を実現したという(今もCDが売られている)が、どれほどの金と暇があれば、それができるのだろうか。
 とにかく、年季が入ったクラシック音楽好きになると、「ここは、こう演奏してほしいものだ」「そこは、こうでなくてはならん」ということを考えつつ聴くようになるが、それが創造的行為に本当に直結して結果をもたらすのは、先の実業家も含めて、極めて稀のことだろう。たとえ楽器をやろうにも、かなりの技量を身に着けねば、自分が望む演奏には、なろうはずがない。
 しかし、ここにシンセサイザーがある。指揮者になれない一般人は、シンセサイザーで指揮者と管弦楽の真似事をするのが可能になった。少なくとも、機械は人間でないので、思ったとおりの演奏をさせることができる。必要な根気と苦労は、並大抵ではないが。

■2007/7/19 現在の交響曲第5番開発状況

 2007年、まこと偉ッ大なる交響曲第5番ハ短調が、現在、midiによる演奏として暑さにうめきながら鋭意開発中である。(2007/7/7 現在)

 ※現在、氏のサイトhttp://redant.fc2web.com/index-zx2.htmlでは、ある程度出来上がった音楽データが公開されている。

 この偉ッ大なる交響曲第5番の最初のシンセサイザー版は、CDがやっと産声をあげた1984年、これまた偉ッ大なる暇人である吉川氏が、本業の傍ら作成し、LPとして発売した曲である。あれから20ン年。最近、ネット上で知り合った吉川氏に対しての、私の度重なる罵詈雑言に音を上げたからなのかどうだか、いまだに偉ッ大なる暇人である吉川氏がやっとの思いで再び創り上げようとしいるのであるが、まだまだ音に間違いが多く、現在、鋭意修正中なのである。このぶんでは、初演から200年の来年に完了なのか、いや、今年じゅうになんとかなるのか。

 延々30分にもなる曲の膨大な数の音符を、ニュアンスを付けつつ打ち込んでいくのである。その苦労心労たるや、私なら、家の二つや三つは放火しなければ心が落ち着かないほどのものに違いない。もちろん、20ン年前には、今とは手順は異なるとはいえ、同じ作業をしたのであるから、苦労は2倍である。できれば昔のデータをそのまま流用したいところなのだろうが、時代が変わって、最初のGの音から改めて全てを入力しなければならなかったのだ。などと書いているが、実際にどのような操作をしているのか全くわかっていないので、想像すらできない。

 私(そしておそらく、他のお会いしたことも無い協力者も)は、まず始めに、氏が創った音楽を聴いて間違い探しをしている(2007/7/7現在)。ここで正直に言うと、全ての楽器が複雑に動き回るようなところは、完全に聴き取ることができるとは言えない。もしかすると、多数の音が同時に鳴っているそこに誤りがあるかもしれない。不協和音になれば、すぐにわかるはずだ。できることなら、個々の楽器の音をひとつひとつ取り出して聴き取ることから始めたかった。そうすれば、必ずミスは根絶されるだろう。しかし、それでは膨大な時間を費やせねばならない。それでも、スコア片手に、眠い眼をこすりながら(?)何度も聴くのである。楽譜を見ていても、それは十数段ある総譜(スコア)だ。全域をくまなく見ながら聴いていくことはできない。だから、何度も聴くのである。そこがプロの指揮者ではないところだ。もちろん、プロの指揮者が完全に間違い探しをできるかどうかは、わからない。

