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コラム「良い音楽を聴かせて育ちが良くなるとかなんとか」


 モーツァルトを聴かせたら乳牛が乳を出す量が増えたとかトマトが甘くなったとかいうらしい。それじゃベートーヴェンを聴かせたら、牛とか豚とか、あるいはイモやダイコンやトマトの生育が悪くなるのかよ、ってことになるが、どうか。
 そんなことより気になるのは、じゃ、モーツァルトなら何を聴かせた? 比較実験として他に何を聴かせた? ということだろうか。
 どうせ比較でベートーヴェンの交響曲第5番を聴かせたに決まっている。それも、第1楽章だ。
 こういう実験の裏には、クラシック音楽なんて、大して知りませんという要素が隠れているのが嫌なんですよ。

 そういう、音楽にとんと縁のない人たちには、牛やトマトに聴かせるならモーツァルトであれば何でもいいんじゃないかと思うだろうが、ほんとうならそんなはずはない。
 たとえば、交響曲はダメ、室内楽は良い、協奏曲は良い、歌劇はダメ、レクイエムはダメ、ってなことになるはずだ。もちろん、各曲、各楽章毎に違ってくる。さらにいえば、その楽章も、各部分で違ってしまうのだ。
 行く末は、モーツァルト大全集で曲毎に★が1個とか★が3個とか並び、★3個以上の楽章を集めたオムニバスCDが売られたりするかもしれん。もちろん、★1個で1日につきミルク1000mlの増産である。

 いやいや、そうまでするなら、演奏家のランキングすら可能になる。
 たとえばある特定の曲の演奏で、
    カラヤン     +2000ml
    ベーム      +1000ml
    アーノンクール  -2000ml
 なんていう表ができたりする。どんなに良い曲でも演奏家がダメなら乳は出なくなるのである。

 よく考えたら、これはすごいことだ。今まで、人による完全な主観でしか評価ができなかった曲や演奏を、これにより、なんと科学的に定量的な分析と評価が可能となるのだ。こんなに画期的なことはないだろう。
 いずれは「レコード芸術」においても、評論家の新譜紹介に並んで、こんなのが載ったりする。

「今回の○○○○によるモーツァルトのセレナーデ集は、農林水産省認定の試験において、ミルク増産3500ml/日の評価を得たという。じつに見事な演奏といえよう。僕もいっぱい出そうだ」

 そのうち、そんなCDは国から表彰されるかもしれない。牛の乳で評価されてもなあ、と思う。

(2010.6.10)



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