楽譜を読んでみよう 実践編「交響曲第6番『田園』第2楽章を聴いて楽譜を読もう」
ゆっくりとした曲なら楽譜を読むのも少しは容易かなと思って、「田園」の小川のせせらぎを選んだ。ロマン派の餌食になりやすい曲であるが、ナニがどの描写、などという野暮な話にあえて持ち込むかもしれない。とにかくこの楽章は厳密なソナタ形式であるにもかかわらず目いっぱい描写しているような、旧世代と新世代が同居していることが如実にわかる音楽である。
注意:
文中、b.の次の数字は、その画像内での小節の番号です。ページが変わると数えなおしです。画像は縮小しています。
上から フルート×2 オーボエ×2 クラリネット 変ロ調×2 ファゴット×2 ホルン 変ロ調×2 第1バイオリン 第2バイオリン ビオラ チェロ2人で、弱音器を付けて (残りの)チェロとコントラバスはいっしょに 力強い音楽ではないので、トランペットとティンパニは無し。 チェロが2人だけ別枠になっている。しかも、2人は別の音を出している。そう、ソリストが2人いるというわけである。よく考えるとこれは大変珍しい楽章だ。慣れてきたら、チェロ2人に注目して読んでみるのもよい。 b.1 残りのチェロとコントラバスは、pizz. (ピチカート)で演奏。 b.1〜4 木管楽器が音を出していないところが、ミソ。第1バイオリンが主題なのかと思うだろうが、その下の第2バイオリンなどの音も含めて第1主題というべき。 b.5 ここから第2バイオリンより下は、ほとんどが16分音符の動きになる。これが、小川のせせらぎだ。 |
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伴奏部分がどこなのかおよそわかったと思うので、第1バイオリンと木管楽器4段の、計5段を見るようにすればよい。 | |
b.1
記号>は、アクセント。そこだけちょっと強く演奏する。 b.2〜4 ここを過ぎると普通のソナタ形式なら第2楽章になるところ、しかしまだまだ第1主題が続くのだよ、という自然のゆったりした様子が表現される。ホルンやファゴットの、ちょっと拍がズレた音も同じ雰囲気を作る。ここにある、16分音符の刻み(第2バイオリン等→クラリネット&ホルン)は、この3小節にしか現れない。 |
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p3〜5
このあたりの第1バイオリンの動きは、ロマン派的ではないかと思う。余裕があれば、木管楽器やチェロ2人の動きに注意したい。 |
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b.2〜 ここから第2主題。 | |
b.5〜7 12/8拍子は、時としてワルツのようにも聞こえる。2人のチェロによるピチカート、フルートとバイオリンの旋律もそうだが、少し添えてあるビオラなどの音も聴いておきたい。 | |
b.6〜 ここでの第1バイオリンの動きは第1主題のようでもあるが、いかにも一息つきたそうな(つまり、ヘ長調の主和音に落ち着きたいような)動きをしている。つまり、提示部は終わりに近いという意味だ。 | |
b.2
ここから展開部。クラリネットの響きが好きである。 b.6 鳥かもしれないと思う、フルート。 |
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b.4〜 すばらしい場面はいくつもあるが、ここのフルートとオーボエの二重奏もそのひとつだ。 | |
b.4〜 フルートとオーボエの二重奏があるなら次は、というわけでクラリネットに主題が渡される。 | |
b.1〜
しかし二重奏になるのではなく、クラリネットは得意のアルペジオを聴かせる。聴き所の2番目はここ。 b.7〜 ここは物憂げに。フラットがあちこちにあるが、ここは変ト長調(調性記号なら♭6個)だから。フラットだらけで読みにくいのは演奏者に任せておこう。聴き所の3番めはここ。 |
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b.2〜5 変ト長調から半ば強引に変ロ長調に戻しているように思うのだが。強引なのかどうかは、和声学がわからないので、なんとも言えない。 | |
b.3
ここから再現部。登場する全楽器が鳴るが、あちこちで既に鳴っていた旋律やちょっとした音型が全部詰め込まれているのがわかるだろうか。聴き所の4番め。 第1フルート 第1主題 第2フルート 8ページb.6のビオラなどの音型が逆さまに オーボエ 3ページ、b.2,3,4で鳴る音型が2倍の長さになったもの 第1クラリネット 8ページb.6の鳥の声のような音型 第2クラリネット 8ページb.6のビオラなどの音型 第1ファゴット 8ページb.6の鳥の声のような音型 第2ファゴット 1ページb.7のホルンの音型 ホルン 8ページb.6のビオラなどの音型 第1バイオリン 8ページb.6の鳥の声のような音型 第2バイオリン、ビオラ、チェロ2人 小川のせせらぎ |
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b.3〜4
聴き所5番め。再現部は提示部のちょっと動きを変えたものになるが、どのように変えたのか。ここのドラマティックな2小節もすばらしい。これも、半ば強引に場面を転換している。そのわりに、b.5では何も無かったかのように流れていく。 b.5〜6 チェロが低音でソロを演奏している。わかるだろうか。 |
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b.6 凡庸な作曲家なら、これみよがしに使うはずの小鳥の描写。他の楽器が息を潜めて聞き入る様子がわかる。 | |
小鳥の唄は長すぎもせず、短かすぎもせず。絶妙のさじ加減で終わる。 |