 聴いてわかる範囲で、あらかたバグを見つけてしまってから、その後の音楽のバグ取りは、MIDIデータを取り扱うソフトウエアを貸していただいて、チェックしている。とはいうものの、印刷されたスコアのように画面に表示できるわけではないので、照合は面倒だ。表示そのものにクセがあり、合っているのかどうか、すぐにわからない場合もある。本当ならひとつひとつの音を丹念に照らし合わせていくべきなのだろうが、そんなことでは、一生かかるかもしれない。そもそも、交響曲第5番1曲で、どれほどの音符があるのだろう。約500小節あるこの第1楽章は、楽譜が18段(数え方はともかく)になるので、18×500=9000小節で、1小節に平均1個の音があるとして、9000個の音符だ。1個4秒の超高速検査をしても10時間かかる。全4楽章で4倍して40時間だ。本当は、こんな乱暴な計算じゃいけないんだけどね。
 というわけで、暑さのうだる中、どうやっているかというと、まず、音の流れを各パート毎にサッと見ていく。慣れた曲なので、楽譜として見える音の流れはわかっている。さらっと流してしまえば、間違いは、わかるところはわかる。しかし、半音程度のずれは、見ただけではわからない。ただ、そのような「ずれ」は、聴けば逆によくわかる。不協和音になるのだ。さらっと見てわからないのは、細かな動きの中の3度や5度のずれなのだ。
 ということで、次に、気になる箇所、つまり、音が入り組んでいるところを重点的に調べる。すると、3度や5度のずれが見えてくるのだ。
 この方式で、1日に2〜3個ずつ見つかる。もう見つからないな、と思っても、やはり見つけてしまう。もう無いだろうと思って眺めると、また見つける。

 その結果、普通の皆さんには、もし間違いがあっても、まず見つけられなレベルにまで達している。だから、そろそろ出来上がる交響曲第5番を、安心して聴いてほしい。
 ちなみに、再生する装置の性能上、出来上がった音楽データでは、たとえば高速なトレモロでは音欠けが発生するということなので、そのような部分を見つけても、それは間違いではないと記しておきたい。

■2007/6/2 現在の「第9」リニューアル状況

 さて、以上のように書いたが、じつは「第9」も完全リニューアルしようとしている(2007/6/2現在)。
 こちらは、実際には私が知るよりかなり以前から公開されていたそうであるが、この二年ほどで多数のミスを修正していただき、音の歪も一掃した。こちらも、まだ間違い探し中であるが、すでに普通に聴くだけではまず間違いを見つけられないレベルにまで達している。

 ※現在、氏のサイトhttp://redant.fc2web.com/index-zx2.htmlでは、修正前の音楽データが公開されている。

 じつは、「第9」のほうはmidiデータも公開しているので、装置を持たない皆さんでも、midiデータを演奏するあるソフトを用いれば、どの音が鳴っているかわかる仕組みになっている。それでも、スコアを片手に、画面上で何段もの鍵盤の上を動き回る音を読み取ることになるため、間違い探しは困難を極めると思うが、まあ出来ないことではない。

 (↓Timidity++の16段の鍵盤上を走り回る「第9」。第1楽章のデータはさらに6段あるはずが、なぜかソフトの制限で、16段までしか扱ってくれない)
timidity.gif (41918 バイト)

 普通に気になるのは、この演奏が本物のオーケストラと比べて遜色ない出来なのかということであるが、無論、機械である。音を完全に真似られるものではない。しかし、機械の音楽だということを理解した上では、全く遜色ないと思う。そもそも、聴き劣りがはなはだしいのならば、私も苦労をして間違いを探そうとは思わないものだ。
 全楽器が鳴る場面では、それなりに厚い響きで圧倒してくれるだろう。静かで優しい場面では、本来の楽器では出せない不思議な音色で癒されるかもしれない。「第9」の声楽パートは、よく聴けば、もちろん全然言葉になっていない。しかし、そもそも、クラシックの声楽といえば歌詞がなんだかわからない歌い方が多い(そりゃ歌手の責任だろう)ので、機械の歌はじつにサマになっているのだ。
 
 ついでに、シューベルトの「未完成」交響曲も、ミスを正し聴きやすくしていただいたので、試しにお聴きください。

 http://redant.fc2web.com/index-zx2.html


(2007.7.19改訂)



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